ロードバイクで東海道中膝栗毛!東京→大阪を目指す旅路に出発(府中宿→高麗橋)ロードバイクでツーリングに挑戦しよう<2>

2025/12/17    

 東京・日本橋から大阪・梅田まで、ロードバイクで東海道を走り抜ける旅企画の第2回です。前編では日本橋を出発し、東海道の宿場町をたどりながら静岡・府中宿まで進みました。今回はその続きとして、旅の核心ともいえる2日目と3日目の記録をお届けします。歴史ある宿場町との出会い、かつての難所・大井川や鈴鹿峠を越えていく達成感、そして三条大橋から大阪・高麗橋へと続く東海道五十七次のロマン。ロードバイク旅ならではの発見と、ゆっくり積み重なる距離の手触り。そんな時間を今回も皆さんにお伝えしていきます。

ロードバイクで東海道中膝栗毛! 最終日にはいよいよ京都&大阪へ

前編はこちら→ロードバイクでツーリングに挑戦しよう<1>

静岡駅から再出発 ― 東海道の空気とともに

 東海道旅の2日目は、静岡駅から再び走り始めました。前日に挨拶した家康像へ、もう一度そっと会釈。旅の続きへと踏み出す静かな朝です。ゆっくりと動き出す街の気配。ロードバイクで旅をすると、こうした些細な風景がいつもより鮮明に感じられます。

 走り出してすぐ、丸子宿へ。名物・とろろ汁で知られる「丁子屋」は、東海道中膝栗毛にも登場する老舗です。体力補給に最適な一杯ですが、今回は朝が早すぎてまだ開店前。また次回の楽しみに残しておくことにしました。旅は“余白”があるからこそ、続きが気になるものです。

東海道中膝栗毛にも登場した丁子屋は残念ながら開店前

弥次喜多との再会 ― 岡部宿の楽しみ

 藤枝市に入り、岡部宿へ立ち寄りました。ここでも存在感を放つのは、やはり弥次喜多。顔出しパネルが設置され、東海道のアイコンのような佇まいです。同行してくれた友人・宮崎と記念撮影。先を急ぎたい気持ちもありますが、立ち寄ってみるのもいいものです。

岡部宿で弥次喜多コンビの顔パネ発見!

越すに越されぬ大井川 ― 江戸の難所を今に辿る

 西へと進むと大井川。「箱根八里は馬でも越すが、越すに越されぬ大井川」

よく知られた句が、この川の厳しさを語っています。

モニュメントで当時の旅人になりきる筆者。現代の交通インフラに感謝です

 川岸には、川越人足が旅人を連台で運ぶ様子を表現したモニュメントがあるので立ち寄りました。歌川国貞の『大井川之図』にも描かれた情景です。橋が架かった現代では、ただ渡るだけの場所。しかし、かつての旅人が味わった緊張や不安、安堵の瞬間を想像するだけで、ペダルを踏む足に歴史の重みが宿るようでした。時代を越えたロマンを味わいに、少し寄り道するのもおすすめです。

浜名湖でひと休み ― ハマイチの風景とハンバーガー

 お昼時は浜名湖・弁天島を通過。海浜公園で食べたハンバーガーは、旅のご褒美そのもの。湖と弁天島を見晴らすロケーションで味わう一口は、特別な時間を作ってくれます。

弁天島を望むレストランでランチ

 この地域は「ハマイチ」で知られ、湖畔を巡るサイクリング文化が根付いています。近くの「弁天島サイクルゲート」ではレンタサイクルも提供。ビギナーの方でも気軽に立ち寄れる環境が整い、旅の途中に寄り道をしたくなる場所です。湖畔をなぞるようなルートを進みます。

浜名湖は湖を一周する「ハマイチ」をはじめとしてサイクルツーリズムを推進しているエリア

四日市の夜 ― 旅を支える装備の知恵

 2日目は愛知県を抜け、三重県四日市市で宿を取りました。宿泊先では自転車をそのまま部屋へ入れられず、輪行袋に収納して持ち込みました。輪行袋の“安心感”を感じる瞬間です。

携帯していた輪行袋を活用し、ホテルの室内で自転車を保管

 そして、長旅で役立つアイテムがもう一つ。マリンシューズ。軽量で柔らかく、歩きやすさは抜群です。ビンディングシューズでは外食に出るのが大変ですし、スニーカーは荷物がかさばる。背中のポケットに収まるコンパクトさ。旅ライドの小さな味方です。

