東京から茨城・大洗まで1泊2日の「あんこうライド」へ 自転車旅の魅力とノウハウロードバイクでツーリングに挑戦しよう<3>
「自転車で旅をしてみたい!」。サイクリストなら誰しもが考えたことがあると思います。現在、ロードバイクなどの機材やインフラも多様化し、速く走る以外の楽しみも増え、ツーリングに挑戦するハードルも下がってきました。今回は東京から茨城県・大洗までのライドレポートを通して、1泊2日の小旅行のノウハウをお届けします。

目的地と距離を決めよう
旅は目的地を決めることから始まります。自身の脚力で走れる距離を設定する必要もありますし、持っていく装備品も変わってきます。次に大事なのは旅先で何を楽しむか。旅へのモチベーションを高めるうえで“ご褒美”は欠かせません。温泉やグルメなど、旅先でしか得られない体験はその代表格です。筆者が今回のツーリングを実施したのは1月下旬。「せっかくなら冬の味覚や温泉を味わいたい」と目標を定め、計画をスタートしました。
想定した期間は1泊2日、東京を起点に計画を立てます。まず箱根を検討したのですが、以前の東海道の旅で通っていたので今回はパス。山梨や長野方面も考えましたが、山間部ではこの時期路面が凍結する恐れがあるため避けることにしました。
→ロードバイクで東海道中膝栗毛!
前編:https://www.sbaa-bicycle.com/article/6776
後編:https://www.sbaa-bicycle.com/article/7350
そこで、比較的路面凍結などのリスクも低く、自走であまり訪れたことがない茨城エリアを目指すことに。「この時期の茨城の名産はあんこう鍋だ!」と閃き、大洗町を目的地とすることにしました。
東京からの距離はおよそ160kmほどです。朝の明るいうちにスタートして、日暮れ前までの10時間以内で到着する見込みを立てました。早朝や日暮れ後の暗い時間帯での走行も問題はないのですが、視認性の低下や気温差の影響が大きいことを理由に今回は避けることにしました。走行時間、必要な装備品、自身の体力などを鑑みると1日で走り切れる最大距離がおのずと見えてきます。コツは時間的にも体力的にも“ゆとり”を持った目標を設定すること。無理のない範囲で目的地を決めるようにしましょう。
「サイクリストにやさしい宿」を活用しよう
茨城県を目的地にした理由がもう一つあります。茨城県では「サイクリストにやさしい宿」という自転車愛好家向けの施策が行われており、サイクリストが快適に過ごせるサービスを提供している県内宿泊施設を認定しています。
サイクリストにやさしい宿 ⇒ https://cycling.pref.ibaraki.jp/inn/
【施設認定条件】
サイクリストを歓迎する施設であることを前提に、以下の条件をすべて満たす宿泊施設。
- 安全な自転車の保管場所がある
- チェックイン前
- チェックイン後のフロント等で手荷物の預かりが可能
- 洗濯が可能(近隣のコインランドリーの案内でも可)
- 自転車宅配の受取
- 配送(配送業者の案内でも可)が可能
- スポーツバイク対応の空気入れや工具の貸し出しなど
なるべく最低限の荷物や装備で動きたいサイクリストにとってはとても便利な施策ですね。何より、歓迎されているので心理的なハードルがぐっと下がるのは魅力的です。
ライド時間を楽しもう
今回も友人の宮崎君と2人での旅となりました。彼のロードバイク歴もそろそろ10年。レースやロングライドイベントなどにも参加してきましたが、ここ数年は旅やツーリングの楽しさに目覚め始めています。
→宮崎君の過去記事はこちら
よく2人でライドするのですが、公道での並走は禁止されていますし、会話するにも大きな声で話さないと風でかき消されてしまいます。そこで、今回は新たにサイクリング用のインカムを導入しました。ヘルメットに取り付けるタイプで、デバイス単体でペアリングが可能なモデルです。これにより路上で縦に並んで走っていても会話できるので、雑談や流れる風景について、また右左折や停車時などの注意喚起のコミュニケーションにも活用できます。複数人でのツーリング時に利便性を向上させる新しいアイテムとしておすすめです。

