ロードバイクで東海道中膝栗毛!東京→大阪を目指す旅路に出発(日本橋→府中宿)ロードバイクでツーリングに挑戦しよう<1>
レースで速く走るために生まれ、進化を続けてきたロードバイクですが、現代に至っては自転車ツーリングに適した車種でもあります。今回、江戸時代に流行した東海道の旅話「東海道中膝栗毛」に倣って、3日間かけて東京から大阪までの旅を実施。歴史に浪漫を感じながら、自転車旅に赴いてみませんか?

かつては“ロードレーサー”と称されていたほど、ロードバイクはレースのために生まれた自転車です。タイヤは細く、さまざまな地形に対応するため多段ギアを採用しています。近年では油圧ディスクブレーキがスタンダード化しはじめ、以前のものと比較して太いタイヤも一般的になりました。元々はスピードだけを求めていた設計でしたが、機材の技術革新とともに、速さに加えて快適性も両立しつつあるのです。
また、自転車に装着するアクセサリーやアイテムの進化も目覚ましいものがあります。前述のように、自転車の進化に対応すべく、サイクルコンピューター、ライト、常時録画可能なレコーダーが誕生し、既存のバッグ類もそれに対応してきました。
今回の旅では、それら最新の機材やアクセサリーを工夫して使い、よりコンパクトかつ軽量に、効率を求めた装備を用意しました。
3泊4日を走り切るための装備と準備
いわゆる“キャノンボール”のように、24時間で東京〜大阪間に挑戦することもありますが、今回は東海道の宿場町をベースに、観光スポットを巡りながら数日かけてライドする企画です。よって、旅路の途中には宿泊することも必要です。どのような装備で、何を持って行って、事前の準備は何が必要かを解説します。

近年ではサイクリストフレンドリーな宿も増えてきました。車体を輪行袋に入れれば部屋保管OKであったり、フロントで預かってくれたり、そのまま部屋にロードバイクを持ち込めるホテルも存在します。
今回の旅は日本橋を出発し、大阪のホテルだけ事前に決めましたが、道中は1日でどこまで進行できるか分からなかったため、進み具合にあわせて当日に調べて宿を確保しました。地図アプリや予約サイトを検索する際、「自転車」や「輪行」のワードを含めると、過去に宿泊した別のサイクリストのレビューが検索で引っかかることもあり、ホテル側の対応を参考にすることもできます。念の為最終的には電話で宿に確認することをおすすめします。
自転車に取り付けるバッグ類を用意する
着替えや充電器など、持ち物は多い方が宿泊の際に便利ですが、多すぎると重量が増えて身動きが取りづらくなり、ライド中の快適性が失われます。なるべく必要なものだけをピックアップして、軽量コンパクトにまとめた方が旅の楽しさは感じられるはず。
筆者は今回、ハンドルバッグとサドルバッグを用意しました。ハンドルバッグは約3リットル、サドルバッグは約4リットルの容量です。天候によっては雨や水たまりの跳ね上げで、バッグ類が濡れる可能性があるため、防水加工された製品の方が長期間のツーリングでは有効でしょう。

なお、リュックの使用はおすすめしません。特に長距離のライドにおいては、身体に負担がかかりやすく、肩こりや手の痺れなどを引き起こす可能性もあります。ウェアのポケットに収納できる範囲内に納め、収納類はなるべく身につけない方がよいでしょう。

今回は1日ごとの距離は200km以下を想定していたため、普段から携帯している予備チューブやパンク修理セット、電動ポンプ類に追加等はありませんでした。
何を持参すべきか
なるべく最低限コンパクトにすべく、下記のものを用意しました。
・Tシャツ×2枚
・ハーフパンツ×1着
・マリンシューズ
・下着類×2セット
・洗面用具×1式
・洗濯ネット×1枚
・充電バッテリー×1つ
・各種コード類
・ミニツール
・予備チューブ×2本
・電動ポンプ

