山道や荒れ地を走ることに特化したマウンテンバイク(MTB)ですが、そのタフな構造は街中での移動にも大きなメリットをもたらします。今回は、東京都心から千葉・幕張のマウンテンバイクコースまでを自走で往復し、オンロード(舗装路)とオフロード(未舗装路)をシームレスに楽しんだ1日のレポートをお届けします。

アスファルトでも楽しいMTBの魅力
一般的に、舗装路をより速く、より快適に走れる自転車はロードバイクやクロスバイクです。軽量な車体と路面抵抗の少ない細いタイヤは、ペダリングの力を効率よく推進力へと変換してくれます。一方、頑丈なフレームと衝撃を吸収するサスペンションを備えたMTBは、「街乗りにはオーバースペックで不向きではないか」と考える方も多いでしょう。しかし、都市部にはグレーチング(排水溝の蓋)や急な段差、アスファルトのひび割れといったトラップが至る所に潜んでいます。ロードバイクでは神経を遣うようなシチュエーションでも、MTBなら圧倒的な安定感でクリアできてしまうのです。そして何より、その重厚で武骨な存在感は純粋にかっこいい。街乗りという選択肢は、個人的にも大いに「アリ」だと確信しています。

街は隠れたオフロード トレイルだけじゃないマウンテンバイク「普段使い」のすすめ
とはいえ、MTBが本領を発揮するのはやはりオフロードコースです。しかし、車にバイクを積載して郊外の山まで遠征するのは、準備を含めて億劫に感じます。そこで、「自走で行けば、道中もアクティビティになるはずだ」と思い立ったのが今回の企画です。目的地に据えたのは、千葉県千葉市にある「幕張海浜公園Gブロック」のMTB常設コース。東京都内から片道約30kmという、トレーニングとポタリングの中間のような絶妙な距離に位置し、近隣には幕張メッセやZOZOマリンスタジアムも隣接するアーバンな立地です。
▼MTBコース紹介「幕張海浜公園Gブロック(千葉県)」
公道走行仕様にカスタマイズ
今回の自走にあたり、車体には軽微なカスタマイズを施しました。歩道を走行する可能性も考慮し、ハンドル幅は法令で定められた「普通自転車」の規定である60cm以下にカット。前後ライトに加え、パンク修理キットなどを収納したサドルバッグを装着しました。本格的な走行ならビンディングペダルが理想的ですが、今回は移動の気楽さを重視し、スニーカーで気軽に乗れるフラットペダルの組み合わせを選択しています。


近年の都心部は「自転車ナビマーク」の整備が進み、車道走行の心理的ハードルが下がりました。一方で、路肩の補修跡や大型車の通行による路面の歪み(特にバス停付近の轍)、マンホールなどの凹凸は、細いタイヤの天敵です。しかし、MTBならそんな不安もどこ吹く風。ブロックタイヤが独特のノイズを立てながらアスファルトを捉える感覚は、ロードバイクにはない爽快感があります。私の愛車は29インチ(29er)の大径ホイールを履いているため、一度スピードに乗れば巡航速度の維持もそれほど苦になりません。
都心から幕張方面へ向かう際、国道357号線(湾岸道路)は便利なルートですが、車道は大型トラックが頻繁に行き交うため、状況に応じて歩道を通行するのが賢明です。特に船橋付近など自転車の車道通行が制限されている区間もあるため、歩行者の安全を最優先に、周囲に配慮しながら進みましょう。




本領発揮!アーバンMTBコースを走る
幕張海浜公園MTBコースは、公園西側のGブロック内に位置しています。事前の受付などは不要で、誰でも利用できる開放型の無料パークです。場内は複数のセクションに分かれており、土を盛り上げたジャンプ台(ダートジャンプ)や、コーナーで車体を安定させるバーム(土のバンク)、アップダウンを繰り返しながら森の中を抜けるセクション、そして初心者が安心して走れる平坦な草地エリアなど、コンパクトながらバリエーション豊か。どのセクションから走り始めても自由で、特定のスキルを集中して練習するのにも最適です。




1時間ほど土の感触を楽しんだ後、再びペダルを漕いで帰路につきました。往復の移動を含めて全工程で約5時間、都内からの自走時間は片道1時間半〜2時間といったところです。もちろん車で現地まで直行すれば楽ですが、MTBで街を駆け抜け、そのまま土の上へと滑り込む体験には、日常が冒険に変わるような高揚感がありました。「MTBは山で乗るもの」という固定概念を捨てて、アスファルトと土の両方を欲張りに楽しんでみてはいかがでしょうか。自走で挑むMTBパーク遊び、心からおすすめします。

10代からスイスのサイクルロードレースチームに所属し、アジアや欧州のレースを転戦。帰国後はJプロツアーへ参戦。引退後は産経デジタルが運営した自転車専門媒体『Cyclist』の記者、編集者として自転車やアイテムのインプレッション記事を担当した。現在は自治体の自転車施策プロデュース業務等を担当。
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