2024.11.18
スポーツ用自転車は軽快車と比較してずっと速く、遠くまで走れるようになります。慣れてくると県境を越えたり、車移動でも遠いと思える場所を目指したりすることもできるようになるはず。今回はビギナーにとって大台の100kmライドを達成する際に必要な装備やコツをお教えします。
100km以上のライドをする際、片道でも最低50kmは走行することになります。普段走り慣れてない環境を走ることになり、もしトラブルが起きた場合に手持ちの装備では対応できないこともあります。六角レンチを含むミニツールやタイヤレバーといった通常の装備よりも数にゆとりを持ったアイテムを持っていくとよいでしょう。
スマートフォンを使ってサイクリングの距離を測るアプリなど、利用している人も多いかもしれませんが、サイクルコンピューターの使用をおすすめします。前者の場合、GPS通信で距離を表示するのですがバッテリーを多く消費するため、100kmを走る間に電池が無くなることも想定されます。スマートフォンは調べ物をしたり、緊急連絡する際にも必要なのでなるべくバッテリーは消費させないようにしましょう。
サイクルコンピューターはサイクリングに特化しており、距離もGPSのほかホイールセンサーなどで計算するため、バッテリーの消費量が小さく正確です。
すでにチューブ1本は携帯しているサイクリストも多いとは思いますが、心配な場合は2本携帯するようにしましょう。仮に1回パンクをしてしまった場合、2回目のパンクに対応できなくなります。1回目のパンクの際にチューブがタイヤのビードに噛んだまま空気を入れてしまうなどの失敗をするケースもあります。
クリンチャータイプのタイヤを使っている場合だけでなく、チューブレスタイヤを使用している場合にも有効です(※フックレス仕様の場合は例外のケースもあるため注意が必要です)。
チューブ2本でも心配な人、またはサドルバッグに十分な容量がない人はチューブ用のパッチを用意するとよいでしょう。チューブの穴にパッチを貼って空気が漏れないようにするもので、コンパクトなアイテムでかさばりません。しかし、あくまで緊急用なので無事に帰宅できたら新しいチューブへ交換しましょう。
タイヤに空気を補充するポンプは必須です。近年では面倒なポンピングが不要のCO2インフレーターが人気ですが、基本的にカートリッジタイプで使い切りのため、1本しか持っていない場合は1回のパンクにしか対応できません。不安な方はカートリッジを2本は持っておいた方が無難です。また、筆者の場合は携帯できる電動ミニポンプを活用しています。28Cのタイヤでも2本分充填でき、出先で充電できれば何回でも使用できるので便利なアイテムです。
道路交通法では夜間のフロントライトの点灯、後部への反射板などの設置で問題ありませんが、100kmを走る場合、早朝や夜間の走行も想定されます。可能であれば前後に点灯できるライトを装着することが望ましいでしょう。最近では昼間でも周囲に対して存在を知らせるデイライトを運用するサイクリストも多いです。ぜひ安全のために導入を検討してほしいところです。
都市部や街中で完結できるのであれば問題ありませんが、山や郊外を走る場合、エネルギーを補給したいタイミングでコンビニやスーパーがないケースもあります。エネルギーが切れるハンガーノック状態になると血糖値が低下し、体調が悪くなったりふらついたり、正常な判断ができなくなる場合もあります。それを防ぐためにある程度糖質を確保できる補給食を持っておくとよいでしょう。サイクリング向けのジェルなどもありますが、筆者のおすすめは羊羹です。脂質がなく、適度な甘さで身体を動かすエネルギーになります。コンビニでも手軽に手に入りますし、安くて携帯性にも優れています。ウェアのポケットに忍ばせておくと安心です。
個人差はありますが、1日で合計3時間ほどクロスバイクやロードバイクに乗ることができるサイクリストであれば100kmライドに挑戦することは不可能ではないと思います。
一方、いくら上級者であっても疲労が溜まっていたり、寝不足の状態でロングライドにチャレンジすると想像以上に距離をこなすのが大変になるほか、事故や落車のリスクが跳ね上がります。ライド前には十分な休息と睡眠が必須です。
また、100kmのライドは想像以上にエネルギーを消費します。お腹がものすごく減るということですね。よってライド前の食事と補給食がとても大事です。なんでも食べればいいというわけではなく、普段より多めの炭水化物を摂取するとよいでしょう。普段はお茶碗1杯のご飯を2杯にする、といった具合でもOKです。グリコーゲンを体内に貯めておくという観点では、前日の夜と当日の朝に試してみるとよいでしょう。消化できなければ意味がないので、油の多い食事は控えた方が良いと思います。
補給食に関しては、すぐにエネルギーになる甘いものがおすすめです。コンビニで確保できるものであれば羊羹のほか、まんじゅう、お団子、アンパンなどです。小豆が多めですが、胃腸に過度に負担なく食べられますし、美味しいのでとてもおすすめです。
100kmを走るだけなら片道10kmを5往復でも達成できますが、恐らくこの記事の読者は少なくても片道50km先にある景色やグルメを楽しんでみたいと思っているはず。初めての行き先になると事前のルート選定が快適に、そして安全に走り切るポイントになります。
Googleマップはもちろんのこと、サイクルコンピューターメーカーが提供しているアプリ、サイクリングに特化した地図サービス「Ride With GPS」など、事前に走行するルートを調べることができるサービスはいくつもあります。最短ルートや迂回路、何かあった場合のショートカットルート、コンビニや道の駅の位置、輪行する場合の鉄道の駅など確認しておくとよいでしょう。
平坦路の100kmと山岳区間を含む100kmは同じ距離でも溜まる疲労は全く異なります。ルートを設定できるサービスの中には獲得標高や、高低図を表示できるものもあります。どこから上り区間が始まり、どのくらい上るのか、事前に知ることでエネルギーマネジメントが楽になります。
また、Googleマップの機能で現地の風景を見ることができます。地図上では確認できない現地の情報、例えば路面が狭かったり、荒れていたりすることもあるので、慣れていない道を走る際、なるべく見ておくようにしましょう。ちなみに、ロングライドに慣れてくると地図上の道路形状を見るだけで地形や路面の状況がある程度予測できるようになってきます。Googleマップの読み取りスキルはロングライダーにとって必須スキルかもしれません。
なお各地のモデルコースは当サイトで紹介していますのでぜひご参照ください。
初めて100kmという大台を走り切るとき、これまで自転車では経験したことない達成感を得られるはずです。サイクルコンピューターの距離表示が初めて3桁なったあの瞬間は約20年前のことですが強烈に覚えています。確かにそれ相応の疲労はありますが、ぜひサイクリングの醍醐味の一つとして読者の皆様にも体験してもらいたいと思います。
繰り返しになりますが、普段のライドに比べてリスクが増加しますので、準備を万全にして安全に楽しんでいただければと思います。
10代からスイスのサイクルロードレースチームに所属し、アジアや欧州のレースを転戦。帰国後はJプロツアーへ参戦。引退後は産経デジタルが運営した自転車専門媒体「Cyclist」の記者、編集者として自転車やアイテムのインプレッション記事を担当した。現在はYouTubeチャンネル「サイクリストTV」でナビゲーターを務めるほか、自治体の自転車施策プロデュース業務を担当。
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