2024.2.21
山道を駆けるイメージが強いマウンテンバイク(MTB)ですが、家の近所に山がない…という方も多いのではないでしょうか。筆者もその一人で、なかなか山やフィールドにMTBを持って出かけられません。しかし、シクロクロスレースに出場してみる手があります。実は都市部でも多く開催しているので、家にMTBを眠らせている人は出場してみてはいかがでしょうか。
シクロクロスといえば、ロードバイクに似た風貌でありながら、細身のブロックタイヤやドロップバーを装着したバイクを用いる競技です。乗ったり担いで走ったり、シケインと呼ばれる段差をジャンプして超えたりという、観ても出場しても楽しいレース。
カテゴリーが充実していることも特徴で、イベントにもよりますが資格保持者のみが出場できる最上級カテゴリーのE1から、初参加でもOKなE4、年代別のマスターズなど、脚力や年齢にあわせて選べる設定が用意されています。
上から2番目までのカテゴリーはNGですが、それ以外はフラットバーでの出場がOKでMTBももちろん大丈夫です。よりMTBの方がタイヤが太く、悪路に強いため、砂浜や泥のコースではシクロクロスバイクより有利とも言われています。
シクロクロスレースは河川敷や砂浜、公園の地形を利用してコースが作られることも多く、東京の稲城や、大阪の堺など比較的都市部から近いエリアでも開催されています。山に行かなくてもオフロードをMTBで走ることができるわけです。しかもレースとくれば俄然気合が入ってモチベーションが高まりますね。
ということで、家からも1時間以内のロケーションで開催した「シクロクロス千葉2023-2024」に参戦してきました。千葉市の千葉ポートパークの公園と砂浜を舞台としたレースです。カテゴリーはMM35(35〜39歳までの男性)です。
シクロクロスはスタートラインに並ぶ前、招集が行われます。自分のゼッケンが呼ばれるとコースインができ、ラインに順番に並ぶことができます。一方、招集がかかった時にその場にいないとコースインの順番をスキップされます。それだけ並ぶ順番が結果に影響を与えると言っても良いでしょう。全日本選手権などのレースでは、前年の順番で若いゼッケンが与えられて、より前方からスタートできるようになっています。
一方で例外があり、MTBを含むフラットバーは必ず最後尾からのスタートです。レース直後はかなりの勢いになるため、車種のジャンルが違うと詰まってしまう可能性があるためです。私もレギュレーション通りに最後にコースへと入り、出発の号砲を待ちました。
いよいよレースがスタートすると、軽やかなシクロクロス勢はかっ飛んで丘を駆け上っていきます。私はというと車体が重いMTBのため少々で遅れる展開に。しかし、テクニカルなコーナリングが続く林のエリアでは徐々に差を詰めることに成功。いざ、逆転を期待して、有利と言われた砂浜へ突入! したのですが、そんなに甘いものではなく、タイヤが太いからと言って砂が深いビーチを乗って速く走れるわけではありません。時折バイクから降りて押して走ったり、ちょっと頑張って乗ってみたり、四苦八苦しながら競技時間の30分を終えました。
結果はなんと2位表彰台! というのも、MM35は3人のエントリーだったので、完走すれば入賞は確実でした。しかし、最後は3位の選手とデッドヒートを展開することができ、とても楽しい時間を過ごせました。タイヤを滑らせないように、常にトラクションをかけて前に進めるように、と多くのことに集中しなければならないシチュエーションはオフロードのレースならでは。転んでも地面がフカフカなので、大した怪我にもなりません。
また、会場には熱い観客がたくさん来場しており、「MTBだから砂浜もライドしよう!」とか、「MTBでもシクロクロスバイクを抜けるよ!」などの応援(ガヤ)もいただき、苦しいと楽しいが入り混じった感情で走り続けることができました。これもシクロクロスイベントの特徴です。
もしシクロクロスの上級カテゴリーでトップを目指すのであればMTBではスペック不足でしょう。しかし、レギュレーション上でも参加OKですし、十分に魅力を堪能することができます。山がないから走れない、というのは本当にもったいない。都市部にお住まいでMTBをお持ちの方でしたら、シクロクロスイベントに出場するという選択肢を検討してもいいのではないでしょうか。
10代からスイスのサイクルロードレースチームに所属し、アジアや欧州のレースを転戦。帰国後はJプロツアーへ参戦。引退後は産経デジタルが運営した自転車専門媒体「Cyclist」の記者、編集者として自転車やアイテムのインプレッション記事を担当した。現在はYouTubeチャンネル「サイクリストTV」でナビゲーターを務めるほか、自治体の自転車施策プロデュース業務を担当。
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