自転車に乗るときによく働く筋は、大腿の前部と後部の筋、お尻の筋、すねの前後の筋などです。上体の筋や腕の筋も使われますが、これらの筋は主に姿勢の維持の役割を果たしているといってよいでしょう。腰から下の筋が主に使われる点では、自転車はランニングと似ています。しかし、使われ方は同じではありませんので注意が必要です。
もう少し詳しく説明します。私たちの筋肉は多くの筋線維によって構成されています。そして、筋線維は、脊髄にある運動ニューロンにより神経支配されています。1個の運動ニューロンが支配する筋線維のまとまりを運動単位といい、私たちが行う様々な動作に応じて、使われる運動単位の種類や数、時間的順序、強さなどが変わります。自転車とランニングは、その運動単位の使われ方が大きく異なるのです。
また、ランニングでは、着地する際に筋が伸ばされることでエネルギーが蓄積され、地面を蹴るときに筋が短縮し、蓄積したエネルギーが利用されるということが起こります。このようなエネルギーを弾性エネルギーといいます。しかし、自転車には着地はないので、短縮性の筋力発揮しかありません。自転車によるトレーニングで、弾性エネルギー利用能力の向上を期待することはできません。自転車のトレーニングは、ランナーにとっては、あくまでも走れないときの補助トレーニングであると認識しておいてください。
なお、持久的な運動は主に遅筋線維を使って行われますが、遅筋線維は筋肥大が起きにくいので、ロードトレーニングで筋肉が太くなる心配はほとんどありません。ただし、スプリント的な走りだけをしていると、筋肥大が起きやすい速筋線維に強い刺激がかかって太くなる可能性がありますので、注意が必要です。