2017.1.26
中高生の登下校時の安全確保などについて学ぶ「自転車通学の安全性向上を考えるセミナー」が12月10日、大阪市で開かれ、関西各地から中学、高校の生活指導の教員ら約40人が参加。講演やディスカッションを通じて、生徒の自転車事故を防ぐ具体的な方法や取り組みを共有した。「遅刻が減れば事故も減る」「レインコート着用100%で傘さし運転ゼロ」などユニークなノウハウも披露され、普段は生徒を温かく指導している先生たちが真剣なまなざしで“勉強”に励んだ。
セミナーは「自転車の安全利用促進委員会」が実施。講演では、自転車通学の交通安全指導のモデルケースとして、大阪府立槻の木高校(高槻市)の田中眞・生活指導主任が「学校現場でできること」をテーマに取り組みを紹介した。
同校では自転車の交通安全を推進するため、①遅刻指導 ②毎日の登下校時の校門指導 ③交通安全指導週間(春・秋)の実施 ④自転車整備チェック ⑤近隣での交通安全指導―の5項目に取り組んでいる。
遅刻減少が安全につながる理由について、田中先生は「ギリギリに登校してくる生徒は自転車ですごいスピードを出す」と説明。このため同校では、自転車で登校できる校門を1カ所に絞り、毎朝、教諭らが登校指導に立って、余裕ある登校と安全運転を呼びかけているという。
また、校内に「昨日の遅刻者数」という掲示板を設けて、遅刻防止を視覚的にもアピール。生活リズムが狂って遅刻が多くなる中間・期末テスト明けの時期には、全校で「遅刻防止キャンペーン」を行っている。そのうえで、年間3回の遅刻をした生徒には、20分早く登校させる「早朝登校指導」を実施し、生活習慣を改善させるという。
こうした取り組みにより、槻の木高校の1年間の遅刻者数は、平成19年度の延べ1079件から、27年度には延べ144件と87%も激減し、定時ギリギリの“駆け込み登校”もほとんどなくなったという。
また、雨天時のレインコート使用を励行するため、校内の自転車置き場の近くに濡れたレインコートを干すラックを手作りで新設し、登下校時の指導と合わせて傘さし運転を抑止している。
自転車事故への対策も工夫している。学校側が事故の原因を把握・分析できるよう、教室や保健室に「事故報告書」の用紙を置いて簡単に提出できる体制を整えた。こうして危険ポイントを把握し、春と秋の交通安全週間の頃には、学校近隣の交差点などに出向いて指導を行うという。
自転車の整備不良による事故を防ぐため、5月と11月には校内で自転車通学生の全員を対象に「自転車整備チェック」を実施。ブレーキやライト、リフレクター、空気圧などを検査している。
さらに今年6月には。500人を超える自転車通学者の自転車保険「全員加入」を達成した。
田中先生は、効果的な交通安全指導に取り組む心構えとして「厳しすぎる指導は“先生vs生徒”の対立構図になってしまう。生徒のためになることに進んで取り組み、『私たちのことを考えてくれている』と思ってもらうことが大切」と訴えた。
セミナーではこのほか、シマノ・サイクル開発センター自転車博物館(堺市)の長谷部雅幸事務局長が、全国の自転車通学の現状などを説明。事故原因は、中学生の72.0%、高校生の68.9%が何らかの法令違反によることや、調査を実施した中学、高校の半数以上で生徒が自転車事故を起こしていたことなどを報告した。
生徒が加害者となる事故の主な原因は、1位が「安全不確認」(急な進路変更)で36.0%、2位が「舗道上での歩行者との接触」で28.0%、3位が「一時不定止」で17.3%―などとなっている。
自転車ジャーナリストの遠藤まさ子さんは、全国各地の学校における自転車通学指導の実践例を紹介。大阪府立北摂つばさ高校では、近隣の自動車学校と茨木市、大阪府警と共同で「自転車運転免許証講習会」を開催し、学校外の団体・機関も巻き込んで交通安全への取り組みを盛り上げている。仙台市立高砂中学校では、生徒主導の「自転車委員会」を設置し、自転車通学の安全確保を生徒が主体的に考えているという。
また遠藤さんは、自転車の定期メンテナンスを奨励している学校は28.6%にとどまるというデータを紹介し、「自宅で自転車メンテナンスの仕方がわからない人が多く、学校での対応が求められている」と指摘。さらに「事故が起きにくい自転車を選ぶ」ことの大切さを訴え、自転車安全基準に適合したことを示す「BAAマーク」が付いた自転車の推奨などを例に挙げた。
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