2023.1.16
ロードバイクをこれから始めたいという初心者サイクリストのために、この記事ではロードバイクの特徴や種類、選び方、買い方について解説します。
ロードバイクは舗装路において速く、遠くまで走ることに特化した自転車(バイク)です。ロードレーサーとも呼ばれることから分かる通り、元々はレースを走るための車種として発展しました。現在はレースを主目的とせずロードバイクに乗る人も増え、軽装備で走る半日から一日程度の長距離サイクリングにも多く使われています。
特徴は走るため以外の装備を極力排除し、軽量でスピードを出しやすい点が挙げられます。独特な形状の「ドロップハンドル」や、とてもスリムなタイヤ(現在は幅25mm程度が主流)が、外観では目立つポイントでしょう。スピードを出しやすいということは、逆に言えばあまりスピードを出さなければラクに走ることができ、程良い運動強度になるのでダイエットにもオススメです。
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ロードバイクは、無限につながる道路をフィールドとするため、その楽しみ方は幅広く無限大とも言えるでしょう。自転車で走ると一口にいっても、どの道をどのように(どんな速さで)走るかで、楽しさの種類は全く違ってくるからです。ここではスポーツ的な楽しみ方の例を中心に紹介します。
どこか目的地を決めて走ったり、走ってみたい道、絶景ポイント、グルメなど、ツーリングにはさまざまな楽しみを詰め込むことができます。長距離にチャレンジする「ロングライド」、峠や山頂を目指して上り坂を走る「ヒルクライム」、美味しいものを目的に走る「グルメライド」などがポピュラーな楽しみ方(全部まとめてもOK)。そして特に目的もなく、その時の気分で気ままに道を選んで走るのも、実は楽しかったりします。
ロードバイクにある程度慣れてきたら、一日に100km以上走ることも十分可能なので、自宅発着に限ったとしても、かなりの広範囲を走ることができるはずです。クルマや公共交通機関を活用すれば、フィールドはさらに広がります。
ロードバイクはレース用として発展した自転車ですから、レースに使うのは本来の用途とも言えるでしょう。ストイックに速さを求めてトレーニングし、仲間とのライド(練習会)では小さな競争を重ねて、勝った負けたと一喜一憂。そして目標のレースではさらなる非日常の緊張感を味わう。ハマればとても刺激的な時間を得ることができます。
レースイベントはツール・ド・フランスに代表されるような「ロードレース」の他に、上りだけのタイムを競う「ヒルクライムレース」、短距離の平らなコースでスピード感あふれる「クリテリウム」、モータースポーツの耐久レースのような「エンデューロ」といったものもあり、それぞれ人気を集めています。エンデューロは数人のチームが交代しながら走る形態のため、仲間と一緒に楽しめるレース系イベントとして人気です。
近年は自転車系のイベントが増え、春〜秋のシーズン中ではほぼ毎週末、全国各地でサイクルイベントが行われています。各地の観光資源を生かした数十km〜100km程度のライドイベントは、レースではなく純粋にその土地を走ることを楽しむものです。途中数ヶ所に設けられたエイドステーション(休憩所)では、観光名所に立ち寄ったり、地域の特産品を味わえたりと、各イベントが趣向を凝らしています。100kmを超える距離のイベントもありますが、大抵は少なめの距離のコースも用意されており、幅広い脚力のサイクリストが参加可能です。
もちろんロードバイクを日常のシーンで使うのも「あり」です。一般車(シティサイクル)だと少々躊躇するような距離の移動も、ロードバイクならスイスイとこなせます。精悍なスタイルのロードバイクを颯爽と乗りこなしてクールに決めましょう。
ロードバイクは私たちが一般的に知っている一般車とは、異なるメカニズムを装備しています。ここではパーツ各部の特徴を解説します。
