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15万円と100万円のロードバイクの違い

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初心者のためのスポーツ用自転車基礎講座<1>
15万円と100万円のロードバイクの違い

 低価格のエントリーバイクと高価なハイエンド(高性能)バイク、どこがどう違うのか。気になりますよね。高価なモデルはいかにも高そうな形をしているクルマとは違って、ロードバイクの場合は高くても安くても見た目はほとんど一緒ですし。

 では、まず性能から説明していきましょう。ハイエンドバイクは高価な素材とコストのかかる製法・構造を採用できるので、フレームの剛性と変形を緻密にコントロールでき、軽量に仕上がるうえに動力伝達性と快適性を高いレベルでバランスさせられ……と、専門用語を使うと分かりにくくなるので、オノマトペを使いながら説明してみます。

 高いバイクは、スパッと鋭く加速して、スーッと滑らかに走り、坂でもスイスイと軽やかに上り、凸凹でもトントントーンとスムーズに進んでくれます。簡単に言うと「軽くて速くて快適で気持ちいい」。

 一方、安価なバイクはハイエンドバイクに比べて加速がもっさりと重く、高速を維持するのに少々パワーが必要で、上りでも頑張らないといけません。路面のギャップではガタガタと振動がくる。高いバイクに比べると速さや快適性、気持ち良さは劣ります。

 変速の段数は高価になればなるほど多くなるし、変速機の動き方やブレーキレバーのタッチも、高いバイクの方がカチっとしており正確に動いてくれます。走行性能の要となるホイールだって、高いバイクには「走る・曲がる・止まる」の基本性能が高いものが採用されます。フレームサイズも高いバイクの方がバリエーション豊富ですし、塗装も高級バイクの方が凝っていて綺麗です。

 「地獄の沙汰も金次第かよ」と思われるかもしれませんが、クルマだって家電だってパソコンだって楽器だってスマホだって、なんでもそうです。価格が高いものの方が豪華で快適で上質で高機能で高性能で、満足感が高く、所有欲を満たしてくれます。

性能や楽しさは価格と比例しない

 でも、ここからは感覚的かつ主観的な話になりますが、スポーツ用自転車の場合、性能や楽しさは必ずしも価格と比例するわけではないのです。

 例えば30万円のエントリーバイクと比べて150万円のハイエンドバイクは5倍速いか。そんなことありません。せいぜい1.05倍ってとこでしょう。プロ選手でもない限り、それは重要な差ではありません。

 今、最高級のロードバイクを買おうとすると200万円以上のプライスタグを突き付けられます。20万円のバイクと比べてそれが10倍楽しくて幸せかというと、全然そんなことありません。

 場合によっては、150万円のロードバイクより25万円のグラベルロード(舗装路や砂利道、山道も走れるロードバイク)の方が楽しいかもしれない。70万円のハイエンドカーボンフレームより20万円でオーダーした自分だけのスチールフレームの方が幸せになれるってこともある。100万円のバイクで一人で走るより、25万円のバイクで仲間とキャンプツーリングする方が楽しそうでしょう?

 自転車は機材スポーツです。機材の性能の高低が、速さや楽しさや気持ち良さを左右します。“お金次第”のところは確かにあります。だけど、お金が全てじゃありません。誰と、どこを、どんなふうに走るか。どれだけ自転車のことを深く理解するか。どうすれば愛車ともっと一体になって疾走できるか。どうすれば自分のパフォーマンスを最大化できるか。

 機材にかける金額より、そういう気持ちの方が、よっぽど大きな差になると思います。

文: 安井行生(やすい・ゆきお)

自転車ライター。大学在学中にメッセンジャーになり、都内で4年間の配送生活を送る。現在は様々な媒体でニューモデルの試乗記事、自転車関連の技術解説、自転車に関するエッセイなどを執筆し、信頼性と独自の視点が多くの自転車ファンからの支持を集める。「今まで稼いだ原稿料の大半をロードバイクにつぎ込んできた」という自称、自転車大好き人間。

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