2024.1.5
ロードバイクをはじめとするスポーツ用自転車が以前と比べてより一般的になり、街で見かけることも増えてきました。一方で、未舗装路を走るマウンテンバイク(MTB)は目にする機会が非常に少ないと思います。興味はあるものの始め方や楽しみ方がわからない…そんなロードバイク乗りも多いのではないでしょうか。筆者もその一人でしたので、1台買ってみました。どのようにMTBを趣味として嗜めば良いのか、体験や経験を連載を通じてお伝えしていきます。
筆者は競技歴19年になる生粋のロードバイク乗りですが、未舗装路の経験はほぼゼロ。レンタルしたMTBやシクロクロスバイクでコースを走ったことがある程度で、未舗装路用のバイクを所有したことはありませんでした。
理由としては、まず保管場所がなかったこと。MTBは特にハンドル幅が広く、家の中でスペースをとります。また、走る場所が限られていること。私は東京都内に住んでおり、山やMTBフィールドに通うには非常に不便です。運搬用の車もあった方が良いですよね。とにかく趣味として始めるにはハードルが高すぎました。
とはいえ、山を滑走するMTBは純粋に楽しそうですよね。いろいろ難題もありましたが、「買ってから悩もう」と見切り発車で購入を決めました。
ロードバイクはそれなりに知識があり、選び方も理解していますが、MTBに関しては全く何もわかりませんでした。そこで、お店のスタッフと相談しながら決めようと思い、訪れたのはコーダーブルームショップ稲城店。担当いただいたのは野中秀樹さんです。自身もMTBをはじめ、ロードレースやシクロクロスレースで活躍しているその道のプロフェッショナルです。
私としてはMTBを楽しむ用途として、レースへの参戦やMTBフィールドのライドを想定していました。一方、最新の機材トレンドを知らなかったため、野中さんへと尋ねると、急速に流行が変化する傾向が見えてきました。
現在、レースシーンにおいては前後にサスペンションを備えた“フルサス”が全盛です。以前は機構が増えるため、重量増を嫌いフロントのみのシングルサスペンションも選択肢でした。しかし、素材の進化や、サスペンションの小型化など、技術が進んだことにより、シングルサスペンション仕様に少々の重量増でフルサス仕様になります。悪路を走る競技なので、あった方がいい。近年の競技では、コースがどんどんハードになってきているので、選手からはそれに対応できる高いスペックが求められます。
また、ロードバイクでも見かけますが、フロント変速機がない“シングル仕様”がほとんどです。リアのギアが多段化(シマノは12速)し、ワイドなギアレシオになったことや、よりシンプルな操作を求める傾向が強まったことが理由です。チェーンがギアから落ちるリスクも減少することも要因の一つです。
タイヤはチューブレスが基本です。27.5インチも以前はありましたが、今では小柄な選手でも29インチの大きなタイヤサイズをチョイスしています。ギャップに対して少ない入射角で有利にクリアできますし、巡航性能が高いというメリットを求めるためです。
なるほど、ロードバイクも各規格が移行している過渡期ですが、MTBもどんどんと変化しているようです。しかし、最新のレース機材は高価であり、エントリーモデルでも30~40万円ほどはするとのこと。1台目のMTBとしてはハードルが高い。
野中さんが説明を続けます。
いまお話したのはレース機材のトレンドであって、MTBを気軽に楽しむためのスペックであればそこまでは必要ないと思います。今でもアルミフレームは人気ですし、シングルサスペンションでもイベントやレースに出場できます。まず初めての1台は堅牢なアルミフレームが良いのではないでしょうか。
考え方がロードバイクと同じで安心しました。テクニックがまだない段階で高価なバイクを操っても良さを活かしきれないですし、何より壊れてしまうと元も子もありません。
ということで、今回は野中さんがおすすめするネストのモデルを購入することに決めました。BOOST規格のアルミフレームにフロントサスペンションを搭載したモデルで、コンポーネントはシマノのDEOREです。タイヤは29インチを採用しています。価格は完成車で20万円ほどです。実物はロードバイクと比べて一回り大きく、インパクトがあってかっこいい!
サイズはラインナップの中で最も大きいサイズを野中さんと相談して決めました。「悪路や段差で重心を移動しながらライドするため、サイズやポジションはとても重要です」と野中さんは説明します。こうした疑問や相談を親身になって聞いてくれるのも店舗での購入によるメリットですね。
車体は決まりましたが、MTB特有のアイテムやアクセサリーは必要になるのか野中さんに伺うと…。
基本的にはロードバイクと同じです。ヘルメットやグローブが必要になります。専用品だと、ヘルメットの側頭部や後頭部が覆われているものもあります。ダウンヒルで主に使用するフルフェイスタイプなどです。また、グローブは指が全て覆われたフルフィンガータイプを愛用する人が多いと思います。
一方で、ロード用のヘルメットやウェアで走っても問題ありません。ビギナーの方はビンディングペダルではなく、フラットペダルでももちろんOK。すでにロードバイクをお持ちの方は、手持ちのアイテムを活用されても良いでしょう。
とアドバイスをいただきました。ちょっと敷居を跨ぎやすくなりましたね。
冒頭で「見切り発車」と述べましたが、実は結構こうしたお客さんが多いそうです。買ったのはいいけど乗らない、という“買って満足パターン”も多いのだとか。こうした由々しき事態を避けるためには「走る目標が大事!」と野中さんは訴えます。
ということで、私は来年(2024年)の目標として「セルフディスカバリーアドベンチャー・イン・王滝100km」の完走を目指します! 悪路の山道を100km駆け抜ける国内屈指のタフなイベントです。宣言するなりモチベーションが湧いてきました。
とはいえ、保管場所問題や、山以外で走っても楽しいのか、といった疑問や問題が出てくることでしょう。しかし、走ってみないことには解決法も浮かびません。今後、フィールドをライドしたり、イベントに参加しながら、ロードバイク乗りから見たMTBの面白さを皆様にお伝えしていこうと思います。お楽しみに!
10代からスイスのサイクルロードレースチームに所属し、アジアや欧州のレースを転戦。帰国後はJプロツアーへ参戦。引退後は産経デジタルが運営した自転車専門媒体「Cyclist」の記者、編集者として自転車やアイテムのインプレッション記事を担当した。現在はYouTubeチャンネル「サイクリストTV」でナビゲーターを務めるほか、自治体の自転車施策プロデュース業務を担当。
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