イベント参加の心得8カ条~レース系イベント編~イベント参加の作法<4>

2025/09/24    

 初めてサイクリング系イベントに参加する際の心得についてご紹介した前回に続き、今回はレース系イベントに初めて参加する際の心得をご紹介します。レース系イベントには、ヒルクライム大会やクリテリウム、ロードレースなどがあり、競技性が高く、ハイスピードでの走行や集団走行といった、より専門的な知識や準備、テクニックが求められます。「レース系イベント特有の注意点」や「ビギナー参加者が特に気を付けたいポイント」を解説していきます。

 なお、今回の内容は前回の心得を踏まえたうえでの解説になります。まだ読んでいない方は、先に「イベント参加の作法<3>」をご覧いただくことをおすすめします。

心得その1:実力に見合ったカテゴリーにエントリーする

 イベント参加の作法<2>にもあったように「スポーツエントリー」や「RUNNET」等の申し込みサイトを通してエントリーしますが、このとき自分の実力に合ったカテゴリーにエントリーするようにしましょう。

 特にクリテリウムでは細かくカテゴリーが分けられており、またヒルクライムでは自身の参考タイムごとにスタート時間が分けられます。「カテゴリー1(C1)(※)」や「エキスパート(※)」などハイレベルなカテゴリーや偽って速いタイムを申告すると、ペースが合わず接触事故や落車の原因になってしまうことがあります。初めて参加する際は、「ビギナー」や「フレッシュ」といった「初心者〜レースに数回出場経験がある人」のカテゴリーにエントリーしましょう。同じレベルの仲間もでき、レース仲間と切磋琢磨することもできます。

(※):最上級者カテゴリーを指し、イベントによって呼称が異なる

とあるクリテリウムレースの実施要項。どういった人がどのカテゴリーが良いか明記されていることが多いので初めてでも安心
とあるヒルクライム大会では年齢別のカテゴリー分けや制限タイム内での完走ができる人限定のカテゴリーなどイベントによってさまざま

心得その2:コンディションを万全に整える

 サイクリング系イベントと同様に、コンディションは万全にして当日を迎えましょう。間違った減量方法や暴飲暴食はかえって不調になってしまいます。規則正しい食生活を心がけましょう。

 また、前日は炭水化物やたんぱく質を中心に摂り、早めに就寝しましょう。朝食はおにぎりやバナナなどの消化の良い炭水化物を摂ることで、エネルギーを蓄えることができます。さらにレ-ス前にはゼリー飲料などを食べ、エネルギー切れを予防すると良いでしょう。

心得その3:自転車の準備も怠らない

 身体だけでなく自転車も万全な状態に整えるようにしましょう。事前に洗車や点検を行い、自転車を良い状態にしておくことも大事です。

 初めのうちはバイクショップで見てもらう方が確実です。ブレーキワイヤーやチェーンなどが伸びていると、メカトラブルの原因となってしまいます。余裕をもって遅くとも大会1週間前までにはバイクショップで点検をしてもらうと良いでしょう。

心得その4:忘れ物がないか必ず確認する

 レース系イベントでは、1つでも忘れものがあると参加できなくなります。ヘルメットやシューズ、サイクルウェア、アイウェア(サングラス)、グローブ、ボトル、補給食、健康保険証は必ず持っていきましょう。またJCFライセンスを所有している場合は、JCFライセンスも忘れないようにしましょう。

 ヘルメットは「JCF認証マーク」が付いているもの(JCF公認ヘルメット(※))であるか、割れや大きなキズがないかどうかもあわせてチェックしましょう。イベントによっては、JCF認証マークがあるものでないと出場できない場合があります。またヘルメットが割れていると、安全性を確保できないため出場不可となるので、事前にチェックしておきましょう。

(※):自転車競技の安全と競技としての特質を考慮し、自転車競技連盟および加盟団体の主管する自転車競技大会に使用が認められたヘルメットのこと

ヘルメットの裏側や後ろの方に貼っていることが多い。このシールがあるヘルメットは安全性が保証されている

心得その5:いつも以上に時間を守る

 レース系イベントは朝が早いことに加え、受付やスタートなど時間が厳格に定められています。ウォーミングアップや検車(※)の時間も考慮し、さらに距離や時間が長い場合はトイレも済ませておきましょう。スタートの15分前には、走り出せる状態になっていることが理想です。

 もし遅れてしまったら、レースに出場できなくなり、いわゆる「DNS(Did Not Start=スタートせず)となってしまいます。もちろんエントリー費の返金はありません。せっかくのエントリーを無駄にしないためにも、普段以上に時間を意識して行動しましょう。

