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試乗、ライディングスクール、座学講座でオフロードを学ぶ
「SBAAオフロードバイクディーラーサミット 2021-22」関東会場レポート 体感したMTBの楽しさ・知識を接客へ

 自転車協会が主催する「SBAAオフロードバイクディーラーサミット 2021-22」の第一弾イベントが11月17日に栃木県宇都宮市のろまんちっく村で開催された。MTBやグラベルロードなどのオフロードバイクの普及促進を目指し、SBAA PLUS 認定者をはじめとする自転車販売店のスタッフを対象にしたイベントで、当日は最新オフロードバイクの試乗会やプロライダーによるライディングスクール、座学講習などが行われた。長年の経験を持つ参加者もMTBの新たな楽しみ方を掴むなど、収穫を多数得たようだ。2021年は12月7日と12月8日に静岡県伊豆の国市・狩野川で、2022年1月19日に大阪府河内長野市・プラザ阪下でも、同様のイベントが開催される。(Photo & Text by Masahiro Osawa, Shusaku Matsuo)

ライディングスクール参加者と井手川直樹選手(最前列中央左)、小笠原崇裕選手(最前列中央右)

多数のブランドが集結

 SBAAオフロードバイクディーラーサミットが2年ぶりに復活した。初開催となった2019年度は関東、関西の2会場に多数の自転車販売店のスタッフが参加、続く2020年度は新型コロナの影響で開催を見合わせたが、今年は関東、中部、関西の3会場と開催場所を増やしての開催となった。

自転車メーカーや代理店計10社が集結

 今年度の第一弾イベントとなったろまんちっく村にも、朝早くから多数の自転車販売店のスタッフが集まった。会場にはKONA(コナ)、GT(ジーティー)、SHIMANO(シマノ)、NINER(ナイナー)、Panasonic(パナソニック)、Bianchi(ビアンキ)、BESV(ベスビー)、MIYATA(ミヤタ)、MERIDA(メリダ)、YPJ(ワイピージェイ)といったブランドのオフロードバイクが集結した。各社はe-MTB、グラベルロードを揃え、参加者はそれらを試乗車として借り受け、乗り味を吟味していた。

eONE SIXTY 500(メリダ)
E-SUV ADVENTURE(ビアンキ)
XM-D2(パナソニック)
TRS2 AM(ベスビー)
YPJ-MT Pro(ワイピージェイ)
X-VALLEY E6180(ネスト)

3セッションすべて学びの多いライディングスクール

 

 試乗の合間には、プロライダーの井手川直樹選手と小笠原崇裕選手によるライディングスクールが実施された。午前10時からスタートした「初心者向け基礎レッスン」では、基本の乗車姿勢(ニュートラルポジション)をレクチャー。クランクを水平にしてペダルの上に真っ直ぐ立ったニュートラルポジションから、体を前後左右に動かす練習を実施した。上りや下りによって常に重心位置が変わるのがMTBであり、まずは中心となるニュートラルポジションを把握してもらい、MTBに乗車した状態で、どこまで自分が体を動かせるかを知ることが、安全に走行するためにも重要になるってくるという。

後方に体を移動
左右に体を移動

 続いてブレーキングやコーナリングについてレクチャー。(ディスクブレーキ採用のMTBを前提として)ブレーキングは指1本で行っていること、コーナーリングではコースアウトをしないためのライン取り、スムーズなコーナーリングの方法について解説した。8の字を描く練習もしながら、参加者はコーナーリングの基本を学んでいった。

 次のセッションの「プロライダーと走るフリーライド」では、より実践的な内容に。会場に設置されたパンプトラックやろまんちっく村に常設されているMTBコースのバームや段差、木の根の張った上り坂といったセクションを活用して、それぞれ安全に走行・走破するためのポイントを解説してくれた。各セクションでは、井手川選手はバームをスムーズにこなし、段差をジャンプするプロのテクニックを見せ、小笠原選手も、高速で上りをこなすパフォーマンスを披露し、参加者を喜ばせた。

井手川選手のバームセクションのデモンストレーション
小笠原選手は高速の上りを披露

 最後のセッションの「顧客向けワンポイントアドバイス」では、エンデューロバイク、クロスカントリーバイクといったMTBの種類によるタイヤやサスペンションの構造、ストローク量の違いなどを解説したうえで、乗車時の基本設定となるサグ出しの役割と方法についてレクチャーした。

サグ出しの方法を解説
ゴムリングの動いた量をもとに適正数値を確認していく(サスペンションにより別の手段をとる場合も)

 その後の実践ライドでは、ライン取りについて時間を割いて説明。井手川選手は、走行ラインひとつをとっても、細かく見れば、何通りものラインが浮かび、選んだラインによって走りが変わっていくことをレクチャーしてくれた。木の根が張り、段差が連続するコーナーセクションを例に、井手川選手が何を考え、どうやり過ごすかをデモンストレーションを交えながら解説してくれた。実例をもとに、普段走りなれた場所でも、ライン取りを変えるだけで新たな楽しみを見い出せることを伝えていた。このライン取りについては、下記、参加者の声にも複数登場し、多くの参加者の関心を引いたようだ。

右と左に分岐するコース。どちらかをたどることになる
左の写真とは別に上記写真内の手前にある木の根のある段差を通るか避けるか、はたまたジャンプの着地手をどこに持っていくかなど、何通りものラインを見い出せる

