手ぶらで気軽に「しまなみ海道」 レンタサイクルと船で行く3島ポタリング(広島)旅先でのレンタサイクル活用術
広島県尾道市と愛媛県今治市をつなぐ全長約70kmの「しまなみ海道」。島ごとに橋を渡ってサイクリングを楽しめるため、走り方のバリエーションが豊富で、コースを走破することはもちろん、レンタサイクルで短い距離をポタリングしたりと、旅のスタイルや体力に合わせて様々な楽しみ方ができます。今回はスポーツ自転車初心者の方でも楽しめる、レンタサイクルとフェリーを組み合わせたライトなしまなみプランをご紹介します。

オススメポイント | レンタサイクルとフェリーを組み合わせて日帰りで楽しめるお手軽コース。全行程のちょうど半ばにあたる生口島の瀬戸田港をゴールに設定しつつ、観光とグルメ要素を詰め込んだビギナー向けのライトプランです。 |
---|---|
レベル | ★(初心者向け) |
距離 | 35.8km |
獲得標高 | 453m |
発着地 | 尾道港 |
立ち寄りスポット | しまなみレンタサイクル、因島はっさく屋、松愛堂中庄店、因島水軍城、しおまち商店街周辺 |
本州側の玄関口尾道市でレンタサイクル
本州側のしまなみ海道のスタート地点となる広島県の尾道市。瀬戸内海沿いに位置し、歴史ある街並みやおしゃれなカフェ、ゲストハウスが点在する観光地として知られています。
そんな尾道で訪れるサイクリストに人気なのが「ONOMICHI U2」。旧倉庫をリノベーションして作られた、自転車と旅をテーマにした複合施設です。

サイクリスト向けのホテル「HOTEL CYCLE」では宿泊時に愛車を部屋に持ち込めるほか、おしゃれなベーカリーやレストラン、セレクトショップ、自転車ショップなども併設しており、旅の気分を盛り上げてくれます。

そんなしまなみ海道の玄関口となる尾道市では、レンタサイクルのサービスも充実しています。「しまなみレンタサイクル」は、しまなみ海道沿いに設置された10カ所のターミナルで自転車の貸し出し、返却を受け付けている便利なサービス。利用時にあらかじめ返却ターミナルを告げる必要がありますが、返却先も変更できるので、天候や体調によって旅程を変更しても安心です。


車種は、クロスバイクや軽快車、電動アシスト自転車、キッズバイク、そして二人乗りのタンデム自転車まで種類が豊富。体力や目的に合わせて自由に選べます。レンタル料金も1日3000円からとリーズナブルで、ヘルメットの無料貸し出しも行っています。

サイクリストウェルカムなしまなみ海道
しまなみ海道の区間には6つの島(向島、因島、生口島、大三島、伯方島、大島)が点在し、大小の橋が連なっています。その美しい瀬戸内海の景観と、島々を巡る独特の風情から、サイクリングロードとして世界的にも高く評価されており、国が定める「ナショナルサイクルルート」にも認定されています。

しまなみ海道の大きな特徴の一つが「ブルーライン」の存在です。車道の左側に幅が20cmほどの青いラインが描かれており、路面には距離表示も刻まれています。これにより、初めて走る人でも道に迷うことなく安全にサイクリングを楽しむことができます。


また、しまなみ海道では「思いやり1.5m運動」と称してクルマが自転車の横を通過する際に1.5m以上の安全な間隔を保つことや、道路状況によっては徐行することを呼びかけています。愛媛県を発祥とする運動で、道路上でクルマと自転車の安全な共存を目指す行動が浸透しています。

自転車の横を通過する際に間隔を保って追い越すクルマが多い
また、ルート上には「サイクルオアシス」と呼ばれる自転車利用者をサポートする休憩所や施設が点在しています。これらの施設では、空気入れや簡単な工具を無料で借りられるほか、トイレや給水、休憩スペースも整備されています。地元のカフェや観光案内所、公共施設などが協力しており、サイクリストにとって心強い存在です。

海が出迎えてくれる向島
クロスバイクをレンタルして、生口島の瀬戸田港を目指す“しまなみ海道広島3島ポタリング”のスタートです。まずは尾道港から渡船に乗って目の前の向島まで渡ります。サイクリングの始まりが渡船という点で、“瀬戸内感”が高まります。

ブルーラインを辿って島の西側へ向かうと、海沿いの道に出ます。護岸が低いので、視界を遮られずに海の景色を眺めながらサイクリングが楽しめます。
海沿いをしばらく走ると、因島にかかる因島大橋が見えてきます。空と海をバックに迫りくる存在感に圧倒されます。


因島のターゲットははっさくスイーツと水軍城
橋を渡って2つめの島、因島(いんのしま)に到着です。因島は柑橘の「はっさく」発祥の地であることでも有名で、はっさくを使ったスイーツが数多く存在します。

中でも外せないのは、サイクリストの立ち寄りスポットとしても人気の「はっさく大福」。ジューシーなはっさくの果肉と上品な白あん、そして柔らかなお餅の組み合わせは絶妙なハーモニーを生み出します。

