2024.3.21
ご質問にある“ロードバイク”を、「数年内に販売されたエントリー~ミドルグレード完成車」と仮定して質問内容を意訳すると、「機械式変速コンポを装備したディスクロードで、ホイールはチューブレスに対応しているが、完成車にはクリンチャータイヤが付いている。最初は純正の状態で乗っていたが、定期点検を機にグレードアップを考えている」といったところでしょうか。
それを前提に話を進めると、グレードアップするための第1候補は「タイヤ」です。完成車に装着されるタイヤは低価格のものが多いためです。カタログでは目立たないところですし、消耗品なのでメーカーはタイヤでコストダウンを図ります。実際、フレームやホイールに見合っていない低グレードのタイヤが付いている完成車は多いです。
しかもタイヤは価格間で性能差が大きい部品。交換するタイミングで、是非良いタイヤを選んでみてください。軽くて速くてしなやかで、「自分のバイクってこんなに高性能だったのか!」と驚くことになると思います。同時に「チューブレスタイヤ」にしてしまうのも一つでしょう。
チューブレスタイヤにしないのであれば、タイヤと同じくらいお勧めなのがインナーチューブの変更。完成車には分厚くて重いチューブが入っていることが多いですが、チューブが走行性能に与える影響は思いのほか大きいです。薄くて軽くてしなやかな高性能チューブにすると、走りが意外なほど軽く、快適になります。
走行性能を大幅に向上させたいならホイールでしょう。コストはかかりますが、定評あるカーボンホイールにすればバイクの性能をさらに引き出すことができます。愛車がカッコよくなるという副産物も大きいですね。
意外な盲点がシフトレバー。機械式変速/油圧式ブレーキのシフトレバーは重量があるため、バイクの挙動を重たくする原因に。これを電動変速/油圧式ブレーキ、もしくは機械式変速/機械式ブレーキのシフトレバーに交換すれば、走りが驚くほど軽快になります。ただし大掛かりな作業になるため、それなりにコストはかかります。
あとは不具合に応じてパーツを交換する、という感じで良いでしょう。お尻が痛いならサドルを交換してみる。ハンドルのポジションがしっくりこないならハンドルやステムのサイズを変えてみる。サドルやステムやハンドルの選択肢は無限といっては大袈裟ですが、たくさんあります。ショップで自分の悩みを伝え、合ったものを試してみてください。
さて、せっかくなので、ちょっと“ぶっちゃけた話”をしましょう。
実はパーツの交換をしなくても走りの質を向上させることができます。手段は、「ポジションの煮詰め作業」と「タイヤの空気圧の調整」です。
まずは「ポジションの煮詰め作業」から説明しましょう。ショップで購入したなら、納車時にスタッフの方が適正なポジションに調整してくれていると思います。しかし、あくまでそれはざっくりとした目安であり、しかも乗っているうちに体の柔軟性や筋肉の付き方や技術が変わるので、ポジションは変化します。
次のライドのときに途中でセッティングをちょっと変えてみてください。例えば、サドルを3mm上げてみる。ハンドルを5mm下げてみる。ハンドルの角度を少しだけ変えてみる。レバーの取り付け角度を変更してみる。そうして、フィーリングがどう変わるかを感じてみましょう。そうして、自分のポジションをどんどん煮詰めていくのです。
このとき、むやみにいじってしまうと訳が分からなくなってしまうので、いつでも最初の状態に戻せるようにパーツにテープを貼るなどしてマーキングをしておきましょう。また、ハンドル周りのセッティング変更は慎重に。固定力が不足していて走行中にずれると重大な事故につながります。不安ならショップにお願いしてください。
ロードバイクやクロスバイクに乗る際、サドルの高さをどのように合わせたらいいのか分からないというサイクリストは実はとても多く見受けられます。適正に近いサドルの高さで乗車することでたくさんのメリットがあります…
ロードバイク用のサドルにはいろんな種類があります。全長が長いものと短いもの、幅が広いものと狭いもの、柔らかいものと硬いもの、穴が開いているものとそうでないもの、湾曲しているものと平面的なもの…。
次は「空気圧の調整」について。タイヤのサイドには、「5.5-8bar」のようなメーカー推奨空気圧の表記があります。その範囲内で空気圧を変えてみましょう。まず6.5barにして、加速性能や快適性やコーナリング時のフィーリングを覚えておきます。次に、7barにして同じコースで同じことを試します。6barにしたらどうなるか、6.2barにしたら、6.8barにしたら……と、徐々に調整範囲を狭めてみてください。
最適な空気圧は、①ライダーの体重②好み③走る場所④重視する性能─等によって変わります。絶対的な正解はありません。好みの空気圧を見つけられれば、愛車の性能がワンランクアップしたように感じられると思います。
この「ポジションの煮詰め作業」と「空気圧の調整」は、効果絶大なのにコスト0円でできるチューニングです。しかも、自転車と自分の体に対する理解も深まります。ぜひ、試してみてください。
自転車ライター。大学在学中にメッセンジャーになり、都内で4年間の配送生活を送る。現在は様々な媒体でニューモデルの試乗記事、自転車関連の技術解説、自転車に関するエッセイなどを執筆し、信頼性と独自の視点が多くの自転車ファンからの支持を集める。「今まで稼いだ原稿料の大半をロードバイクにつぎ込んできた」という自称、自転車大好き人間。
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