Q,自転車「青切符」対象の反則行為 なぜ115項目もあるの?弁護士に聞く、自転車のルールの素朴な疑問
2026年4月1日から、自転車の交通違反に対して「青切符」制度が導入され、16歳以上の違反行為に対して反則金が科されることになりました。信号無視や一時停止無視、携帯電話の使用などが含まれますが、驚いたのは115(※)という項目数の多さ。なぜ、これほど膨大な数になってしまったのでしょうか?
(※交通違反は道路交通法に規定されており、解釈次第で違反の分類や数え方は異なる)

A:自転車の反則行為は、約115項目にわたる多種多様なものが含まれているとされています。この内訳は、自転車のみを対象としたものは「歩道走行」「並走」「二人乗り」等5項目のみと少なく、残りの約110種類が自転車を含む車両全般を対象とした交通違反です。
従来、反則行為の対象となる「車両」から自転車が除かれていたのですが、道路交通法の改正により、自転車も含まれるようになったため、その他の自動車やバイクといった車両全般を対象とした反則行為が、そのまま自転車にも適用されることとなりました。
もちろん、免許関係の規制や自動車固有の設備等に関する規制は、自転車には適用されませんが、それ以外の刑事罰により禁止されている違反行為は、一部の重大な違反行為(赤切符の対象となる飲酒運転や大きな速度超過等)を除き、基本的にすべて反則行為となりますから、自転車の反則行為も非常に多くなります。
全てが自転車を対象としたものではないが…
道路交通法の条文には「自動車は…しなければならない」と、明確に原付や自転車を規制対象としていないものもあり(シートベルト着用、高速道路の転回禁止など)、それ以外は「車両(等)は…しなければならない」となっているものがほとんどです。「自転車は…しなければならない」となっているものも少数あり(並進禁止など)、条文では規制対象が書き分けられていると言えます。
しかし、これらの反則行為を見ていくと、免許関係など明らかに自転車に適用がないものは明確に除外できるとしても、規制対象が明確に区別されておらず、実際に自転車で取締りができるのかどうか、取り締まりを行うべきかどうか、疑問になるような項目も含まれています。
例えば、速度超過、高速道路上の違反、安全不確認ドア開放、駐車禁止などです。速度超過は、スポーツタイプの自転車などで速い速度が出る自転車もあるので、違反の可能性はありますが、他方で速度計の設置が求められていないことから、自転車の運転者にその超過した速度に応じた反則金を課すことが現実的なのかという疑問はあります。
また、高速道路上での違反も、誤進入もありえることからまったく可能性がないとは言えませんが、想定しにくい違反です。安全不確認ドアの違開放反も同様に、ドアのある自転車がまったく存在しないとは言えませんが、想定しにくい違反と言えるでしょう。
ただ、この点については従前から、原付なのに高速道路での速度違反が反則金対象行為になっていたり、原付や自動二輪車の後方不確認ドア開放が反則金対象行為となっていたりしていたものを、運用面でカバーしていた部分はあります。
一方、駐車禁止についてはこれまで取り締まりはされていなかったと思われる違反で、代わりに自治体による迷惑駐輪の撤去が行われてきたことから、今後反則行為として取り締まりの対象となるのかが注目されるところです。
◇
とはいえ、反則行為として挙げられている行為はこれまでも(今後も)罰金刑や懲役刑の対象となってきた行為ですし、おおむね通常の交通ルールとして遵守すべきものというべき内容と言えますから、反則行為に多数の行為が挙げられているからと言っても、自転車のルール遵守が促進されると考えれば、むしろ望ましいことではないかと考えられます。

2009年弁護士登録。会社関係法務、独占禁止法関係対応、税務対応を中心に取り扱う傍ら、2台のロードバイクを使い分けながら都内往復20kmの自転車通勤を日課とする。久留米大学附設高校卒・東京大学法学部卒・早稲田大学法務研究科卒。
この人の記事一覧へ