2024.7.29
サイクリストといえば「ピタピタのジャージを着ている人」という世間のイメージをよく耳にします。確かに「サイクルジャージ」と呼ばれる専用のウェアはありますが、動きやすい服であれば問題はありません。ただ、専用のウェアは必要な機能に特化した素材、構造になっており、運動の強度が高くなればなるほど、その恩恵を感じることができます。とくに暑さが厳しさを増し、発汗量が増えるこれからの季節、ウェアや小物を上手に使うことで快適な体温調整を行うことができます。注意点も含め、夏のウェア選びのポイントを解説します。
夏のウェア選びでまず着目したいのは素材です。自宅の近所を短時間サイクリングする程度であれば、コットンのTシャツでも良いですが、汗をかくような運動ならコットンは絶対にNG。吸水後の汗抜けが悪く、着ていて不快に感じるだけでなく、冷房が効いた屋内に入ったときなどに生地が冷たくなり、急速に体温を奪われる「汗冷え」を起こす可能性もあります。
それに対し、夏用のサイクルジャージは通気性が高く、汗を吸収し、素早く乾く素材を使用しているのが特徴です。汗を吸い上げて生地表面に拡散させる性能を「吸水拡散性」といい、これが優れている生地ほど「乾きやすい」ということになります。
夏用ジャージをめぐっては各メーカーが独自の工夫を取り入れており、中には汗をかきやすい背中や脇の下などにメッシュ素材を施して通気性を良くしていたり、肌に触れると冷たく感じる素材を使用したりしているものもあります。それらの機能や特徴に注目してジャージを選ぶと良いでしょう。
また、吸水拡散性を高めるにはジャージの下に着るアンダーウェアも重要な役割を果たします。「重ね着したら余計に暑いのでは?」と思われるかもしれませんが、吸水拡散性に優れたアンダーウェアを着ると、汗が素早く吸い上げられ、さらにその上のサイクルジャージが汗を拡散させることですぐに乾くので、肌に触れる面の快適さが持続します。
もう一つ、夏に注意したいのが強烈な紫外線への対策です。紫外線が肌に与えるダメージは軽い火傷と同程度。ライド中の体力の消耗にもつながるため、プロの選手たちもレース中の日焼け対策は欠かしません。
露出した肌に日焼け止めクリームを塗るのはもちろんですが、塗ったクリームが汗で落ちてしまうのを避けたい、徹底的に日焼けを防止したいという場合は、UVカット素材を使ったアームカバーやレッグカバーを使用するのもおすすめです。必要に応じて着脱も容易な上に、吸水速乾素材であれば冷水を生地にかけて気化熱を発生させ、体温を下げるといった使い方もできます。最近はUVカット機能があるサイクルジャージのラインナップも増えていますので、上手に取り入れて日焼け対策を行いましょう。
夏に必要なのは暑さ対策だけではありません。場所や天候によっては冷え対策も重要となります。山間の日が当たらない区間の走行や、ダウンヒルなどは標高によっては肌寒さをおぼえるシーンもあります。とくにヒルクライム後は発汗量が多く、気温や風速によっては汗冷えを起こす場合もあります。また、カフェなど休憩で訪れた先の冷房によって汗冷えを起こすことも。
そんなとき活躍するのがウィンドブレーカーです。それほど厚手の生地でなくても防風性があり、わずかな空気の層を作ることができればその場をしのぐことができます。必要な時にサッと着用できる、携行性に優れたコンパクトなウィンドブレーカーを1着もっていると重宝するでしょう。
ロングライドの場合はレインウェアを携行することをおすすめします。近年、夏は天候が急変することも多く、いったん降り出せば雨足が激しいことも少なくありません。市街地であればカフェ等で雨宿りすることもできますが、山など雨宿りができない状況では逃げ場が見つからない場合もあります。
体がびしょ濡れになってしまうと、再度天候が回復して気温上昇するか、または運動で発熱できない限り体温はみるみる奪われていきます。最悪の場合、ダウンヒルでは体が冷えてしまうと集中力に欠け、さらに危険なことにもなりかねません。レインウェアはウィンドブレーカー機能も兼ねますので、天気が読みにくい日のライドはレインウェアを携行することをおすすめします。
夏のライドはウェアの一工夫が快適性を大きく左右します。素材の特性や温度変化への対応策を知り、臨機応変にサイクルウェアを着こなしてください。
アウトドアメーカーの広報担当を経て、2015年に産経デジタルに入社。5年間にわたって自転車専門webメディア『Cyclist』編集部の記者として活動。主に自転車旅やスポーツ・アクティビティとして自転車の魅力を発信する取材・企画提案に従事。私生活でもロードバイクを趣味とし、社会における自転車活用の推進拡大をライフワークとしている。
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