複雑な曲線で構成されたドロップハンドルは、ロードバイクのルックスの象徴ともいえるでしょう。ドロップハンドルは大きく分けてフラット部、ブラケット部、ドロップ部の3箇所を握ることができ、それぞれ前傾度合いや力の入り方を変えることができます。ロードバイクは平地だけでなく上り坂、下り坂などさまざまな道を、さまざまなスピードで長時間走るので、このようなハンドルバーが有用なのです。適切なハンドルポジションを適宜選ぶことで、走りの効率を高めたり、身体の負担を分散させることができます。
自転車は前後のギアをチェーンでつないで動力を伝達する構造が一般的で、現代のロードバイクは前のギアが2段、後ろのギアが9〜12段となっていることが多いです。前側のギアは大まかなシーン選択(大きなギアは下りや高速走行時、小さなギアは上りや低速走行時)、後ろ側のギアは細かい調整という使い分けをします。高価格帯モデルでは電動変速も普及してきています。変速のためのレバー(またはスイッチ)はブレーキレバーと一体化しているのが、現代のロードバイクでは一般的で、ハンドルから手を放さずに変速操作が可能です。
ブレーキは少し古いモデルや低価格帯のモデルは、リム(車輪の外周のタイヤを装着する部分)をブレーキシューで挟んでブレーキをかけるキャリパーブレーキ(リムブレーキ)が使われていますが、最新の高価格帯モデルでは、ディスクブレーキを装備するバイクが主流になっています。油圧式ディスクブレーキは少ない力でも高いブレーキ力が得られ、雨天などの悪コンディションでも性能が落ちにくい特長があります。
ロードバイクは27インチのホイール(700Cとも呼ばれる)が標準的です。昔は幅2センチ未満の細いタイヤも使われましたが、現在は25mm(2.5センチ)幅が標準的です。荒れ地を走る場合や、乗り心地を良くしたい場合には、さらに太いタイヤを装着することもあります。
一般車に比べて軽量な、スリムで薄いサドルが装備されます。長時間乗っているとお尻が痛くなるのでは?と心配になるかもしれませんが、ロードバイク乗車時の体の支え方は一般車と根本的に異なるので、乗り方をマスターすればお尻は痛くなりません。ただし慣れるまでは少しクッション性の高いサドルを使った方が良いかもしれません。
本格的なスポーツとしてロードバイクに乗る場合、レース派でなくてもビンディングペダルを使うことは一般的です。シューズの裏面にクリートという金具を付け、専用のペダルにパチンとはめて固定する機構になっており、ただ踏むだけの一般車のようなフラットペダルと比べて、より効率的にペダルを漕ぐことができます。慣れれば簡単に付け外しが可能で、転倒時も危険がないよう自動で外れるようになっています。ただ、ロードバイクに慣れるまでや日常遣いの場合は、フラットペダルがおすすめです。
現代のロードバイクはいくつかのタイプに大別することができます。各タイプの違いを知っておきましょう。
初めてロードバイクに乗るような人をターゲットにしたタイプです。乗車時の前傾姿勢がそれほどきつくない設定だったり、ハンドルのフラット側に補助ブレーキレバーが付いていたり、乗り心地もマイルドだったりと、初心者がロードバイクに乗る際に辛くなりがちな部分をカバーする設計になっていることが多いです。価格帯も比較的低めの設定です(といっても10万〜20万円程度にはなります)。
レースを走る、つまり速く走ることを主目的とした、王道のロードバイクです。近年はその中でもオールラウンドタイプと、エアロタイプが存在します。オールラウンドタイプは軽量で、長い上り坂などあらゆる道で速く走る設計。エアロタイプは若干重量があるものの、空力性能がとても高く、中高速域を中心とした走りに非常に強い設計です。
レースというよりも、ハードなロングライドをこなすためのロードバイクです。長時間を走りきるために比較的起きた乗車姿勢と、高い衝撃吸収性能が特徴で、設計の方向性としては入門用ロードと近いですが、その中で走行性能をさらに突き詰めた高価格帯のモデルも存在します。
