SKE48荒野姫楓さん 人生を変えてくれた自転車「‘‘名アシスト’’になって自転車業界に恩返ししたい」


2002年1月9日生まれ 神奈川県出身。2018年にSKE48に加入し、現在はTeam KⅡに所属。料理、ロードバイク、イラストなど幅広い趣味を生かした仕事も多く、2022年にクックパッドを開設。2023年には「Scawaii!」年間ゲストモデルを務め、2025年4月からJ SPORTS 4&J SPORTSオンデマンドにて冠番組「ツール・ド・ひめたん(仮)」放送開始。
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「アイドル界一の自転車好き」を公言する、「ひめたん」こと「SKE48」の荒野姫楓(ひめか)さん。自らも愛車(ロードバイク)を所有し、70㎞もの距離を走破したり、ロードレースを観戦したりと、その‘‘好き度’’はかなりの筋金入りです。そんな荒野さんにロードバイクにハマったきっかけや、ロードレースの魅力、女性サイクリスト目線での自転車の楽しみ方などについて聞いてみました。
きっかけは『弱虫ペダル』
―ロードバイクに乗り始めたきっかけを教えてください。
SKE48に加入して「よし!アイドル人生ここからだ!」というときに、コロナ禍に突入してしまいました。自粛期間中、幼い頃に読んでいた漫画を読み返すことにハマっていて、その一つが『弱虫ペダル』でした。大人になってから読み返してみて、「めっちゃアツい!面白いなこの漫画」って思いながら読んでいるうちに気づいたらロードバイクが欲しくなってしまいました。いろいろモデルを見ていたらちょうどいい、可愛いロードバイクがあって、しかも登場人物の「箱根学園の荒北」が乗っているモデルということで、その1週間後に買っちゃいました。それが今乗っているロードバイクです。
―クロスバイクではなくて、いきなりロードバイクに乗ってみたいという気持ちが強かったのでしょうか?
そうですね。「絶対に『弱虫ペダル』の登場人物たちが乗っているロードバイクに乗りたい」という気持ちが強かったです。
―ロードバイクだけじゃなく、ヘルメットや自転車用のウェアを買わなければならなかったりと、最初のハードルは感じませんでしたか?
形から入るタイプだったのと漫画からの知識も入っていたので、すんなりいけましたね。それこそ『EnjoySportsBicycle』を見て、勉強した記憶があります。「HOWTO」の連載を参考にしたり、「ロードバイク単独100㎞走破術」という連載を3年前くらいに読んでました。他にもYouTubeやインフルエンサーさんが情報を発信されているので、情報収集には苦労しなかったです。

―ご自身でパンクを修理した経験はありますか?
あります!めっちゃ修理に時間かかりました(笑)最初に長距離に挑戦してみようと思ったときに、パンク修理の工程を1から教えてくれる動画をチェックしてはいました。修理道具も揃えなきゃと思っていたのですが、なぜか「大丈夫でしょ」という楽観的な気持ちもあって道具を持っていませんでした。それで実際にパンクしてあたふたしてしまい、近所の自転車屋さんに駆け込みました(笑)。
お店の方に「パンクしたんですけど、修理道具ありますか?」と尋ねると、「こういうのがいいよ」と教えていただいて、30分くらい道端で一人でチューブ交換をしてました。お店の方々も手伝ってくださったり、空気入れも貸していただいて、そのとき「自転車乗りの人たちって温かいな」と思いました。
聖地「羽豆岬」まで自走
―SKE48の代表曲のタイトルにも使われたことで‘‘聖地’’になった「羽豆岬」までロードバイクで行く動画が、SKE48の公式YouTubeチャンネルで公開されていましたが、実際に知多半島まで走ってみていかがでしたか? 過去最長距離の70㎞ライドだったそうですが。
超大変でした(笑)。家族が車で帯同してサポートしてくれたり、並走して動画を撮ったりしてくれていたのですが、それまで50㎞とかだったので20㎞伸びるだけでこんなにも辛いんだと感じました。しかも夏だったのでめちゃくちゃ暑くて、ハンガーノック寸前な感じになったり・・・。いろいろと勉強になりました。

―そうだったんですね。そんな中でも知多半島の見どころがあったと思いますが、ライドの醍醐味みたいな魅力は感じられましたか?
知多半島って自転車で走るのにとっても向いているところだなと思いました。車で向かう方が多いですけど、ぜひ自転車のスピードで「聖地巡礼」してもらったら道が開けた先にある海に感動したりと、また違った一面が見られるんじゃないかなと思います。
目的地の「SKE48「羽豆岬」記念歌碑」に向かう道の最後の方にアップダウンがあったんですけど、それすらも楽しかったです。坂を上っていると笑っちゃうみたいな、そんな感じでした(笑)。
でも、出発する時間が結構遅かったので、お店が閉まってて美味しいものが食べられなかったりSKE48が長年お世話になっていたお店が閉業になってしまっていたり、観光船のターミナルが改装工事をしていたり、ちょっと運が悪かったので、もう一度リベンジして知多半島の美味しいグルメも堪能しつつ、最大限に楽しめたらなって思います。
ロードレースは漫画のようなストーリーが現実に起こるのも魅力
―乗るだけでなくて、レースを観ることも楽しまれているそうですが、ロードレースはどんな魅力がありますか?
ロードレースを観るきっかけになったのが、ファンの方から「ひめたん、ロードバイク始めたんだったら、ツール・ド・フランス観てみなよ!」と言われたことでした。「ツール・ド・フランス」(※1)の名前を知ってる方は多いと思いますが、当時の私は全く知らなくて。YouTubeを観て「こういう世界があるんだ」と初めて知りました。
(※1:毎年7月に3週間かけてフランス及び周辺国を舞台に行われる世界最大規模のロードレース)
その時ちょうど「ジロ・デ・イタリア」(※2)が開催されていて、「ポガチャルって選手がやばい」というのを小耳に挟み、そんなに騒がれているならロードレースをちゃんと観てみようと思い立ちました。そうしたら本当に、「ジロ・デ・イタリア2024」のタデイ・ポガチャル(以下、ポガチャル)が凄かったんです!例えるなら、MLBの大谷翔平選手みたいな感じです。当時はルールを詳しく知らなかったのですが、それでも分からないなりに観ていてすごい面白くって。自分がロードバイクに乗っているから分かるのですが、あんな坂をあんな速度で上っていくということがまず驚きで、純粋に「かっこいい」と思いました。
(※2:毎年5月に3週間かけてイタリア全土で行われるロードレース)

