2024.8.19
スポーツ用自転車は一般的な軽快車よりも速く、より遠くまで移動することが可能です。特にロードバイクはより軽量で、長距離を走ることに適しており、“ロングライド“というジャンルで人気を博しています。ロングライドに挑戦する際、どのような装備で、どの程度の距離を走ることができるのか。魅力や楽しみ方をお伝えします。
ロングライドを定義する距離は人によってさまざまです。「50kmで十分な距離」と考える人もいれば「ロングライドは200kmから」という強者までいます。共通して言えるのは、頑張らなければならない負荷と時間をかけること。自らの体力を十分に使うことで、適度な疲労や達成感を味わうことができます。しかし、それは無理をすることではありません。フィジカルの100%を超えない範囲で、装備や準備を周到に用意して、快適にライドすることも忘れてはなりません。安全第一で走り切り、無事に帰宅するまでがロングライドです。
自然の中を颯爽と走ったり、適度な運動後に美味しいご飯を食べるなど五感に響く楽しさが満載なのがサイクリングです。ロングライドはそれら全ての度合いを格段に高めてくれます。普段とは異なる景色を駆け抜け、その場所でしか食せないグルメを楽しむなど、長距離移動ならではの体験をすることができます。
例えば筆者の場合、東京の荒川沿いのサイクリングロードをメインに走っていますが、時折別の場所を走りたくなり、箱根方面へと足を伸ばします。片道100km、往復で200kmのロングライドです。箱根駅伝と同じルートをたどりながら、湘南エリアの海を眺め、東海道の松並木に歴史を感じ、箱根峠のヒルクライムを頑張った先の峠の茶屋で甘酒を楽しみ、芦ノ湖の景色を眺める...そして復路を経て大手町まで帰ってきた時の達成感は格別です。
東京湾一周サイクリングも年に1回くらいのペースで実施しています。通称「ワンイチ」と呼ばれて関東近辺のサイクリストが挑戦しているライドです。特に決まったルートがあるわけではなく、東京、神奈川、千葉をぐるっと周ればOK。途中、神奈川の久里浜から千葉の金谷まではフェリーに自転車ごと乗船して渡る体験はこのライドならでは。
一周サイクリングの「◯◯イチ」は全国にあり、得られる達成感から人気を博しています。地方に多いイメージですが、都心をルートに収め、東京湾をぐるりと一周できる「ワンイチ」があるのをご存知でしょうか。陸と海をどちらも楽しめる約190kmのルートを実走レポートでご紹介します。
ロングライドは普段のサイクリングを「旅」へと昇華させてくれるのです。
長い距離を走ることで、その分さまざまなリスクは向上します。パンクする確率も高まりますし、落車をする可能性も走った分だけ上がります。予備のチューブやパンク修理用のパッチなどのツールは、普段からサドルバッグやツール缶で携行されていると思いますが、それらの数を増やすことも検討したほうがいいでしょう。バッグ類のキャパシティが足りないようでしたら、フレームバッグやハンドルバッグなど、アイテムを収納するストレージ製品も充実しています。筆者は200kmほどのライドに出かける際は簡易に脱着できるハンドルバッグを愛用しています。普段、利用しない場合はすぐに外すことができるので便利なアイテムです。
長時間走ることになれば昼間だけではなく、朝や夜といった暗い時間をライドすることもあるでしょう。その場合は前後ライトはもちろんのこと、反射素材を用いたベストやウインドブレーカーを用意することをお勧めします。天候が急変する場合においても、役に立ちます。
ライトやサイクルコンピューターなど電子製品を使用することも多くなってきているので、モバイルバッテリーとコード類もあると便利です。特にナビゲーションをサイクルコンピューターで動かしている場合、バッテリーが切れてしまっては途方に暮れてしまいます。決済機能を期待していたスマホの充電が切れてしまってはコンビニで補給食も買えません。その点では予備バッテリーの他、少し多めの現金を持っていても良いでしょう。何らかしらのトラブルで自走不可の場合、タクシーや公共交通機関で帰る際に現金がなければ一大事です。特に地方を走る場合は必須です。
前述の通り、ロングライドの捉え方は人それぞれです。しかし、普段50kmしか走っていない人がいきなり200kmに挑戦するのは無茶であり無謀と言えます。もし、無理をして長い距離を走ろうとすると、夏の場合は熱中症、エネルギーが切れた低血糖状態(ハンガーノック)、靴擦れや筋を傷めるなどの不調をきたすことが予想できます。まずは普段の走行距離から大体20%増で走行してみることをおすすめします。最大100kmまでしか走ったことのない人であれば120kmを数回、次に150kmといった具合です。自分はどのくらいのエネルギーを消費して走り、どのくらいでお腹が空くのか、などの目安が分かれば休憩地点を予め検討することも可能です。自らの体力を測る精度を高めていきましょう。
この連載では筆者が実際にロングライドを実施し、使用したアイテムや注意すべき点、ルートなどをご紹介していきます。
10代からスイスのサイクルロードレースチームに所属し、アジアや欧州のレースを転戦。帰国後はJプロツアーへ参戦。引退後は産経デジタルが運営した自転車専門媒体「Cyclist」の記者、編集者として自転車やアイテムのインプレッション記事を担当した。現在はYouTubeチャンネル「サイクリストTV」でナビゲーターを務めるほか、自治体の自転車施策プロデュース業務を担当。
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