変速が決まらない⁉ パーツの消耗で山岳ライドが我慢大会にしくじりサイクリスト<8>
自転車乗りなら「あるある」と苦笑してしまうエピソードからプロの失敗談まで、人の振り見て我が振り直す連載『しくじりサイクリスト』。今回は、『坂は性癖』でおなじみのインフルエンサー・篠さんの失敗談です。常人離れした距離を走り込む篠さんならではの“しくじり”、それは見落としがちな「パーツの消耗」をめぐるトラブルでした。

自転車は消耗品でできている
こんにちは、SNSやYouTubeで自転車関連情報の発信をしている篠です。気が付けばロードバイクを始めて11年目になり、今でこそヒルクライムレースやウルトラロングライドにもチャレンジするようになりましたが、実は始めたての頃、様々な失敗を重ねてきました。今回の記事では、自転車の「消耗品」についてのしくじり体験を話してみたいと思います。

突然ですが、皆さんは「ロードバイクの消耗品」と聞いた時、何を思い浮かべますか?
「ロードバイクは値段こそ張るものの、一度買ってしまえば好きな時間にいつでも乗れるし公道がジムになるから、日割りで考えれば実はすごくお得ですよ」という、ロードバイク経験者が初心者を沼へと引き込む誘い文句があります。自分も正直そこに惹かれた部分がありました。
ロードバイクのフットワークの軽さは想像以上で、今まで自転車で行けるとは思ってもみなかった離れた場所まで足を伸ばせました。最初は月に2、3回乗れれば大満足だったのが、気が付けば休みの日すべてをロードバイクに費やすようにのめり込んでいき…走行距離年間1.5万km以上、獲得標高30万m前後乗るようになった頃には、「あの誘い文句を考えた人はとんでもない嘘つきだ」とはっきり分かったのです(笑)。
自転車のパーツの寿命
私はロードバイクを始めるまで、丈夫な軽快車しか触れてこなかったのもあり、自転車のトラブルはせいぜいパンク程度しか念頭にありませんでしたが、よく考えてみれば、乗る頻度や距離に比例して部品の消耗頻度もトラブルの数が増えていくのは至極当然のことです。
ロードバイクの消耗品を交換頻度が高い順で言えば、まずはパンクの度に補修もしくは交換するチューブ。タイヤはおおよそ4000〜8000km持ちますが大抵使い切る前にサイドカットで寿命を迎えます。
次にシフトワイヤーとブレーキワイヤー、ブレーキシュー(リムブレーキモデル)orブレーキパッド、ディスクローター(ディスクモデル)。これは走行距離、乗り手の体重や操作によって違いますが、チェーンと同じく寿命は3000〜5000kmと言われています。
他にもビンディングシューズのクリートやバーテープ、身につけるウェア、ヘルメット(3〜5年)、チェーンオイルやクリーナーなどのメンテナンス関連も色々あります。
ヒルクライマーならではの「歯飛び」
私が一番印象に残った消耗品は何と言ってもやはり「スプロケット」でしたね。それは山梨県の山中での出来事でした。月に1000〜1500km、獲得標高2〜3万mの走行量を継続して1年半ほど経った頃の話です。
その日も120km獲得標高3000m以上を上る山岳ライドでした。勾配10%が続く長い登りの途中、いつも通りにペダルを回して登っていたら「カンッ」という変な音とともに、踏み込んだはずの足がスカっとなり、自転車が後ろに下がるような感覚に襲われました。
最初は変速調整のミスかな…と何度かアジャスターを調整してみたものの、一向に改善される気配がありません。じっくり車体を観察してみたところ、なんとスプロケットのロー側2枚の歯(27t、25t)の山がかなり細く削られ、欠けた箇所がありました。

スプロケットの歯にかかったチェーンが1箇所だけ落ちてまた戻る現象です。スプロケットが過度に摩耗すると「歯飛び」するということを、この日初めて知りました。
リアスプロケットの交換目安はおおよそ2〜3万kmと言われていますが、ヒルクライムは使い慣れた特定なギアが減りやすい傾向があるので、山岳ライドばかりしていた自分は相当酷使していたようです。

結局この日はどうすることもできず、かと言って楽しみにしていたライドも諦めたくなかったので、ロー側の2枚を封印して23tで激坂だらけのルートを痩せ我慢で完走しました。
あれからはスプロケットも消耗品だ!と認識を改めました。
ちなみに距離を乗り込む人なら、スプロケット同様にフロントチェーンリングも消耗品です。フロントチェーンリングの歯飛びはスプリントなどトルクを一気にかけた際にチェーンが外れたり、最悪落車や転倒に繋がる可能性もあるので、定期的に歯が削れていないかチェックしましょう。
こんな物まで?ちょっと意外な消耗品
もう一つ意外な消耗品で言えば、SPD-SLペダルです。ペダルに関しては具体的な交換目安は示されていませんが、長く使い続けるとガタつきや回転不良、バネの消耗などのトラブルが起こることがあります。私はガタつきが気になって交換しましたが、新品のペダルと比べてみたら、ビンディング部が大きく削られていました。
ここも意外と盲点なので、クリート交換してもペダルの固定力が弱いと感じたら、ビンディングペダルが摩耗していないかチェックしてみましょう。
◇
ここまで書いてみて、ロードバイクのパーツは実は「ほぼ全部消耗品」だと気が付きます。長く続けている人ほど今までチリツモでかけてきた金額は現実逃避したくなるものですが、より安全に、快適にロードバイクを楽しみ続けるには「定期的なメンテナス」と「ケチらずに正しい時期に消耗品を交換すること」がとても大事です。
私のしくじり体験が少しでも役に立てれば幸いです。

漫画『弱虫ペダル』をきっかけに2014年にロードバイクに乗り始める。自転車歴7年。登録者数4万人YouTubeチャンネル『Shino-山は性癖です-』やSNSで自転車の楽しさを発信中。山岳旅ライドを好み、最近はオフロードにも熱心に取り組み始める。磐梯吾妻2Days 女子総合優勝、富士ヒル 女子選抜2位、乗鞍一般女子4位、奥多摩&檜原ステージ女子総合優勝(以上2022年戦歴)
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