湖と歴史とグルメを味わう浜名湖一周ライド「ハマイチ」ぐるっと一周「〇〇イチ」に挑戦!<3>

2025/10/03    

 全国各地には、湖や島などを自転車でぐるっと一周する「◯◯イチ」と呼ばれるサイクリングコースがあります。滋賀県の「ビワイチ」や茨城県の「カスイチ」が有名ですが、静岡県西部の浜名湖を一周する「ハマイチ」も人気のルートのひとつです。距離は約60kmほどと、ビギナーでも挑戦しやすい距離感。さらに湖畔の景色やご当地グルメも豊富で、観光とあわせて楽しめるのが魅力です。今回は実際に「ハマイチ」を走ってみた体験をレポートします。

浜松市の弁天島を拠点にスタート
オススメポイント 平坦中心でビギナーも挑戦しやすい65km。湖畔の絶景と三ヶ日みかんや鰻などご当地グルメ、さらに東海道の歴史を感じる新居関所も楽しめる、観光と達成感を一度に味わえるサイクリングコース。
レベル ★★(中級者向け)
距離 58.3km
獲得標高 519m
出着地 弁天島サイクルゲート
立ち寄りスポット 弁天島の赤い大鳥居、弁天島サイクルゲート、浜名湖大橋、舘山寺温泉街、大草山展望台(舘山寺ロープウェイ)、猪鼻湖周辺、三ヶ日みかんスイーツ店、浜名湖のうなぎ店、新居関所跡

スタートは「弁天島サイクルゲート」から

 今回の出発点に選んだのは、2025年5月にオープンした「弁天島サイクルゲート」。ここではレンタサイクルやヘルメットの貸し出しがあり、観光情報やサイクリストフレンドリーなお店の紹介もしてくれる拠点施設です。

浜名湖周辺のサイクリングに適した観光情報が得られる「弁天島サイクルゲート」

 JR東海道線「弁天島駅」から徒歩3分、新幹線を利用する場合は浜松駅からの乗り換えでアクセス可能。車で訪れる場合も、近隣の駐車場には約300台が停められるので安心です(有料・1回410円)。

オリジナルグッズの販売やアイテムの貸し出しも行われている

 弁天島といえば、浜名湖に浮かぶ赤い大鳥居が有名な撮影スポット。湖に映る鳥居の景観を眺めながら、サイクリング旅のスタートを切ると気分も高まります。

浜名湖大橋を渡り、舘山寺温泉へ

 弁天島を出発し、渚園を抜けて浜名湖大橋を渡ると、左右に広がる湖のパノラマビューが目に飛び込んできます。走り始めてすぐに絶景を楽しめるのは、ハマイチの大きな魅力のひとつです。

パノラマの絶景が魅力の浜名湖大橋

 湖畔のサイクリングロードをたどると、最初の目的地「舘山寺(かんざんじ)」エリアに到着。ここには温泉街が広がり、日帰り入浴施設やホテルも点在。観光ロープウェイに乗れば大草山山頂から浜名湖全体を一望できます。周辺にはカフェや飲食店も多く、サイクルラックを設置するお店もあるので休憩に最適です。名物のうなぎ料理を提供する老舗も多く、ランチに立ち寄るのもおすすめです。

動物園を抜け、変化に富む景観を楽しむ

 舘山寺を過ぎると「浜松市動物園(はまZOO)」の横を通過。ここからは緩やかなアップダウンが続く丘陵区間になります。道路が入り組んでいて分岐も多いため、あらかじめサイクルコンピューターにルートを入れておくと安心です。筆者もナビを利用していましたが、それでも数回道を間違えそうになりました。

舘山寺には温泉街のほかカフェなどが並ぶ

 湖の奥へ進むにつれ、遠くには山並みが広がり、入り組んだ湖岸が次々に現れるため、景色が変化して飽きることがありません。

飽きることない湖面の景色が続く

三ヶ日みかんと猪鼻湖(いのはなこ)

 やがて「猪鼻湖」という浜名湖の支湖に差し掛かります。ここで大崎半島を縦断すればショートカットとなり、外側をぐるっと回ればフルコースに。脚力や体調に応じてルートを選べるのがハマイチの良いところです。