旅のスタイルを決めよう
目的地が決まり、走行時間や必要な装備が見えてきました。二人それぞれ異なるスタイルでツーリングに臨みます。筆者はクロモリのフレームで、ダボ穴を利用してキャリアを装着し、パニアバッグを搭載した純ツーリングバイクを用意。ハンドルバーバッグも取り付け、1泊2日の旅に必要なストレージは十分に確保しました。
また、服装はあえて普段着で臨むことにしました。パーカーにジーンズ、スニーカーという街乗りスタイルです。途中、立ち寄りスポットや休憩時の機動性も高いですし、気軽に乗り降りができます。普段はいわゆるロードバイク向けのウェアを着ていますが、お店に立ち寄ったりする際には心理的に普段着のほうがハードルは低いですね。

一方の宮崎君はロードバイク然とした仕様です。近代的なカーボンロードバイクに、最低限ライドに必要な装備を装着。小ぶりなハンドルバーバッグや、ワイヤーを締めこんでホールドするケージなど、スマートにまとめています。目的地で着用する洋服などは予め宿泊先に配送することで実現したミニマムスタイルです。身に纏うウェアはサイクリング用のもので、風でもバタつきづらく、防風性と透湿性を兼ね備えた仕様です。

宮崎君の愛車と装備。ロードバイク然とした装備とウェアです
どちらのスタイルもメリットとデメリットはあります。筆者のスタイルは、手持ちの荷物を多く持って移動できるため、休憩時に使いたいアイテムがある場合に便利です。一方で重量がかさむため、漕ぎ出しや坂道が大変になることとトレードオフです。宮崎のスタイルはライドの快適さに振っているため、より速く軽快に走ることができますね。ただ、上級者寄りのスタイルなので、持参するアイテムの選別はよりシビアになります。

また、普段着スタイルは保温性が高く、低速で走っていても暖かいのが特徴です。一方で、汗をかくとなかなか蒸発しないで衣服にとどまるため汗冷えしやすいデメリットもあります。サイクリング用のウェアは防風性能や透湿性に優れて汗冷えしにくいのですが、保温性はあまり高くないものが多いです。どちらを選ぶかは旅のスタイルや移動の速度によるので、走る距離や時間、体力やスキルによって検討してみてください。
いざ出発!ナショナルサイクルルートを活用
出発は朝7時、東京の大手町からスタートです。ルートは前述の通りですが、これは最短ではありません。国道6号線をひたすら北上すれば大洗町にたどり着く最も距離が短いルートですが、国道は信号が多くストップ&ゴーが頻発。クルマの交通量も多く、ストレスが溜まることが予測されます。

今回引いたルートはざっくり記載すると「大手町→江戸川→利根川用水路→利根川→霞ケ浦→大洗町」というコース。かなりの割合で河川敷と湖畔沿いのルートを走っていきます。自転車専用ではないものの、信号はごくわずかでストップ&ゴーはほぼありません。霞ケ浦沿いの道は国が定める「ナショナルサイクルルート」の「つくば霞ケ浦りんりんロード」の一部であり、自転車用のサポートサインや休憩スポットが多いのでとても走りやすいのが特徴です。



もし皆さんが旅を計画する際には、距離だけでなく、どの道を通ると自転車にとって快適なのかをリサーチしてからルートを引くことをお勧めします。
走りやすいサイクリングルートのまとめはこちら
現地でしか味わえない体験をしよう
当日はシーズン最強寒波到来の影響で、風が強くてスピードが上がらずなかなか前に進まなかったり、休憩を多くはさんだりと難しいライド環境でした。しかし、筆者のパニアバッグが大活躍。体が温まってきた際、ウェアを脱いである程度ラフにバッグに突っ込んでもOK。財布や充電器などの取り出しも楽々でした。宮崎君はというと、普段通りライドに適した格好だったので、風にも負けずペダリングは軽快そのもの。体力もあまり削られなかったようです。それぞれの装備の良いところが生きたライドになりました。
大洗町に到着したのはちょうど日暮れ前。ゴール地点は磯前(いそさき)神社前にある、神磯(かみいそ)の鳥居です。海辺の岩場に建てられた鳥居に波しぶきがかかる姿は神々しく、パワースポットとして知られています。テラスのデッキがあり、自転車も持ち込み可能。記念撮影をして1日目のゴールとなりました。

