Q,バイクキャリアによる車載、道路交通法違反になる可能性がある?弁護士に聞く、自転車のルールの素朴な疑問<38>
自転車の車載について、とくにクルマの後方に搭載するキャリアで違法な積載がSNS等で話題となることがあります。正しい積載方法と、違法な形で積載していた場合にトラブルが発生したときの問題点を、弁護士が解説します。

合法的に確実なのはルーフキャリアだが…
A:クルマに自転車を車外のキャリアなどに積載して運ぶ様子を見かけることがあります。自転車は大きく目立つ上に、自動車の走行中にグラグラと揺れているのを見たりすると、本当にこの積載方法は大丈夫なのかと心配になったりするものです。
クルマのルーフや後部などに荷物を積載すること自体はできます。しかし、車体から大きくはみ出すような形で積載することは禁止されていますし(道路交通法施行令22条)、積載物をしっかり固定していないとそれ自体が違反に問われます(道交法71条4号)。
具体的に積載物の積載方法には、以下のような制限があります。
- 【道路交通法施行令22条3号】
- 積載物が、自動車の前後それぞれ、自動車の長さの10%を超えてはいけない
- 積載物が、自動車の左右それぞれ、自動車の幅の10%を超えてはいけない
- 【道路交通法施行令22条4号】
- 積載物の高さは3.8mを超えてはいけない
全長4.5m、全幅1.75mの標準的な自動車を例にしますと、前後にはみ出せるのは45㎝、左右にはみ出せるのは17.5㎝だけです。そうすると、左右に自転車を積載することはほぼ不可能で、前方は視界を遮るので、道交法55条2項で禁止されることになりますから、後ろか屋根に積載するしかありません。
自転車を立てた状態で、後部のトランクやテールゲートに平行に寄せて括り付ける場合、後方に45㎝以上はみ出てはいけないので、ロードバイクのハンドルが通常40~50㎝はあることからするとギリギリですし、場合によってははみ出ます。また、ロードバイクの全長は1.7m~1.9mくらいあるので、左右のはみだしもギリギリです。
しかも、尾灯、ナンバープレート、反射器などが隠れないように積載しなければ違反になるため(道交法55条2項)、実際に積載するには困難が伴います。
これらの問題点がすべて解決できない限り、合法的に自転車を積載するためには屋根に載せるのが確実な方法だといえます。ただし、自転車を屋根に積載するには、ルーフレールなどの適切な固定具が必要、空気抵抗が増えて積載物も自動車も安定性が落ちる、橋梁などに自転車をぶつけてしまう事故が起きる恐れがあるなど、すぐには法令違反とはならなくても、結果として事故や安全運転への障害が生じかねないリスクがあります。
以上のことを考えていくと、自転車を自動車の車外に積載することは法令上も、また現実の安全運転の観点からも簡単なことではありません。やはり工夫した上で車内に積載するのが最良の安全策といえるでしょう。

2009年弁護士登録。会社関係法務、独占禁止法関係対応、税務対応を中心に取り扱う傍ら、2台のロードバイクを使い分けながら都内往復20kmの自転車通勤を日課とする。久留米大学附設高校卒・東京大学法学部卒・早稲田大学法務研究科卒。
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