 周辺は「三ヶ日みかん」の産地として有名。季節によっては畑が色づき、サイクリングの目を楽しませてくれます。サイクリストに人気なのは、みかんを使ったソフトクリームやスイーツを提供するお店。ライド中の糖分補給にもぴったりです。

ご当地グルメと立ち寄りスポット

 浜名湖といえばやはり「うなぎ」。湖畔にはうなぎ専門店が点在し、サイクルラックを置いてある店もあります。走る前に営業日をチェックしておくと安心です。火曜定休の店が多く、人気店は売り切れになることもあります。

サイクルラックが設定されているPizzaTimeでランチ休憩

 この日は残念ながらうなぎにありつけなかったため、筆者は湖畔のピザ店で軽めのトルティーヤとかき氷をいただきました。こうした気軽に立ち寄れる飲食店が点在しているのも魅力。ライド中に立ち寄りやすい店舗があるとありがたいですね。

出来立て熱々のトルティーヤやかき氷を食べてリフレッシュ

東海道の宿場町「新居宿」と関所跡

 ハマイチの後半に差し掛かると、湖西市にある「新居宿(あらいじゅく)」へと入ります。ここは江戸時代の東海道五十三次のひとつで、浜名湖の渡しの西岸に位置した宿場町です。浜名湖の今切口はかつて東海道の難所とされ、旅人は湖を渡るためにここ新居宿に滞在しました。宿場町として栄えた背景には、この交通の要衝という立地があったのです。

新居関所跡はロードバイクでも立ち寄りやすい道路沿いにある

 特に注目したいのは「新居関所跡」。江戸幕府は街道の要所に関所を設けて厳しい取り締まりを行いましたが、新居関所はその中でも重要な存在で、東海道を行き交う人々の手形や通行証を厳しく検査していました。現在残っている建物は、日本に唯一現存する関所建物であり、国の特別史跡にも指定されています。園内に入れば資料館で当時の様子を学ぶこともでき、往時の雰囲気をリアルに体感できます。

 サイクリングの途中で立ち寄るなら、門や高札場などは外からでも見学可能。道沿いに再現された木造の門構えは旅人を出迎えるように立っており、ペダルを止めて眺めると、まるで江戸時代にタイムスリップしたかのような気分になります。

 新居宿には昔ながらの町並みも残っており、少し足を止めて散策してみるのもおすすめ。東海道の歴史を感じながら走ることができるのは、ハマイチならではの魅力のひとつといえるでしょう。

 そのまま国道301号線を進めば、スタート地点の弁天島に戻り、ハマイチ完走となります。

ハマイチを楽しむためのアドバイス

 ハマイチは平坦区間が多く、一定ペースで走りやすいのが特徴です。湖面を間近に感じられる区間もあり、水辺を吹き抜ける風とともに走る爽快感は格別。ビギナーにとっても達成感を味わいやすい「◯◯イチ」です。

 一方で、湖岸の道は複雑で迷いやすいので、必ずルートをサイクルコンピューターやスマホアプリに入れておきましょう。弁天島サイクルゲートでレンタサイクルを借りれば、必要な装備も整えられるので、手ぶらで気軽に挑戦することも可能です。

弁天島サイクルゲートで用意された多種多様なレンタルバイク

 早ければ半日、観光やグルメを楽しみながらでも1日あれば完走できるのも魅力。サイクリング初心者が「◯◯イチ」に挑戦する最初の一歩としてもおすすめできるコースです。湖のきらめきを眺めながらペダルを回す時間は、きっと日常を忘れさせてくれる特別な体験になるはず。ぜひ浜名湖をぐるっと一周してみてはいかがでしょうか。

松尾修作(まつお・しゅうさく)

10代からスイスのサイクルロードレースチームに所属し、アジアや欧州のレースを転戦。帰国後はJプロツアーへ参戦。引退後は産経デジタルが運営した自転車専門媒体『Cyclist』の記者、編集者として自転車やアイテムのインプレッション記事を担当した。現在は自治体の自転車施策プロデュース業務等を担当。

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