TOP サイクリングコース 伊香保名物の「水沢うどん街道」も
天空の湖・榛名湖を目指すヒルクライムコース(群馬)

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伊香保名物の「水沢うどん街道」も
天空の湖・榛名湖を目指すヒルクライムコース(群馬)

 「ハルヒル」の名でおなじみのヒルクライムレース「榛名山ヒルクライムin高崎」の舞台としても知られる群馬県の榛名山。走行距離16kmで獲得標高940mとコースプロファイルとしては中級者向けの印象ですが、実はとても起伏に富んだコースで、山の名前も影響してか、どこか一筋縄ではいかない女性を思わせます。そんな攻略心を掻き立てるコースで多くのクライマーを魅了する榛名山、そして伊香保名物の「水沢うどん街道」を巡るルートをご紹介します。

榛名富士をバックに
オススメポイント JR高崎駅を発着点に榛名山~伊香保をめぐるコース。緩急に富んだ約16kmのヒルクライムの先にある榛名湖の絶景が、登頂後の疲れを爽やかに癒してくれます。人気車漫画の聖地となっている伊香保へのダウンヒルを経たあとは、つるっと喉ごしの良い「水沢うどん」を堪能しましょう。
レベル ★★★(上級者向け)
距離 79.1km
獲得標高 1,268m
発着地 JR高崎駅
立ち寄りスポット 水沢うどん街道(渋川伊香保温泉観光協会)

高崎駅からサイクリングロードでアプローチ

 スタート地点は「高崎だるま」で知られる群馬県のJR高崎駅。東京から新幹線輪行で1本。小旅行気分を味わいながらも1時間弱でアプローチできるアクセスの良さです。

JR高崎駅西口外壁にある「だるまの詩」の前からスタート

 高崎駅から1.3kmほど街中を走ると「烏川・榛名白川サイクリングロード」に出ます。スタートから約8km地点までと短い距離ですが、しばし交通量が多い県道から逃れ、信号のないストレスフリーなサイクリングを楽しむことができます。

烏川・榛名白川サイクリングロード
サイクリングロードからはこれから目指す榛名山が見える

 サイクリングロードから「くだもの街道」に入り、しばらく走ると「ハルヒル」のスタート地となる「高崎市榛名支所」に到着です。

ハルヒルのスタート地点、高崎市榛名支所。

 ハルヒルのコースは、①初心者コース(総距離6.7km)②榛名神社コース(同11.6km)③榛名湖コース(総距離16.1km)の3つがあり、それぞれの脚力に応じたコースが選べます。今回走るのは標高1,100mにある山上湖、榛名湖を目指す「榛名湖コース」。獲得標高は約900mで、大会公式情報によると榛名湖コースのレースタイムは平均で1時間半程度、速い人では1時間を切るそうです。

上るにつれて高まる難易度

 コース上にはスタート地点からの距離を示す標識が設置されており、イベントが開催されていなくても、常時「ハルヒル」気分を味わえるようになっています。

コース上にはレース時の距離を示す標識が常設

 スタートから6.7km、初心者コースのゴール付近にある「榛名神社一之鳥居」が見えてきます。ここまでの平均斜度は4%ほどと、ビギナーでも頑張れば楽しく上れる距離。中級サイクリストであれば、まだまだ体力に余裕を感じるでしょう。

「初心者コース」ゴール付近にある「榛名神社一之鳥居」

 一之鳥居を超えると徐々に斜度が増し、初心者コースでは感じなかった緩急を感じ始めます。平地のように斜度を感じなくなる場面もあれば、その分を補うように急に強まる斜度。最高斜度は10%に達し、「さっきまでの優しさはどこへ?」と思わせるような別の顔が現れ始めます。

「榛名神社コース」ではぐっと斜度が上がる

 一之鳥居から5kmほど上ったところで「榛名神社コース」のゴール地点、榛名神社に到着。コースをまたがるように立つ赤い大鳥居が目印です。

榛名神社の鳥居。大会でなくてもヒルクライマーが訪れる

 鳥居をくぐり、右折したところに“関東屈指のパワースポット”と称される榛名神社の境内があります。コースからすぐ近くですが、そこまでの道はちょっぴり激坂。脚力に余裕がある人や、登頂までのパワーをもらいたい人は立ち寄ってみると良いかもしれません。

奇岩・巨岩で知られる榛名神社の境内

 上級者向けの「榛名湖コース」のゴールまではここから4.5kmほど。あと少しです!…と言いたいところですが、ここからさらに斜度が増して平均勾配は8%、最大斜度は14%に及びます。段階を経て難易度が増す榛名山。ハルヒルの見事なレベル分けに感心しながら、九十九折れを一つ一つクリアしていきます。

