ロードバイクで東京〜大阪を24時間で走り切るための装備とは長距離ライドのコツと楽しみ方<4>
東京~大阪間の約550kmを24時間以内に自転車で走破する「キャノンボール」というチャレンジをご存じでしょうか。これは決まった大会ではなく、ライダー自身が設定する自主的なロングライド企画です。長距離に挑む知識と準備、そして高い体力が必要ですが、これまでに多くのサイクリストが目標を達成してきました。本シリーズでは、筆者自身の経験をもとに、キャノンボールに役立つ装備や下調べのポイントをご紹介します。「そこまで長距離を走る予定はない」という方にも、安全にロングライドを楽しむためのヒントが詰まっています。ぜひ参考にしてみてください。

“550km”という距離の現実
これまで1日で100km~200kmを走ったことがある方でも、550kmという距離は別次元です。普段の知識や経験が全て生きる一方、数倍の準備や安全対策が必要となります。
無事に完走できれば、普段の生活では味わえない大きな達成感を得られるでしょう。しかし十分な準備がないまま臨むと、非常に危険です。特に距離が増えれば増えるほど事故や体調不良のリスクも高まります。SNS等で応援してもらいながら挑戦できるものの、何よりも「安全に家へ帰ることが最優先」という心構えを忘れないでください。
最も時間をかけるべきはルート選定
キャノンボールのスタート・ゴールは東京の日本橋と大阪の梅田が定番ですが、途中どのルートを選ぶかは自由です。しかし、ルート選びは思った以上に難しい作業。

自転車通行禁止のバイパスや歩道橋、不意な遠回りや予想外の登り、道路工事など、現地で判断するのはほぼ不可能です。事前に「Ride With GPS」などのルート作成アプリでコースを引き、さらにGoogleマップのストリートビューで路面状況を確認しておきましょう。
インターネット上の先人の記録も参考になりますが、最終的には自分でプランニングし、道中の景色や分岐を事前に把握しておくことが大切です。まとめたルートはGPSサイクルコンピューターに入れてナビ機能を活用すると、迷うリスクを減らせます。
必要な体力と準備の目安
550kmを24時間で走り切るには、単純計算で平均時速約22.9kmが必要です。しかし信号待ちや休憩を考慮すると、走行時の速度は30km/h近くが求められます。
このペースは200kmのライドでも達成が難しいレベル。キャノンボールに挑戦するなら、「200kmのライドを余裕をもってクリアできる」さらに「夜間や早朝の300kmライドも無理なく完走できる」という体力と経験を積み上げてから、計画的に臨みましょう。
超長距離ライドのための装備
出来るだけ軽量・コンパクトにまとめるのが装備の鉄則ですが、安全に24時間走るためには妥協できないアイテムも多々あります。筆者が用意した主な装備を例に挙げます。

■ハンドルバッグ内
- フロントライト×3セット(夜間・トンネル・万が一に備えて)
- リアライト×3セット
- 予備バッテリー & モバイルバッテリー
- 充電コード一式
- ミニポンプ(手動)
■トップチューブバッグ内
- 補給ジェル、スポーツようかんなどのエネルギー源
- アメニティ(コンタクト、目薬、化粧水)
■サドルバッグ内
- 予備チューブ(2本以上)
- パンク修理パッチ&タイヤレバー
- ミニツール、電動ポンプ
■携行品
- 現金3万円
- 身分証(免許証、保険証)
- キャッシュ・クレジットカード
特にライトやバッテリーは命綱です。24時間走行のためには予備を必ず携帯し、モバイルバッテリーで走行中に充電できるよう常に管理しましょう。またサイクルコンピューターはルートナビ機能つきが推奨です。ただし長大なルートファイルの場合、機器によってはフリーズすることも。必ず動作確認をしておき、場合によってはルートを分割して登録しましょう。
体調管理も万全に
キャノンボールのような超長距離ライドでは、事前の体調管理が完走・安全の大きな鍵になります。
特に睡眠は最重要です。眠気が原因のフラつきや判断ミスで重大事故につながる可能性もあります。直前の数日はしっかりと睡眠をとりましょう。加えてエネルギー補給も不可欠です。消費カロリーは莫大なものとなるため、数日前から炭水化物などでカーボローディングを行い、当日もこまめな補給を意識しましょう。エネルギー切れ(ハンガーノック)になると、途中で走れなくなるケースもあります。

まとめ:キャノンボールの心得
キャノンボール挑戦はたしかにロマンがあり、多くのサイクリストの憧れです。でも、成功・失敗を問わず「安全第一」で無理のない準備と計画を心がけましょう。あなたの挑戦が素晴らしい思い出になるとともに、何より「無事に帰ってくること」を心から願っています。
次回はいよいよ実走編。東京・日本橋から大阪・梅田までのチャレンジの模様をお伝えします。
※安全のためのお願い
キャノンボールへの挑戦は十分な経験・事前準備・体調管理が不可欠です。ご自身のレベルに合わせて、決して無理をせず安全最優先で楽しんでください。道路交通法の遵守も忘れずに!

10代からスイスのサイクルロードレースチームに所属し、アジアや欧州のレースを転戦。帰国後はJプロツアーへ参戦。引退後は産経デジタルが運営した自転車専門媒体『Cyclist』の記者、編集者として自転車やアイテムのインプレッション記事を担当した。現在は自治体の自転車施策プロデュース業務等を担当。
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