ロードバイクから分化しつつあるジャンルで、グラベル(未舗装路)を含んださまざまな道を、冒険的に走るバイクです。より太いタイヤが装備できたり、旅を楽しむために荷物の積載力が高くなっていたりします。
ロードバイクの骨格であるフレーム。近年は3種類の素材が代表的です。
強度と加工性に優れ、長年使われている素材です。ロードバイクにはクロモリと呼ばれるクロムモリブデン鋼が広く使われており、スチールフレームの代名詞にもなっています。スリムなパイプによるルックスが好まれ、職人によるオーダーメイド自転車といった趣味的分野を中心に、根強い支持があります。
軽量性と大量生産に向くことから、比較的低価格でも高性能なフレームに仕上げられるため、入門モデルや本格モデルのローエンドで多く使われています。本格モデルではフロントフォークのみカーボン製が用いられることが一般的です。
高級モデルでは現在主流の素材です。超軽量に仕上げられ、各部の剛性の調整も自在なので、レース用から乗り心地重視のコンフォートモデルまで、幅広い用途に対応します。低価格モデルもありますが、実際に高性能なカーボンフレームは、それなりに高価になるのが一般的です。
マニアックなところではチタン合金や、木や竹といった自然素材で作られるフレームも存在します。
一口にロードバイクといっても、その価格はとても幅広いです。ネット通販では2〜3万円のロードバイクが売られていたりする一方で、有名ブランドのハイエンドモデルは今や100万円超えも珍しくありません。ロードバイクの価格について知っておきたいポイントについて解説します。
簡単に言えば、全てが違います。完成車で10万円を切るようなロードバイクとしては低価格帯のモデルと、30万円以上の中級モデルを比べたら、フレームの性能、変速性能、変速の段数、ブレーキ性能、乗り心地、ホイールの性能など、何から何まで違うと思っていいでしょう。重量も高価なモデルの方が一般に軽く、必然的に走りも軽快になります。
お金を出した方が一般的により高性能なバイクになります。ただし、出したお金と性能は必ずしも正比例はしません。ロードバイクなら完成車で30万円くらいまでは、お金を出した分だけ高性能になりますが、それ以上は性能に対して、かかる費用は徐々に指数関数的になっていきます。120万円のバイクが30万円のバイクの4倍性能が良いということは、残念ながらありません。しかし性能自体が良いことは確かなので、ここは悩みどころです。
お金に糸目を付けず、初心者でも最初から良いものを!と高価なモデルを購入しようとする場合、少し注意が必要です。高級モデルのロードバイクはレース志向であることが少なくなく、健脚向けで剛性が高すぎたり、想定する乗車姿勢の前傾が強すぎるたりと、初心者には扱いづらい場合があります。逆に乗り慣れてロードバイクを扱うための技術や筋力が付いてくると、初心者向けバイクでは物足りなくなったり、最初に合わせたポジションに違和感が出てしまう場合があります。ショップと相談しつつ、初心者はサイクリストとしての成長に合わせて、何台か自転車を乗り換えていく想定でもいいかもしれません。
ネットで検索すれば完成車で5万円を切るような、激安であれば2〜3万円台というロードバイクが通販で販売されています。しかし激安商品にはそれなりの理由があります。原価を落とさなければ安い商品は作れませんから、フレームから各部パーツまで全てが安価なもので構成されているのです。こうした安物はロードバイクの形をしていますが、各部の性能がとても低く、ロードバイクならではの走りと、それに付随するライフスタイルはほぼ手に入りません。ロードバイクで何がしたいかを考え、納得した上で購入判断をすることをオススメします。
いわゆる安物ロードバイクは、重量がとても重くなってしまうのが特徴です。安価な製品に使われる安価な素材は重量あたりの強度が劣るため、必要な強度を出すためには重量がかさんでしまうからです。目安として、現行商品で完成車重量が10kgを大きく上回っていたら要注意と言えるでしょう。現行商品であれば、後ろ変速が8段以下のロードバイクも、性能が著しく低い懸念があります。