ゴールまで「残り1km」という激励の標識
コース脇にある奇岩「男根岩」。これが見えたらゴール直前

 最終コーナーを曲がると「記録計測終了」の標識。ようやくゴールに到着です。

ハルヒル「榛名湖コース」のゴール地点

 コースの名称通り、ゴールした人たちを榛名湖が優しく迎え入れてくれます。上毛三山の一つである榛名山の火山活動によって誕生したカルデラ湖で、周囲約4.8kmに及ぶ広大な湖です。青空と静かな湖面の分かれ目のように連なる「榛名富士」などの山並み。ここまで上り詰めた人たちだけが目にすることができる絶景です。

真っ青な空を写したような湖面はまさに「天空の湖」という表現がぴったり

 榛名湖の名物として有名なのがワカサギ料理です。湖畔にはワカサギ料理を謳う店が軒を連ねており、どこに入ろうか迷うほど。ワカサギの旬は冬ですが、ここでは通年で味わうことができます。定番のフライ定食やワカサギ丼、蕎麦とのセット等、おなかの空き具合でお店をチョイスしてみると良いでしょう。

榛名湖名物のワカサギ
木漏れ日が気持ち良い湖畔サイクリング

伊香保名物「水沢うどん」を目指して

 湖畔サイクリングを満喫したあとは群馬の名湯地「伊香保温泉」へと下ります。伊香保へと向かう道路「渋川松井田線」は人気①車漫画のレースシーンの舞台となった場所で、ファンの間では「聖地」となっています。

伊香保へと向かう渋川松井田線
①に登場する「秋名山」という架空の山は「榛名山」がモデルになっているそう
渋川市に散在しているマンホールの一つがここにある

 そのため、ヘアピンカーブが連続するダウンヒルコースはスポーツカーがスピードを出して走り抜けていくこともしばしば。道幅も狭く、路肩の路面状況もあまり良くないので、一時停止して後車に道を譲るなどしながらマイペースに下りましょう。

連続するヘアピンカーブは30もあるそう
坂の途中にある「高根展望台」。伊香保の温泉街が眼下に広がり、上越国境〜赤城山までクリアに遠望できる

 ダウンヒルを終えたところが伊香保温泉です。石段街が貫く街の作りで、自転車で散策するには少々難しいですが、日程に余裕がある場合はここで自転車を下りて1泊する温泉旅プランも良いかもしれません。

伊香保温泉の有名な石段街の麓にあるモニュメント

 伊香保で有名なのは温泉だけではありません。ここに来たお目当てがもう一つの名物、「水沢うどん」です。伊香保温泉から4kmほど行ったところに、水沢うどんの店が連なる「水沢うどん街道」が現れます。もともとは「水澤寺」の参拝道で、かつてこの道を通った旅人はここで腹ごしらえをしてから水澤寺にお参りをしていたとか。

4kmに渡って13のうどん店が軒を連ねる水沢うどん街道

 秋田の稲庭、香川の讃岐と並んで日本三大うどんの一つに挙げられる水沢うどん。遡ること飛鳥時代、水澤寺の創建に関わった高麗からの渡来僧が製法を伝授したことに始まるそうです。

「水沢うどん」の本家「田丸屋」。創業はなんと天正十年(1582年)!

 定番の食べ方はざるうどんで、めんつゆとごまつゆの2種類のつけだれで味わうスタイル。好みで天ぷらを添えるなどおなかの空き具合で調整できます。

透明感のある艶と、つるつるとした喉ごしが特徴の水沢うどん

 同じ水沢うどんでも店舗によって様々な特色があるそうなので、事前に「渋川伊香保温泉観光協会」のサイトで好みの水沢うどんをチェックしていくと良いでしょう。

 水沢うどん街道からは「前橋伊香保線」を利根川まで一気に下り、川沿いを走る「利根川自転車道」を経由して出発地点のJR高崎駅へと戻ります。総距離約80kmでヒルクライムもご当地グルメも満喫できる榛名山・伊香保ライド。都心からも日帰りできる、小旅行気分のサイクリングに出かけてみませんか?

文: 後藤恭子(ごとう・きょうこ)

アウトドアメーカーの広報担当を経て、2015年に産経デジタルに入社。5年間にわたって自転車専門webメディア『Cyclist』編集部の記者として活動。主に自転車旅やスポーツ・アクティビティとして自転車の魅力を発信する取材・企画提案に従事。私生活でもロードバイクを趣味とし、社会における自転車活用の推進拡大をライフワークとしている。

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