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初めてのダウンヒル、乗り方のコツを教えて下さい(後編)

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教えて! MTBのスゴイ人<8>
初めてのダウンヒル、乗り方のコツを教えて下さい(後編)

 マウンテンバイク(MTB)のプロフェッショナルがMTBにまつわる素朴な疑問に答えていく本コーナー。今回は「初めてのダウンヒル、乗り方のコツを教えてください」という質問の後編です。質問にプロライダーの井手川直樹氏が答えていきます。

今回の回答者 井手川直樹(いでがわ なおき)
 1980年4月22日生まれ。1996年に日本最高峰のクラス、エリートクラスへ特別昇格。今も破られていない最年少記録である16歳で全日本チャンピオンに。2002年から2年間は海外のチームへ移籍しワールドカップを転戦。その活躍からホンダ・レーシング(HRC)のMTBチームの設立当初からメンバーとして活動した。在籍中、2年連続のナショナルチャンピオンやアジアチャンピオンなどを獲得し、数多くの功績を残した。現在も現役にこだわり、「KONA RACING TEAM/STRIDER」でレース活動を続けながら、チーム運営やMTBの普及活動に努めている。

 皆さん、こんにちは。プロマウンテンバイクライダーの井手川直樹(いでがわ なおき)です。

 ダウンヒルの乗り方の5つのポイント(基礎)について前編、中編と2回に渡りお伝えしてきましたが、今回、最後のポイント「⑤ 曲がる(コーナー)」をお伝えします。

  • ダウンヒルの乗り方の5つのポイント(基礎)
  • ①ブレーキ
  • ②ニュートラルポジション
  • ③下りのポジションと加重
  • ④バランス
  • ⑤曲がる(コーナー)

⑤ 曲がる(コーナー)

 まず、コーナーといっても様々なタイプがあります。
・平らな場所で大きく曲がるコーナー
・バンクがあるコーナー
・下り斜面にある左右に連続したコーナー など。

どんなコーナーかによって曲がり方やテクニックは異なりますが、ここでは大きく分けて「3つの曲がり方」と、コーナーで重要な「ライン選び」をお伝えします。それぞれの曲がり方の説明と、イメージ写真を一緒にご覧下さい。

ニュートラルポジションでのコーナーリング

 サドルから立ち上がった状態で、ペダルの位置を地面と並行にしたままコーナーを曲がります。サドルから立ち上がった状態は、この記事の前編にてダウンヒルの乗り方の2つめのポイントとしてお伝えしたニュートラルポジションが基本姿勢となります。

ニュートラルポジションでのコーナーリング

 このポジションでの曲がり方は、角度の緩やかなコーナーや地面に木の根や石などの障害物が多いときに有効です。地面からの衝撃を身体で吸収しながら、しっかりとMTBを安定させることができます。

外脚を使ってのコーナーリング

 進行方向のコーナーに対して内側の脚を上にします。

 このときに重要なのが、下げている逆側の脚(外脚)でしっかりと踏ん張り、タイヤを地面に押し付けるようにすることです。

外脚を使ってのコーナーリング

 外脚をしっかり使うことによってタイヤのグリップ力を増加させ、滑りやすい路面などでも曲がりやすくなります。

 このポジションでの曲がり方は、角度のきついタイトなコーナーや浮き砂利など、滑りやすい路面で有効です。

 コーナーの内側に障害物があるような場合でも、脚を上げることによって衝突を回避できます。左右に連続するコーナーでは、上げる脚、下げる脚を随時入れ替えましょう。

足を出して曲がるコーナーリング

 こちらは先程の「外脚を使ってのコーナー」でお伝えした内容と同様に、外脚の位置は同様ですが、違う点は、より外脚に荷重をかけるために、コーナーに対して内側の足をペダルから離して、フロントホイール側の斜め前に足を出して曲がります。

足を出して曲がるコーナーリング

 足を出すときのポイントは、真横に足を出すのではなく、斜め前に足を出すこと。

 斜め前に出した足を軸に、円を描くように外脚に荷重をかけてコーナーを曲がるイメージですね。

 コーナーに進入してから足を出すタイミングでは遅いので、コーナーに入る2〜3m前から足を出して準備しておきましょう。

 このポジションでの曲がり方のメリットは、タイトなコーナーや滑りやすいコーナーでMTBがスリップしたときにもすぐに足を地面について転倒を防げることと、出した足を軸に外脚をしっかりと使えるのでグリップ力が高くなることなどがあります。

 デメリットとしては足を出したり戻したりすることで、タイムロスが発生してしまうことです。タイムを競うような場合でなければ問題ないかと思います。

 また、足を出すコーナーではサドルに座るときと、座らないときがありますが、座らない方がしっかりと外脚に荷重をかけて曲がることができます。

 その分、筋力は必要ですが、座らなくても曲がれるようになると理想的ですね。

 また、これらすべてのコーナーにおいて、コーナーの進入までは入口に目線を置き、進入したらコーナーの出口を見るようにしましょう。これも重要なポイントです。

ライン選び

 ライディングポジションや曲がり方に加え、走行するのに最適なライン(走る場所)を選ぶこともとても重要です。

コーナーは「アウト・イン・アウト」が基本。青色が理想のライン

 MTBは未舗装路で乗る乗り物なので、障害物があったり路面状況が悪いなど、様々な状況に出合うと思います。そのため、必ずしもここで教えた通りのライン選びだけが正しいとも言い切れないこともありますが、まずはコーナーでの基本的なライン選びを覚えておきましょう。

 コーナーで最も重要なポイントは、入口と出口の位置をしっかり確認して決めておくということです。入口と出口が決まれば、それに対してスムーズな走行ラインが必然的に決まります。

 車のレースでも同じですが、コーナーでは進行方向に向かって「アウト・イン・アウト」が基本です。

 ライン選びの写真には「青い線」と「赤い線」を書き入れましたが、青い線のようなライン選びが理想的です。

 青い線はコーナーの入口ではアウト(外側)から進入して、コーナーの中ではイン(内側)を通り、出口ではまたアウトを選んで走行しています。

 そうすることで無駄なブレーキを使う必要がなく、スピードを落とさずにスムーズかつ綺麗にコーナーを曲がれます。

 対照的に、赤い線のようにイン(内側)から進入してしまうと、コーナーの中では大きく外側に膨らんでしまい、無駄なブレーキングをしてしまったり、曲がりきれずにバンクから外へ飛び出してしまったりというリスクが増えます。

 連続したコーナーや小さく細かいコーナーなどでは少しライン選びも異なってきますが、基本的には「アウト・イン・アウト」を意識すれば大丈夫です!

 これにて「初めてのダウンヒル、乗り方のコツを教えて下さい(基礎編)」は終了となります。

 これまでの前編と中編と合わせて5つのポイントを見返しながら、実際に1つずつ練習して成功できるようになっていくことで、必ず技術は身に付き上達します。継続して頑張りましょう!

 次回はどんなテーマになるのでしょうか? 皆様のMTBスキルアップのお手伝いができるように、分かりやすくお伝えしていきますので、引き続きよろしくお願い致します。

 最後までご覧いただき、ありがとうございました。