レース解説で、「ロードレースは、エースを勝たせるためにアシストが頑張っている」というのを聞いて、最初はその意味が解りませんでした。「そんなの絶対にエースになりたい!」って思うじゃないですか。漫画だけじゃなくて、現実世界でも本当にそういうことがあるんだということに感動しました。人間誰しも目立ちたいじゃないですか。私だったら絶対エースで走りたいなって思っちゃうから、アシストすることに専念している選手の生き方とかプロ意識に魅せられてしまって、今はアシストの選手をめちゃくちゃ推してます。
―ちなみにどなたを推されていますか?
「UAEチーム・エミレーツ」のラファウ・マイカ(以下、マイカ)とニルス・ポリッツで、まさにポガチャルを支える2人です。決め手になったのが、2023年のツール・ド・フランスでの出来事。コンディションの悪いポガチャルに対するマイカの優しい気遣いが素晴らしくて、今でも思い出すだけで泣けちゃうくらいです。UAEの中でもエースになれるくらいの実力があるのに、若くして出てきたポガチャルにこうも声を掛けられる姿に素晴らしいと感銘を受けました。私もSKE48で後輩が増えてきて先輩という立場になってきたんですけど、こういう人になりたいなって思いましたね。ロードレースって、漫画のような感動的なストーリーが現実に起こり得ることも、魅力の一つだと思います。
自由な自転車の楽しみ方を発信したい
―女性目線でのロードバイクの楽しみ方があれば教えてください。
一番ハードルが高いところでいえば、手に届きづらい価格帯。他にも、ロードバイクといえばピチピチのタイトなウェアを着て走るというスタイルを思い浮かべると思いますが、そういうイメージを取っ払っちゃってもっとカジュアルに楽しんで良いのでは、と思っています。
スウェットにヘルメット、それにパット付きのショーツとか、それだけでもう大丈夫と私は思っていて、よくそのスタイルでお出かけしたりもします。ウェアを着るのは撮影するときとか、カッコよく走りたいときとか。安全面を意識しながらも自分のスタイルで楽しみたい派なので、ペダルもビンディングペダルにせずフラットペダルのままです。気になるところを見つけたら自転車を降りて歩くのも楽しいので、固定概念化されている従来の楽しみ方を払拭して、新しい自由な楽しみ方を私自身が発信することができたらなと思っています。
ちょっとでもスポーツ用自転車を始めてみたいと思ってくれている人は、「こうあるべき」ということを気にせずに、まずはレンタサイクルを借りてみて、自転車の楽しさに触れてみてほしいなと思います。あと自転車って、自分の足でどこへでも行ける乗り物なので、「推し活」とか「聖地巡礼」の乗り物として自転車を取り入れてみるのもおすすめです。推しが食べていたグルメを食べに自転車で足を伸ばしてみようかなとか、そういったことでも良いと思うので、まずは乗って楽しんでみてほしいと思います。

―自転車でチャレンジしてみたいことがあれば教えてください。
まずは100㎞ライドに挑戦してみたいですね。羽豆岬までの70㎞を走ってみて、終わった後は地獄なんですよ(笑)。身体のケアとか絶対しないと、翌日に劇場公演のお仕事があったら絶対踊れないくらいの疲労度だったんですけど、それすらも楽しいって思えるようになってみたいです。
自転車のお仕事をさせていただく機会が増えて、まずは初心者脱却のためには100㎞走破しなければと思っています。あとは、自転車を始めて本当に人生が変わったと思っています。冠番組を持たせていただいたりお仕事が増えたこともそうですけど、自転車に乗って人生を変えてくれた、―自転車業界に恩返しをする意味でも盛り上げたいなって思っています。自転車業界の‘‘名アシスト’’になれるように。SKE48のエースとしても走れるように頑張りたいと思います。

―他にやってみたいことはありますか?
ロードバイクの友達とかいなくて今まで一人で走っていたので、まだまだロードバイクを楽しみきれてない部分があると思っています。自転車ショップが開催してくれる初心者向けのライドイベントがあるのは知っていますが、私が行ってもいいのかなとか躊躇う部分もあって・・・。
逆にアイドルだからこそできることと言ったら、ライドイベントを開催することだと思っています。初心者向けのイベントに向かうのがちょっと恥ずかしいと感じる方もいらっしゃると思うんです。だからこそハードルを下げて、アイドルファンや自転車に乗ったことない方も気軽に楽しめるライドイベントにゲストライダーとして、あるいはSKE48が開催しても良いと思います。そういうのが実現できたらというのが願いです。
自分の実力に関係なく言えばやりたいことだらけで(笑)。「Mt.富士ヒルクライム」(※3)にエントリーしたいです。富士ヒルはトレーニングを積まないと完走できないと思いますけど、人生で1回は挑戦してみたいです。トライアスロンも見ていてカッコいいので、自分もいつか挑戦してみたいと思っています。
(※3:世界遺産・富士山を舞台とした富士スバルラインを走行する日本最大級のヒルクライムレース)