「走れば地域の魅力が見えてくる」 “サイクリスト知事”大井川和彦さんが語る自転車の魅力

2025/07/17    

「ナショナルサイクルルート」(※)に指定された「つくば霞ヶ浦りんりんロード」をはじめ、山や海、里山など多彩な地形に恵まれた魅力あふれる茨城県。積極的にサイクリング施策を展開してきた先駆け的存在で、今や初心者から上級者まで、幅広い層のサイクリストから注目を集めるスポットとなっています。その推進役であり、自らもロードバイクを楽しむ“サイクリスト知事”こと大井川和彦知事は、実際に県内各地を走ることで得た体験を観光施策に活かしてきました。スポーツ用自転車と出会ったきっかけから、サイクリストとして感じる自転車の魅力、そしてフィールドとしての茨城の魅力を伺いました。

※2019年に導入された、日本を代表するサイクリングルートを国が指定する制度

聞き手:松尾修作(まつお・しゅうさく)

10代からスイスのサイクルロードレースチームに所属し、アジアや欧州のレースを転戦。帰国後はJプロツアーへ参戦。引退後は産経デジタルが運営した自転車専門媒体『Cyclist』の記者、編集者として自転車やアイテムのインプレッション記事を担当した。現在は自治体の自転車施策プロデュース業務等を担当。

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「スタンドがない⁉」戸惑いから始まったサイクリングライフ

―知事がスポーツ用自転車に乗り始めたきっかけを教えてください

 知事への就任当初、ちょうど茨城のサイクルスポーツをどう振興していくか、について議論しているタイミングでした。それまでは、スポーツ用自転車って手が届かない高尚な趣味、というイメージを持っていましたが、その時期に「つくば霞ヶ浦りんりんロード」のナショナルサイクルルート指定や台湾の自転車メーカーと連携した動きなどもあって、観光振興の点からもサイクリングが大変重要なツールだと感じ、ロードバイクに乗り始めました。

―実際に乗ってみて、印象に残っていることはありますか?

 最初に戸惑ったのが、「スタンドがない!」ということでした(笑)。どこにどうやって停めたらいいのか分からず、かなり驚きましたね。そうした戸惑いはありつつも、実際に走ってみると想像以上のスピード感に衝撃を受け、「これは面白い」とすぐに魅了されました。

自らサイクリストとして県の魅力発信をリードする大井川知事

―普段はどんなときに自転車に乗られるのですか?

 仕事で走ることが多いですね。取材やイベントで、つくば霞ヶ浦りんりんロードや奥久慈の山々を走り抜ける奥久慈里山ヒルクライムルート、大洗などの海沿いを走る大洗・ひたち海浜シーサイドルートなど、県内のさまざまな場所を実際に走りながら、茨城の魅力を伝える発信企画に取り組んでいます。

 また昨年には、愛媛県の中村知事、広島県の湯﨑知事から、「サイクリングしまなみ」に滋賀県の三日月知事とご招待いただき、第一次ナショナルサイクルルートに指定を受けた「オリジナルスリー」の3ルートの知事で一緒に走ったこともあります。高速道路を自転車で走れるという、なかなかできない体験で本当に爽快でしたね。

多忙な日々でも時間を捻出するコツ

―お忙しい中でも、プライベートで自転車に乗る時間はどのように確保されているのでしょうか?

 最近はなかなか時間が取れないのですが、それでも時間を作って走るようにしています。プライベートでもよく那珂川の堤防沿いに海に向かって2時間ほど走ります。特に晴れた日の景色は素晴らしくて、途中にある海門橋から見える風景が一番のお気に入りですし、町並みや水族館、時間があればおさかな市場でお寿司を食べて、といろいろ楽しめます。

 乗り始めた頃は、とにかく乗りたくて仕方がなくて。朝早く起きては1時間だけ走ってから出勤していたりしました。短時間でも思いのほか遠くまで行けるのは、ロードバイクならではの魅力ですよね。

「サイクリングしまなみ2024」を走る大井川知事

景色、食、新たな発見 茨城サイクリングの奥深さ

―知事おすすめのサイクリングコースがあれば教えてください

 茨城はどこを走っても楽しめると思っています。たとえば「つくば霞ヶ浦りんりんロード」は、平坦でクルマの通行が少なく、とても走りやすいルートです。周辺には宿泊施設も完備されていますし、東京方面からはグループや、トレーニングなどで訪れるサイクリストの姿もよく見かけます。

 また奥久慈里山ヒルクライムルートは、長いヒルクライムや里山の風景、常陸秋そばなどのおいしいもの、大洗・ひたち海浜シーサイドルートは、海岸線が長いから海沿いの景色を楽しめるし、それぞれ魅力がありますね。

 いわゆるサイクルルートになっていないところにも、フラットで信号が少ない走りやすい道が茨城にはたくさんあります。海外からのお客様はそういうところをわざわざ走って楽しんだりされていますね。

―私は個人的に石岡市が好きで、プライベートでよく走りにいっています

 石岡もいいですよね。県南部は、古い町並みや、春の満開の桜のトンネルなど、他では味わえない経験ができる、季節ごとに表情を変える魅力的なスポットですよね。

10月には、県内で注目のイベントもあります

 奥久慈地域を舞台に、サイクリングとトレイルランニングを組み合わせた国内唯一無二のサバイバルレース「Okukuji「X(クロス)」~Ride&Trail~」を10月18・19日に開催します。

 1日目は「奥久慈里山ヒルクライムルート」を水戸から大子までロングライドし、八溝山ヒルクライムのタイムトライアル、2日目は「常陸国ロングトレイル」を使ったトレイルランニングで、起伏の激しい山々を駆け抜ける、ということで、あまりの過酷さに完走者がいないのではないかと心配しています(笑) 1日目のサイクリングだけでも参加できますので、是非多くの方の出場をお待ちしています。

―あらためて、ロードバイクを通じて感じる茨城の魅力はどのようなところにあると思いますか?

 自転車って、茨城の魅力を実感するのにとても適していると思うんです。茨城には山もあれば海もあるし、里山の風景や歴史ある美しい街並みもある。そんな多彩な景色を、自転車で自由に走って味わい尽くせるのが、茨城ならではの楽しさです。

―まさに、走るごとに魅力が深まっていく土地ですね

 どんなスタイルでも楽しめるのが、茨城のいいところなんです。グルメも景色も道も、走るごとに新たな発見があって本当に奥が深い。自転車で走る魅力が詰まったエリアです。ぜひ、多くのサイクリストに走りに来てほしいですね。

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