2020.1.24
マウンテンバイク(MTB)のプロフェッショナルがMTBにまつわる素朴な疑問に答えていく本コーナー。第2回は「初めてのダウンヒル、乗り方のコツを教えてください」という質問にプロライダーの井手川直樹氏が答えていきます。
皆さん、こんにちは。プロマウンテンバイクライダーの井手川直樹(いでがわ なおき)です。
マウンテンバイク(以下、MTB)は日常の移動手段として乗ってもカッコいいですが、その性能を最大限に発揮するのは、やはり山の中やオフロードでの走行です。山でのMTBの楽しみ方にも色々ありますが、今回はその中でも特に緊張感と爽快感が味わえるダウンヒルの楽しみ方をお話しします。
※ダウンヒルは夏のスキー場などで行われるスポーツです。山頂からダウンヒル専用のコースを下ります。山頂までの上りは基本的にゴンドラなどを使用します。
MTBやダウンヒルは危険だと思われている方も多いかもしれませんが、基本の乗り方やコツを学ぶことでしっかりと「危険」を回避できます。私が初心者向けスクールの際にお知らせする5つのポイントを順番にお教えしましょう。
実はこの5つのポイント、適当に並んでいるわけではありません。覚えるべき順番に並んでいます。
MTBでは走ることよりもブレーキをかけることのほうが難しく、それでいて重要です。ブレーキは止まるためだけに使うのではありません。例えば、スピードをコントロールしたり、サスペンションを意識的に動かしたり、タイヤを滑らせて挙動を変えたりと、様々な使い方があります。
まずは「ブレーキをかけるときの手のポジション」から。
ブレーキをかけるときは人差し指1本、または人差し指と中指の2本のみを使います。最近のMTBはブレーキ性能の高いディスクブレーキが標準装備されているものも多く、制動力も強くなっているので良く効きます。ブレーキにかける指は1〜2本で十分なのです。
もう一つの理由は、ハンドル(グリップ)をしっかり握る必要があるからです。ダウンヒルでは舗装されていない山道(悪路)を走るので、予期せぬ衝撃でハンドルから手が滑って離れてしまうこともあります。そんなとき、自転車から落ちたり転倒しないようにするために、できるだけ多くの指でしっかりとハンドルを握るようにします。MTBの乗車中は常にブレーキに指を添えて、いつでもブレーキをかけられるように準備しておきましょう。
次に「前後ブレーキの力加減の比率」です。
フロントブレーキ3〜4割。リアブレーキ6〜7割でかけましょう。
斜面を下るダウンヒルでは前のめりになり、フロントタイヤに荷重がかかりやすくなります。この状態でフロントのブレーキが強くなるとタイヤが滑りやすくなり、一気にコントロールを失ったり転倒につながります。そのため、フロントブレーキはリアに比べてやや弱めの3〜4割が理想です。
リアはホイール(車輪)がフレームと固定されているので、ブレーキをかけすぎてタイヤがロックしても、フロントのように左右にはフラれにくくコントロール可能な状態を維持しやすいです。そのため、リアブレーキはフロントより強めの6〜7割でかけましょう。
最後に「ブレーキのかけ方」です。
ブレーキは急に強くかけてしまうとタイヤがグリップを失います。そうなるとタイヤが滑り、コントロールできず、転倒につながります。ブレーキのタイミングは“危ない”と思った瞬間に強くかけるのではなく、スピードをコントロールしながら少しずつ速度を落としていくようなかけ方を心掛けましょう。
特にコーナーの途中や木の根などがあるセクションでの強いブレーキには要注意。事前にスピードを落としてからセクションに進入することが重要です。
MTBの走行中でペダリングをしていないときの基本的なポジションです。
まずはクランク(ペダル)の位置を写真のように地面と平行にします(このときは左右の足、どちらが前側でも構いません。やりやすい方を前にしてください)。
ハンドルをしっかりと握り、サドルに座った状態から立ち上がり、ペダルの上に真っ直ぐ立った状態がニュートラルポジションとなります。膝と肘は伸び切った状態ではなく、少し曲げた状態が理想です。
このときの目線は下を向くのではなく、フロントタイヤから5mほど先を見るようにしましょう。下を見すぎるとハンドルがフラフラしたり、障害物があった際に次のアクションの遅れにつながってしまうので危険です。
ニュートラルポジションのポイントは、リラックスした状態でMTBの中心に重心を置くこと。リラックスした状態でニュートラルポジションを取っていればバイクが安定し、悪路で障害物があった場合でもとっさの対応ができ、身体をしっかりと使って回避することができます。また、膝や肘を使って地面からの衝撃を吸収したり、逆に、力を加えて加速するための必要なポジションにもなります。
今回の乗り方のコツはここまで!
ニュートラルポジションは広場などでも練習できるので、1つ1つチャレンジして上達していきましょう。
次回は残り3つのコツを中編・後編でお伝えしますのでお楽しみに!
最後までご覧いただき、ありがとうございました。また次回お会いしましょう!
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