ただ、旬の季節(冬から春にかけて)があり、時期を逃すとはっさく大福にありつけないことも。そんなときでも、加工したはっさくを使ったはっさくスイーツが楽しめます。


しまなみ海道のブルーラインから少し寄り道になりますが、因島でぜひ訪れてほしいのが「因島水軍城」です。ここは、かつて瀬戸内海を支配し、「海の武士団」として名を馳せた村上水軍(因島村上氏)の歴史とロマンが詰まった場所。彼らは単なる「海賊」ではなく、航路の安全を守り、交易を管理し、時には戦国の世を動かした瀬戸内海の「海の武士団」だったのです。その本拠地の一つが、この因島でした。

館内では、村上水軍が実際に使ったとされる甲冑や武具、古文書などが展示され、彼らの知られざる戦術や交易によって築かれた独自の文化に触れることができます。

レモンの島「生口島」でランチ&デザート
そして、因島から生口橋を渡った先に広がるのが日本一の「レモン島」として知られる生口島です。

生口島ではランチ休憩を目指して「しおまち商店街」へと向かいます。瀬戸田港のフェリー乗り場付近から耕三寺までの間に位置する約600mの通りで、生口島で最も賑わいのあるエリアとして、グルメスポットやお土産店、レモン関連商品などを扱う約50店舗のお店が並んでいます。

生口島に辿り着いたらぜひ味わいたいのが、ここでしか味わえないローカルグルメ、「瀬戸田レモン鍋」です。

「レモンが鍋に?」と驚かれるかもしれませんが、味わってみると納得。レモンの酸味が絶妙に溶け込み、出汁の旨味と相まってまろやかで奥深い味わいを生み出します。レモンのフレッシュな風味が魚介や野菜等の具材の旨みを引き立て、口の中いっぱいに広がる爽快感はまさに天然のポン酢を思わせる風味です。


おなかいっぱいになったら次はデザート…の前に、ちょっとおなかを落ち着かせがてら、「ちどり」の向かいにある耕三寺を訪れてみてはいかがでしょう。元実業家耕三寺耕三が慈母への報恩感謝の思いを込めて建立した寺院だそうで、5,000平方メートルもある大理石の庭園「未来心の丘」は、SNS映えスポットとして話題を集めているそうです。

おなかがこなれたところで、いよいよデザートです。耕山寺周辺にはレモンスムージーやジェラート等、レモンを使ったスイーツを扱う店が点在していますが、その中でチョイスしたのは、しおまち商店街入り口付近にある「Cafeさよ」のレモンソフトクリーム。ソフトクリームのコクのある甘さと、想像以上に存在感があるレモンのさわやかさがマッチした絶妙な逸品です。

しおまち商店街を瀬戸田港側に進んでいくと、「VIA shimanami」というサイクルウェアを扱うショップがあります。「荒サイ」の名で知られる東京の荒川沿いにあった自転車カフェ「CAFÉ VIA」のオーナーがしまなみ海道に魅了され、生口島のしおまち商店街に2019年に支店をオープンしたというお店です。

店内にはしまなみをテーマにしたオリジナルジャージが所狭しと並んでいます。ジャージの他に、サイクルキャップやグローブ、ソックス、サコッシュの取り扱いも行っています。

しまなみ海道に来た記念に、あるいは自転車仲間へのおみやげとしてもおすすめです。

しめくくりは海上クルーズ
サイクリングは瀬戸田で終了。瀬戸田町観光案内所にある窓口でレンタサイクルを返却し、瀬戸田港へと向かいます。観光案内所はしおまち商店街の耕山寺側の入り口に近いので、ランチ前に自転車を返却し、その後は徒歩で散策しながら瀬戸田港まで向かうのも良いでしょう。


瀬戸田港から、スタート地点の尾道港までフェリーで戻ります。瀬戸田→尾道へは日に6本なので、あらかじめ出発時刻を確認しておき、逆算して行動するようにしましょう。ちなみにこの日は15時出港の船に乗りました。サイクリング+観光にかかった時間は6時間ほど。午前9時に尾道をスタートしても余裕をもって行動できるスケジュールです。

この「尾道~生口島(瀬戸田)サイクリング&フェリー帰着」プランは、サイクリングの爽快感、しまなみの絶景、観光スポット、そして美味しい食体験を日帰りでギュッと詰め込んだ、おいしいとこどりのしまなみプラン。朝早く尾道を出発すれば、充実した一日を過ごし、おまけに船旅も楽しんで夕方には尾道に帰着できます。
ビギナー同士で楽しむのはもちろん、サイクリストの方はしまなみに行ったことのないビギナーさんを案内するプランとしてもおすすめです。

アウトドアメーカー「モンベル」の広報部勤務を経て、自転車専門webメディア『Cyclist』編集部の記者として活動。主に自転車旅やスポーツ・アクティビティとして自転車の魅力を発信する取材・企画提案に従事。私生活でもロードバイクを趣味とし、国内外を走り回る一方で、社会における自転車活用の推進拡大をライフワークとしている。
この人の記事一覧へ