オフロードバイクの販売スキルを高める座学講習

 座学講習は3つの講座を実施。「流行中のいま必要な学習 日本で成功するためのe-BIKEビジネス」では、e-BIKE事情に精通するジャーナリストの難波賢二さんから店舗が今後取り組むべきe-BIKEの活用方法が紹介された。まず「e-BIKEが自転車のジャンル全体で見た際のポジション」を切り口に、「人口」「予算」「リスク」という販売に欠かせない指標を他の自転車のアクティビティと比較。e-BIKEはロードレースなどの競技ジャンルと、クロスバイクを用いたポタリングジャンルの中間に位置し、今後ポテンシャルがさらに拡大するマーケットであると強調した。

e-BIKE事情に精通した自転車ジャーナリストの難波賢二さん。参加者に「自ら楽しんで、発信しましょう」と訴えかけた

 「ディスクブレーキ整備技術講習」では、油圧ディスクブレーキの整備方法がシマノセールスの秋丸湧哉さんより実演された。油圧ディスクブレーキの整備実演で時間が長く割かれたのはエア抜き方法について。オイルライン内に気泡が入ることで、ブレーキタッチは悪くなり、最悪の場合には十分に制動できなくなる恐れもある。フレーム内にホースを内装するタイプのフレームも増えつつあり、メンテナンスの難易度も上がっている。そこで、「STIレバーをさまざまな角度に変えながらエア抜きをする」、「キャリパーやホース、STIに振動を加えることで気泡の排出を促す」といったシマノ公式のエア抜き方法を秋丸さんが実演。また、シマノがレース現場で電動歯ブラシを用いて細かい振動を与えているという効果的な小ワザも紹介された。

油圧ディスクブレーキのブリーディングを実演したシマノセールスの秋丸湧哉さん

 「オフロードバイク販売スキルとレース&イベントの活用」では、ホダカの野中秀樹さんがオフロードバイクのセグメントを解説。マウンテンバイクにはトレイル、クロスカントリーといった複数のタイプが存在し、オフロードバイクに範囲を広げると、最近ではグラベルロードといった新しいジャンルも誕生している。野中さんは、まず多様化するラインナップを適切に理解することが大切だと語った。

ホダカの野中秀樹さん。多岐にわたるオフロードバイクのジャンルを正しく理解し、ユーザーが求める目的に応じて商品を提案することが重要と語った。

 オフロードバイクには、走行場所の問題があることも紹介。ユーザーは「どこを走ればいいのか、走ってはいけないのかが分からない」ことが障壁になっており、専用のパークやフィールドを知り、オフロードバイクに乗り続けるモチベーションを保つことが重要であると強調した。また、店舗としてイベントに参加することも有効だと説明。イベントに備えて新しい機材の投入を検討したり、必要装備を買い揃えたり、ユーザーの購買意欲の向上も期待できるという。野中さんは「オフロードバイクのジャンルと活用方法を理解することで、店として揃えるべき周辺部品や消耗品、また、実施するサービス内容も変わる。ユーザーと定期的なコミュニケーションを行って販売向上に繋げてほしい」と提案した。

参加者の声

 最後に参加者に聞いたイベントの感想を紹介しよう。

バイシクルパークO2 萩庭 彬智さん

 一昨年のイベントも参加しましたが、MTB専用コースを走行した経験は、実際に接客時にお伝えすることができ、販売に役立っています。今回は、座学講習を受けて、購入後のメンテナンス、遊ぶ場所が重要であることを再認識しました。店舗に近くにも遊ぶ場所はあるのですが、その場所を教えるだけでは、お客さんも不安でしょうし、スタッフが引率してライドの機会を提供できたらいいのかなと考えたりしました。新型コロナが落ちついてきましたし、オフロードバイクのイベントにお客さんを連れ出したりして、販売促進につなげたいと思っています。

 
代官山モトベロ 堀井幸さん

 MTBに乗るのは今回が初めてですが、様々なメーカーのオフロードバイクを試乗して、乗り味の違いを知りました。当社で扱っていないメーカーのバイクもありましたので、これから導入を検討したいと思います。ライディングスクールは楽しく、プロライダーの走りは超人業でした。男女比でいったら、圧倒的に男性のほうが多い趣味だと思いますが、女性にも乗ってみてほしいですね。アクティブなスポーツが好きな女性にはいいかなと思います。インドア志向の女性にも継続して乗ってもらうには、どういったステップで馴染んでもらうかを考える機会にもなりました。今回の経験を通じてオフロードバイクの販売につなげられればと思っています。

 
レジャーハウス宮崎 西村征也さん

 なかなかプロライダーの方と一緒に走れる機会はないので良い経験になりました。MTBには何度か乗ったことがありますが、講習は受けたことがなく、乗車のポイントなどを教わり、とても勉強になりました。特にライン取りについては、MTBの楽しみを広げてくれることがわかり勉強になりました。今度、MTBでライドをする際に、教わったことを実践してみようと思います。

 
早坂サイクル仙台中央店 菅田純也さん

 今回のイベントで久々にMTBに乗りました。MTB歴は何十年にもなりますが、ライディングスクールでは新しい発見がありました。特にライン取りだけで楽しみ方が変わるのは勉強になりました。

 
セーフティショップおおしま 大嶋繁利さん

 これまで「移動手段が欲しいけど、ママチャリは嫌だ」という要望のお客様にe-BIKEを勧めて販売したことがありました。難波さんのお話ではレジャーとして訴求することが重要とありましたが、e-BIKEが増えて、ユーザーが知らず知らずのうちに私有地へ入っていってしまうなど周辺住民とトラブルになるのではないかという心配もありました。しかし、Google mapを活用し、簡単に走行可能な道を検索できることが今回の講義で分かりました。これからは移動手段としてだけではなく、アクティビティ用のツールとしてお勧めしていきたいと思います。これまでロードバイクのショップとして店舗を続けて10年、自ら遊ぶことが販売拡大につながることを身をもって知っています。これからはe-BIKEで沢山遊び、その楽しさをお客様に伝えていきたいですね。