(※):自転車の安全点検及び規定通りのセッティングかどうかを検査すること

心得その6:スタート前には十分なウォーミングアップをする

 レース系イベントでは、スタート直後から高強度になることがあります。特にクリテリウムやロードレースでは、心拍数が180bpmを超えることも珍しくありません。ウォーミングアップをせずにいきなり高負荷をかけると、内臓や筋肉が大きなダメージを受けてしまうため、スタート前のウォーミングアップは必ず行うようにしましょう。

 ローラー台を持っている場合は会場に持参し、最低でも20分程度回すようにしましょう。ただ単に足を回すだけでなく、10秒程度のダッシュを数本取り入れるなど、心拍数を上げておくことが重要です。ローラー台がない場合、会場周辺を軽めのギアで実走すると良いでしょう。軽めのギアで回したりダッシュしたりすることで、心拍数を上げることができます。

ローラー台を使ったウォーミングアップでは、10分ほど軽く足を回してからダッシュを数本すると良い。心拍数を上げることを意識する

心得その7 :集団の中で危険な動きをしない

 ヒルクライムでは集団になって走ることは少ないですが、クリテリウムやロードレースでは速いペースで多くの選手が密集して走行します。この密集した状態を「集団」、その状態で走行することを「集団走行」と言い、レースでは基礎的な走行技術です。公道では並走は禁止されているため、慣れるにはレースを重ねるしかありません。

 初めての集団走行でも、守ってほしいポイントが4つあります。①急な進路変更をしない②無理な追い越しをしない(※)③疲れても下を向かず前を見る④自分の走るラインを守る―これらを意識することで落車を予防でき、安全に集団走行をすることができます。

(※):追い抜く際はコースの外側から追い抜き、しっかり抜き切る。コース内側からの追い抜きは禁止されています。また、集団内で追い越しをするために動く際は、後方や左右をしっかり見て他選手と接触しないかを目視で確認しましょう

 一人でも危険な動きをしてしまうと、多くの選手を巻き込んだ大落車につながる可能性があります。初めての集団走行だと恐怖心や緊張感があるかと思いますが、緊張しすぎず、とにかくルールを守ること。安全意識を常に持ちながら、レース独特の雰囲気を楽しみましょう。

心得その8:DNFは恥ずかしいことではない

 レース系イベントでは「DNF(Did Not Finish=途中棄権、リタイヤ)」になることも珍しくありません。ベテラン選手でもプロ選手でも、メカトラブルや体調不良、オーバーペースによる限界など様々な理由でリタイヤします。

 特に最初のうちは「せっかく参加しているのだから最後まで走らないと!」「完走できなくて恥ずかしい、悔しい」と感じるかもしれません。しかし、無理をして走ることが最も危険です。それよりも安全にレースを終えられるよう、自分の身体や状況を冷静に見極めるようにしましょう。

 ちなみにプロ選手やベテラン選手はDNFをポジティブに捉える傾向にあります。今回のレースでは何がいけなかったのか、DNFの経験を次に生かす行動をしています。「ウォーミングアップ不足だった」「途中でハンガーノックになってしまった」など原因を振り返ることで、自分自身を成長させることができます。DNFを怖がらず恥ずかしがらず、前向きに捉えましょう。

安全に楽しむために覚えておきたい心得

 安全に楽しむために日頃からちょっとした心がけをすることもおすすめです。例えば、

・ケガをした際に治療しやすいように脚の毛を剃っておく

・爪を短く整えておく(落車時のケガ防止)

・ヘルメットの顎紐は指2本が入る程度のキツさ

などすぐにできる工夫があります。

ヘルメットは深く被り、顎紐は簡単に脱げないように写真くらいキツく締める

 またレース系イベントに参加する際は、家族や仲間と参加する方がもしもの時に安心感がありますし、応援の楽しさも倍増します。

 レース系イベントは、サイクリング系イベントや普段のライドとは違った独特な緊張感や楽しさを味わうことができるイベントです。参加前からのトレーニングや準備、当日の行動など色々と大変そうに見えますが、レースは何度も参加するうちに自分の成長が“結果”となって現れるため、ハマっていくサイクリストも多いです。

 レースも勝ち負けを楽しんだり仲間を応援することを楽しんだり、「楽しむイベント」であることに変わりはありません。安全に挑戦し、仲間や会場の雰囲気、自分の成長を楽しんでみてください。

文:片山葉月(かたやま・はづき)

父親の影響で自転車競技に出会い、高校入学と同時に自転車競技部に所属。高校在学時に全国大会へ出場、入賞を果たす。大学ではサイクルツーリズムを学びながら、実業団チームに所属しJBCFに参戦。選手活動だけでは飽き足りず自転車レースの審判資格を取得し西日本を飛び回る。大学卒業後、産経デジタルへ入社し競技活動は一時お休み中。自称・自転車に生かされている自転車オタク。

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