軽装でありながら外出もできる便利アイテム「マリンシューズ」

日永の追分へ ― 街道が交わる場所

 最終日の3日目は四日市から大阪を目指して走り出しました。はじめに訪れたのは「日永の追分」。東海道と伊勢街道が分岐する場所で、常夜灯や道標が静かに佇んでいます。旅人が道を選んだ交差点。そう思うだけで、道の重みが少し増す気がします。

関宿の町並み、鈴鹿峠の長い登り

 次に向かったのは亀山市の関宿。伝統的な町並みが美しく残り、東海道らしさがぎゅっと詰まった場所です。時代がそのまま残ったような景色に、旅情の濃度が一気に高まります。

旧街道の街並みが今でも楽しめる関宿

 続くのは鈴鹿峠。急勾配ではないものの、長く続く“じわじわ系”の上り。なお、上り始めると補給スポットはありません。コンビニも自販機も見当たらない区間なので、手前で補給しておくことを強くおすすめします。交通量も多いので、明るい時間帯の通過が安心です。峠を越えて一気に下れば、滋賀県へ。風の感触が一変する瞬間です。

鈴鹿峠には補給スポットがないので、事前の立ち寄りが必須

滋賀から京都へ ― 東海道の終着点へ

 滋賀県では草津宿に立ち寄りました。東海道と中山道が合流する場所。街道の歴史が交わる地点です。

東海道と中山道が交わった草津宿

 琵琶湖を遠くに望みながら進むと、いよいよ逢坂山。そして京都市内へと入ります。鴨川にかかる三条大橋。ここが東海道の終着点です。弥次喜多の像、新選組が池田屋事件で残したとされる擬宝珠の刀傷。歴史の痕跡が点在する場所。通り過ぎるだけでは惜しいスポットです。

京都の三条大橋に到着!
新選組が池田谷事件の際に残したとされる刀傷
橋のたもとには弥次喜多コンビの銅像が旅の安全祈願をしている

旅はさらに先へ ― 東海道五十七次と大阪・高麗橋

 今回は三条大橋で終わりません。東海道五十七次をたどり、大阪市・高麗橋まで走りました。大津から京都市街を抜けず南下し、伏見宿・淀宿・枚方宿・守口宿を経て高麗橋へ向かう街道。この区間は街道の名残を感じながら都市部を駆け抜けるルートです。景色の変化が面白い区間。そして高麗橋へと到着。ここでようやく旅のフィナーレです。

東京・日本橋から大阪・高麗橋まで約550㎞を完走

 なお、復路は大阪から新幹線で東京へと戻りました。服や荷物は予め宿泊を予定していたホテルへ郵送していたので、不自由はありませんでした。大阪観光も楽しめましたし、輪行も問題なくできました。荷物の事前発送をするだけで、旅のゆとりは段違いです。数日かけた旅ライドの際にはぜひ活用してみてください。

550kmを走り切って ― ロードバイク旅の魅力を再発見

 3日間で約550km。遠回りもしながら各地の歴史と文化に触れ、東海道のロマンに浸る旅となりました。以前、24時間で東京〜大阪を走るキャノンボールに挑戦したことがありますが、速さを求める旅とはまた違う楽しみがあります。寄り道、偶然、景色。旅ならではの豊かさです。

 ロードバイクも近年進化し、太めのタイヤやディスクブレーキが主流となり、初心者でも扱いやすい乗り物になりました。旅ライドのハードルは確実に下がっています。しっかり準備をすれば、誰でも自分だけの旅に出られる時代です。僕たちが感じたように、ロードバイクで歴史街道を走る楽しさを、ぜひ味わってみてください。きっと新しい世界が広がるはずです。

松尾修作(まつお・しゅうさく)

10代からスイスのサイクルロードレースチームに所属し、アジアや欧州のレースを転戦。帰国後はJプロツアーへ参戦。引退後は産経デジタルが運営した自転車専門媒体『Cyclist』の記者、編集者として自転車やアイテムのインプレッション記事を担当した。現在は自治体の自転車施策プロデュース業務等を担当。

この人の記事一覧へ
  • HOME
  • HOW TO
  • ロードバイクで東海道中膝栗毛!東京→大阪を目指す旅路に出発(府中宿→高麗橋) ロードバイクでツーリングに挑戦しよう<2>
  • HOME
  • ロードバイク
  • ロードバイクで東海道中膝栗毛!東京→大阪を目指す旅路に出発(府中宿→高麗橋) ロードバイクでツーリングに挑戦しよう<2>

編集部おすすめ記事

新着記事

新着記事一覧

ランキング

  • 週間
  • 月間
ランキング一覧

ロードバイクの人気記事

マウンテンバイクの人気記事

おすすめのタグ