実際にロードバイクを購入する際に注意するポイントを解説します。
最初から明確な使用目的が定まっていないのであれば、最初はいわゆる入門用にカテゴライズされたモデルがオススメです。乗車姿勢や乗り心地、剛性などの設定が、まだ乗り慣れていない人にも乗りやすいものになっているので、ストレートにロードバイクの楽しさに触れやすいでしょう。
ロードバイクが一般車に比べて速く走れるのは、軽さや細いタイヤも理由ですが、全身の力を推進力に変えられる点も大きいです。ただしそのためには、ライダーの体に合ったサイズのバイクを使うことが絶対条件です。しかし初心者はロードバイクの正しい乗り方について知識や経験が乏しく、初心者自身が適正なサイズを選んで、さらに各部の微調整を重ねてフィッティングするのは、非常に困難であると言わざるを得ません。最初の1台であれば、知識と経験のあるプロショップでアドバイスを受けることをおすすめします。
好きな色のバイクに乗れたら気分がアガることは間違いなし! 色でバイクを選ぶことは全然アリ!です。しかし欲しい色のバイクでも、自分のサイズには合っていない場合、少し無理をしてでも好きな色のバイクに乗るべきかと問われたら「否」です。ロードバイク購入において適正なサイズ選びは絶対条件と知っておいてください。
初めてロードバイクを購入する場合、自転車本体以外にもいくつか揃えておきたいグッズがあります。想定する乗り方にもよりますが、ヘルメット、ライト、カギ、空気入れやパンク修理セットなど最低限の工具は必須アイテム。本格スポーツとして乗るのであれば、サイクリング専用ウェアやビンディングシューズ&ペダルもあった方が快適です。これら周辺グッズの購入も想定して予算を準備しましょう。
男性と女性では平均的な骨格に差異があるため、男性と同じバイクにそのまま女性が乗ると、快適に走れない可能性があります。骨盤で体重を支持するサドルや、肩幅に合わせて選ぶハンドルは、男女差が出やすいパーツでもあります。メーカーによってはこうしたパーツのチョイスや、想定する乗車姿勢を女性向けにした、専用モデルを用意しています。
現代はあらゆる分野で顧客直送の通販が広がっており、自転車も同様です。ただし初心者が通販で最初のロードバイクを購入することは、リスクが高くオススメできません。
理由の1つはロードバイク選びにおいて、サイズ選びとフィッティングがとても重要である点です。身長や体格、柔軟性などを加味しつつ適正なサイズのバイクを選び、さらに細部を調整してフィッティングを行うことは、初心者自身にはほぼ不可能と言っていいでしょう。対面でのサイズチェックを省いてバイクを購入することは、体に合わないバイクを購入してしまうリスクがあります。
もう1つの理由としては、高性能でありつつ一般車よりも繊細なロードバイクは、乗り続けるのであれば定期的なメンテナンスが必須であるという点です。周囲にとても詳しい人がいて面倒を見てくれるというのでなければ、通販で購入しても、結局はショップで見てもらうことになります。しかし、ショップは通販で購入したバイクの持ち込みを嫌がるケースが少なくありません(技術的な理由、商売的な理由、感情的な理由、それぞれがあります)。自分でショップを開けるほどの知識や経験のある上級者であれば問題はありませんが、初心者はプロショップの知識や経験を利用する方が、自転車選びや取扱いについて、大きな失敗をせずに済むはずです。
スポーツサイクル歴約30年の自転車乗りで元ロードレーサー。その昔はTOJやジャパンカップなどを走っていたことも。幅広いレベルに触れたクラブチームでの経験を生かし、自転車スポーツの楽しみ方やテクニックをメディアで紹介しています。ローラーより実走、ヒルクライムより平坦、山中より都市部を走るのが好きです。
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