2020.11.10
ヒルクライムの魅力を紹介する「ロードバイクをより楽しむためのヒルクライム講座」。連載の2回目は「ヒルクライムに欠かせないアイテムはなにか」です。補給食、飲料、サイクルコンピューター、フロントライト、リアライト、計5つのアイテムを用意しておくと、ヒルクライムがより安全で楽しく快適になります。(文・菅洋介 / 写真・石川海璃)
平地の5kmとヒルクライムの5kmでは大きく違うのが運動量です。ヒルクライムでは頑張っていても時速10kmを下回ることもあり、5km走るのに30分以上かかることもしばしば。上っている途中でエネルギーが枯渇してしまうと、急に力がでなくなります。数分後には、血の気が引いて真っ直ぐ走るのもままならず、ロードバイクから降りて座り込んでしまうことも…。マラソンやトライアスロンなど、エンデュランススポーツの世界でよく聞く「ハンガーノック」という症状です。
対策はひとつ。エネルギー補給が全てです。エネルギー源として重要な糖分は水に溶けやすく、水に溶けると吸収率が高くなります。なので食べた後に必ず、水分を取っておきましょう。コンビニエンスストアで簡単に手に入るゼリー飲料は手軽にエネルギー補給できます。山に入る前に1つ、保険でポケットに1つ準備しておくと無難です。
快調なヒルクライムを楽しむためには準備が必要です。10kmを超える上りでは、上り始める30分ほど前に、消化が早くてすぐにエネルギーになるパン類を食べておきましょう。
携帯補給食としておススメの食べ物
・エナジージェル 1本 約160kcal
・ミニあんぱん 1個(32g) 約90kcal
・ミニ蒸しパン 1個(60g) 約170kcal
・ミニ羊羹 1個(40g) 約110kcal
これは筆者の体験談になりますが、東京都内から60km、2時間半かけて神奈川県のヤビツ峠(宮ケ瀬側)に上りに行ったときの出来事です。小高い丘陵地を越えて自然豊かな山麓へ…。都会の喧騒から離れ、はるばる辿り着いたヤビツ峠(18km、標高約500m)の山道に意気揚々と入って行きました。
中盤までは身体がとても軽く、調子よく上っていました。若干の空腹感を覚えながらも我慢して走っていると、ある地点を境に世界が一変。ヒュ〜と筋肉がしぼむ様に力がみるみる抜け、視界が白くなってしまい貧血の様な症状に…。頭がくらくらして、山頂まで2kmを残して路肩にへたれ込んでしまいました。
慌ててポケットの中を探ると、1本のミニ羊羹の存在に気付くも時すでに遅し。食べてもすぐに元気になることはなく、20分近く足止めを食らってしまいました。原因は山に向かっている途中に立ち寄る店がなく、補給を意識しないでヤビツ峠に入ってしまったことでした。この経験から山を上る10分前くらいにポケットから一つ補給食を取り出して食べておく習慣が身に付きました。
水分は喉を潤す目的のほかに、補給食で摂取した糖を素早くエネルギーに変えてくれる効果、汗で流れてしまった体内の水分を調節する役割があります。体内に吸収するため、人の体液よりも浸透圧の低いハイポトニック飲料は、運動中の水分補給に最適です。
サイクリストが最も避けたい症状のひとつに脱水があります。汗をかき続けると徐々に心配になってくるものです。ボトルの中身は空にしないよう心がけ、こまめに水分を取ることが重要です。特に夏場、脱水を避けるために良かれと思って塩分を取りすぎると、体内の熱が放出されず熱中症に繋がってしまうこともあるので注意が必要です。
ボトルを2本持参するときは片方の中身を真水にすることがあります。アクシデントで擦り傷などを負ってしまったときに、応急処置として傷口を真水で洗い流せるので便利です。
ヒルクライムのアイテムとして定番なのがサイクルコンピューターです。近年のサイクルコンピューターはGPS機能のおかげでコンテンツが充実しています。走行ルートの記録やナビゲーション、走行距離、スピード、登坂の勾配、獲得標高、消費カロリー、心拍数、回転数などあらゆる情報を得ることができます。
ヒルクライムに便利なのが回転数です。自転車を漕ぐリズム(回転数)を数値で把握し、勾配に応じて計画的にペースを管理できます。リズムが良いと感じるのは60回転〜90回転。ヒルクライムではおよそ60回転を切る前にギヤを一つ軽くするとリズムを保てるでしょう。また各勾配に対して適正なリズムは、個人によって多少の違いがあります。何度かヒルクライムをこなしていくと、その数値を把握できるはずです。
走行の成果は獲得標高を見るといいでしょう。細かいアップダウンも含め、1回のライドで獲得標高が1000mを越えれば、ヒルクライムに挑戦したと実感が湧くのではないでしょうか。
細い山道に入って行くとたびたび通過するのが暗いトンネルです。大通りのトンネルと違い山道のトンネルは照明が乏しいこともしばしば。また標高1000m近い山は霧が発生しやすく、視界不良を起こします。そうした出来事を考慮して前後ライトを装着しておきましょう。
撮影協力:株式会社シマノ
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