宿泊するホテルはビジネスホテルを選択しました。ランドリーが完備されている場合が多いことが理由です。当日着用したウェアは宿で洗濯するため、1セットでまかないます。
また、宿に到着してからの着替えも必要なので、Tシャツとハーフパンツをサドルバッグに詰め込みました。ずっとウェア姿では居られないですからね。到着したらシャワーを浴び、着替えてから、現地でしか味わえない名産を楽しみましょう。せっかく宿泊するのであれば、その土地ならではのグルメを食べないと損です。
現代において、スマホやライト類、サイクルコンピューターなど、充電が必要なアクセサリー類が数多くなっています。これらは旅のライフラインにもなりますので、翌日のライドでは満充電で迎えられるようにしましょう。それらに必要な電源コード類だけでなく、万が一途中で充電が切れてしまった時のために、携帯バッテリーを持参することもお勧めします。
ルート情報は心のゆとりに
今回の旅は東海道をベースにライドをするため、基本的には国道1号線沿いを走るルートですが、他の国道と交わったり、県道にそれたりと意外に進路変更が多く発生します。事前にサイクルコンピューターにルートを入れておいた方が無難です。ちなみに、ルートを入れてナビを設定していたのにも関わらず、途中3度ほど道に迷いました。それも旅の一興なのかもしれませんが(笑)
弥次喜多倣って旅へと出発
さて、いよいよライドに出発です。十返舎一九の「東海道中膝栗毛」は弥次喜多コンビが日本橋からスタートし、東海道を旅をしながら、道中の体験などを記した旅行記です。筆者もそれに倣い、友人と共に東海道を走り、大阪の高麗橋を目指します。
友人である宮崎の記事一覧はこちら。

筆者は以前、キャノンボールに挑戦し、似たルートを通りましたが、足早に通り過ぎるだけで全く旅の風情を感じることがなかなかできませんでした。チャレンジ自体はとても面白かったのですが…。そこで、今回はロードバイクでツーリングしながら旅情を感じるライドにしたいと思います。
出発し、都心を抜けていくとかつての品川宿や戸塚宿など、いくつもの宿場町を通過していきます。街の開発によって隠れてしまっていますが、少し道を逸れると意外にも当時の趣を感じることができる石碑やスポットが点在しています。説明文なども掲示されていますので、少し足を止めてみるのも感慨深いものです。

箱根の山は天下の険!
神奈川に入ると、より当時の東海道を連想させる街並みが登場します。大磯宿周辺の松並木は当時の風景画にも描かれています。普段、自動車が行き交う主要な道路にも当時の情景が残っています。


そして、全体で最も過酷な登りである箱根峠も登場。“天下の険”とも称された8里の道は簡単ではなく、ロードバイクにとっても簡単なものではありません。我々は旧箱根街道からアプローチ。厳しいヒルクライムでしたが、なんとか登りきり、頂上手前にある茶屋で名物の甘酒をいただきました。江戸時代の人々もこの茶屋で同じ味を楽しんだそうです。



近くには旧街道の石畳が残っており、当時どれだけ過酷だったか感じられる場所も。自転車で通行できる道路が整備されている現代の環境に感謝すべきなのかもしれません。芦ノ湖までたどり着くと、箱根の関所の立ち寄りはマストでしょう。門の手前から自転車を降り、押して歩けばそのまま通行できます。

頂上を抜け、下りに入ると一気に三島市内へ。三島神社が下ってすぐに位置していますので、旅路の安全を願うために参拝してはいかがでしょうか。我々も事故などないよう、無事を祈って先へと進みました。

走って長い静岡は2日に分割
三島から沼津へ入ると、そのまま海沿いの道を進んでいきます。東海道に沿っていますが、同時にナショナルサイクルルートである「太平洋岸自転車道」にもなっています。ところどころ自転車ナビレーンや案内があるので走りやすいです。

由比宿では、かつて大名など位の高い人が宿泊した「本陣」が復元されていました。道沿いに歴史的な建物があるので、中に入らずとも趣を感じることができます。近場には最大勾配25%の超激坂である薩埵峠があります。こちらが当時の東海道ですので、健脚なサイクリストは挑んでみてはいかがでしょうか。我々は体力を温存するため、太平洋岸自転車道として整備された海沿いの平坦路を進みました。

道中を経験した方はよくご存知だと思いますが、静岡県はとにかく長い! なかなか愛知県が見えてきません。県を跨ぐことで得られる達成感はモチベーションに直結するので、視界に捉えられないとさすがに精神的にこたえてくるもの。よって今回の旅では静岡市で1日目を終え、静岡横断を2日に分けることにしました。静岡市は徳川家康が築いた駿府城あともあり、歴史のロマンにあふれた土地。静岡駅前には家康像が聳え立っていたので、記念写真を撮ってライドを終えました。初日は約200kmのライドとなりました。

次回は2日目と3日目のレポートをお届けします。静岡の後半パートや愛知、三重、滋賀を経て、京都から大阪までを駆け抜けました。乞うご期待!

10代からスイスのサイクルロードレースチームに所属し、アジアや欧州のレースを転戦。帰国後はJプロツアーへ参戦。引退後は産経デジタルが運営した自転車専門媒体『Cyclist』の記者、編集者として自転車やアイテムのインプレッション記事を担当した。現在は自治体の自転車施策プロデュース業務等を担当。
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