宿泊する宿は前述した「サイクリストにやさしい宿」の一つ、「民宿 浜野屋」さんです。電話で事前に自転車で向かう旨を伝えていたこともあり、とてもスムーズに対応していただきました。自転車は敷地内の屋内に保管いただき安心でした。

汗を流したらいよいよお楽しみの夕食、大洗名物のあんこう鍋です。大洗近くには那珂湊(なかみなと)という漁港もあり、特にあんこうの水揚げで有名です。鍋にはあん肝、うまみの詰まった身、コラーゲンたっぷりの皮まで満載です。併せて地酒も堪能したり…日帰りライドでは味わえない、観光地ならではの体験を楽しめるのも1泊2日以上のライドの醍醐味です。

ロードバイクツーリングの魅力とは
翌朝、しっかりと朝食をいただき、浜野屋さんを出発。走り始めは意気揚々と走っていたのですが、この日も爆風のうえ、ルート上の8割が向かい風という地獄の展開に。輪行袋を持っていたので、「途中で電車に乗れば楽に帰れる…」という選択肢を頭の中で100回は考えたのですが、せっかくの旅なので自走することに。こうした状況に備えて、長距離のライドでは輪行袋を携帯しておきましょう。「いつでもエスケープできる」と思うと、気持ちに余裕が生まれます。往復のどちらかを輪行しても旅の醍醐味は感じられるものです。

東京まで戻ったあと宮崎君と旅を振り返ったのですが、やはり1泊2日で体験できる質と量は大きなものでした。ロードバイクであれば1日で100km移動も可能ですし、宿泊を伴えば行動半径も広がります。ライドに伴う運動だけでなく、非日常の景色や文化、グルメ体験は気持ちを豊かにしてくれるものです。普段の愛車にちょっとした装備と工夫を凝らすだけで楽しめるアクティビティなので、ぜひお試しいただければと思います。
松尾の装備と持ち物 一覧

■ウェア
・ジーンズ ・パーカー ・Tシャツ ・スニーカー ・グローブ ・ダウンベスト
■バイク周辺機器
・前後ライト ・サイクルコンピューター ・リアキャリア ・パニアバッグ ・ハンドルバーバッグ
■バイクパッキング
・財布 ・携帯工具 ・予備チューブ ・電動ポンプ ・ワイヤーロック ・サニタリー ・歯ブラシ ・洗濯ネット ・下着 ・Tシャツ ・充電器&充電ケーブル各種 輪行袋
★宮崎の装備と持ち物

■ウェア
・ジャージ ・ビブショーツ ・インナー ・ソックス ×2(足回りは原則ドライを目的とする) ・ヘルメット ・アイウェア ・ウィンドブレーカー ・ダウンベスト ・シューズカバー
■バイク周辺機器
・前後ライト ・サイクルコンピューター
■バイクパッキング
・財布 ・携帯工具 ・予備チューブ ・チューブレスリペアキット ・電動ポンプ ・Co2ボンベ ・シーラント対応ウェス ・ワイヤーロック ・サニタリー ・洗剤 ・制汗剤 ・歯間ブラシ ・痛み止め ・点鼻薬 ・洗濯ネット ・モバイルバッテリー(充電器兼用) ・マイクロUSB変換アダプタ ・輪行袋
■宿泊アイテム送付物
・現地行動着 ・アウター ・パーカー ・下着 ・靴下 ・スニーカー

10代からスイスのサイクルロードレースチームに所属し、アジアや欧州のレースを転戦。帰国後はJプロツアーへ参戦。引退後は産経デジタルが運営した自転車専門媒体『Cyclist』の記者、編集者として自転車やアイテムのインプレッション記事を担当した。現在は自治体の自転車施策プロデュース業務等を担当。
この人の記事一覧へ



