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サイクリストにとって糖質は敵か?味方か?

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自転車ダイエットの極意<2>
サイクリストにとって糖質は敵か?味方か?

 糖質が悪モノのように言われ、たんぱく質や良質な油に注目が集まることもありましたが、私は「運動をするのであれば糖質エネルギーは必須」という考えをずっと持っています。まず本題に入る前に、エネルギーを持つ栄養素についてお話ししたいと思います。

糖類、糖質、炭水化物の違い

 前回、栄養素の基本である5大栄養素(炭水化物、脂質、たんぱく質、ビタミン、ミネラル)をご紹介しました。その5つの栄養素の中で、エネルギーを持つものは「炭水化物」と「脂質」と「たんぱく質」です(ミネラルとビタミンにエネルギーはありません)。ここで「糖質は?」と思われるかもしれませんが、実は「炭水化物=糖質+食物繊維」なので、糖質は炭水化物の中に含まれているものとなります。たまに炭水化物と糖質が同じように使われていることがありますが、微妙にニュアンスが違います。

ごはんやパンは「糖質」ではなく、正しくは「炭水化物」

 さらに切り込むと、アルコール飲料でよく見掛ける「糖類」。一見「糖質」と混同してしまいそうですが、糖類とは「単糖類」もしくは「二糖類」のことで、ブドウ糖や果糖、ショ糖などが当てはまります。ちなみに糖質とは、糖類に加えて多糖類(マルトデキストリンやでんぷん)や糖アルコールを含んだものを指します。

 2015年にWHO(世界保健機関)が「糖類の摂取量を総エネルギー摂取量の10%未満にすべきである」というガイドラインを発表しましたが、これは糖質や炭水化物の摂取量を減らすべきというものではありません。「糖類」について言及されているのです。糖類、糖質、炭水化物がごちゃごちゃになって、最終的に「ご飯(米)は食べない」となってしまっているのだろうと想像できますが、それはちょっと違うのです。

 かなり横道に逸れてしまいましたが、スポーツ栄養において栄養素の摂取タイミングは重要ポイントとなり、この3種類の違いは摂取タイミングによって生きてくることを、ひとまず覚えてください。その活用方法はまた後ほどお話しようと思います。

糖質不足での運動は筋肉が分解される

 さて本題です。今回のテーマ「糖質をうまく活用して、脂肪燃焼を試みよう」なのですが、効率よく体脂肪を燃焼させたいからと言って、体内のエネルギーをできるだけ空っぽにした状態で運動を始めている方はいらっしゃいませんか? よくある例が、「起床後すぐに(何も摂取せずに)運動を始める」だと思います。起床後すぐは、体内のエネルギーも減っているから「すぐに体脂肪が燃え始める!」と想像しがちです…が、脂質(体脂肪)のエネルギーだけが使われるということはありません。

運動強度が高くなると、糖からのエネルギー供給量が中心となる(出典:KSスポーツ医科学書刊)

 体を動かすためには糖質のエネルギーも必要なのに、それが不足している状態で運動を始めるとどうなるか? 体は糖質不足でエネルギーがつくり出せない時に「糖新生」(とうしんせい)と言って、たんぱく質からエネルギーをつくり出すようにできています。そう、筋肉を分解してエネルギーをつくり出すのです。筋肉は肝臓や脳と並んでエネルギーの消費量が多い臓器トップ3に入ります。そんな筋肉が分解されて減ってしまってはダイエットにも不利になりますし、アスリートにとってはパフォーマンスが落ちてしまう原因にもなりかねません。ですので、筋肉の分解を防ぐためにも、運動前は糖質エネルギーを補給しておく必要があります。

 また、「グリコーゲンローディング」(必要な糖質を体内に蓄えるための食事法、カーボローディングとも)をした時に見られるように、糖質(グリコーゲン)が十分に蓄えられている方が長時間運動を継続できます。ダイエットの場合はグリコーゲンローディングまではしなくても良いですが、運動するのであれば、ある程度の糖質エネルギーがあった方が良いと考えられます。

血糖値の振れ幅を出来るだけ小さく

 そして最後に、血糖値についても触れておきたいと思います。昨今さまざまなダイエット方法が取り上げられていますが、私はウエイトコントロールの基本は摂取エネルギー量と消費エネルギー量の差(エネルギー収支)だと考えています。それをベースにして、次に考えるのが血糖値の振れ幅をできるだけ小さくすることです。

 血糖値とは読んで字の如く、血液中の糖質の濃度です。食事をすると血糖値は上がり、そのまま上がり過ぎると「高血糖」となり、体に支障が出るので血糖値を下げるために「インスリン」というホルモンが出ます。血糖値が急上昇すると「早く血糖値を下げないと!」とインスリンが多量に分泌されるのですが、この時に糖質が体脂肪として蓄えられるのです。そのためダイエットのポイントとして、インスリンを多量に分泌させない、そのためには「血糖値を急上昇させない=血糖値の振れ幅をできるだけ小さくする」となります。

 皆さんは「お腹が減った」と感じたことがあると思いますが、それは「血糖値が下がっていますよ」という体からのサインです。そこですぐに何か補給できると良いのですが、時間がなかったり我慢したりするとどんどん血糖値は下がり、そしてそこで“ドカ食い”しようものなら、カラカラのスポンジが水を吸い込むように血糖値が急上昇!そうすると先ほど説明した通り、インスリンが多量に分泌されて体脂肪を貯め込むことになるのです。これは起床後何も補給せずに運動をして運動後に食事をした場合、同じようなことが起こるというのは想像に難くないでしょう。空腹での運動は避け、糖質エネルギーを補給してから運動することをお勧めします。

 運動前の糖質エネルギーの補給は吸収の速いものが良いので、上記で述べた種類で言うと炭水化物より糖類や糖質がお勧めです。といっても、ダイエットを意識するなら、もちろん摂り過ぎは禁物です。

河南こころ

河南こころ(かわなみ・こころ)
管理栄養士。女子フィギュアスケートバンクーバー五輪銀メダリスト、男子バレーボールVプレミアリーグ所属チーム、ラグビートップリーグ所属チームなどを栄養面からサポート。ロードレースチームの「シマノレーシング」を担当していた経歴をもち、現在も「シマノ鈴鹿ロードレース」で開催される栄養講座の講師を務めている。自転車ロードレースの主要な国内レースは常にチェックしているというロードレースファン。現在はFC今治のサポートの他、トレーナー養成学校でスポーツ栄養学の講師をしたり、栄養学を学ぶ学生のコミュニティ「COMPASS」のアドバイザーとして後進育成に注力している。