2022.5.18
マウンテンバイク(MTB)のプロフェッショナルがMTBにまつわる素朴な疑問に答えていく本コーナー。第27回は「走る前に知っておきたいMTBのチェックポイント」という質問にプロライダーの井手川直樹氏が答えていきます。
皆さん、こんにちは。プロマウンテンバイクライダーの井手川直樹(いでがわ なおき)です。
僕は子供や大人向けに、各地でマウンテンバイクのスクールも行っていますが、走る前には準備運動とバイクチェックの時間を必ず設けて、それぞれ自分のバイクをチェックしてもらうようにしています。
時間がかかる作業ではないので、皆さんも必ずやってもらいたい内容です。
タイヤの空気圧をチェックする習慣が無い方は、けっこう多いのではないでしょうか。そもそも、タイヤの空気が抜けるというイメージが無いかも知れません。実際にはタイヤの空気は自然に少しずつ抜けていくので、タイヤに適度な空気が入っているかは常にチェックが必要です。
正確にチェックする場合はエアゲージを用意しますが、乗車前の簡単なチェックとしては、タイヤを指で挟んでつまんでみましょう。つまんだ部分がくっつくようなら、明らかに空気圧不足です。空気圧が少ないとちゃんとコーナーを曲がれなかったり、パンクをしてしまったりと、大きなトラブルにつながる危険性があるので、必ず空気を足すようにしましょう。
タイヤの空気の重要性についてですが、自転車で地面と触れる部分はタイヤですから、タイヤの空気圧でバイクのコンディションや乗り味が全く変わってきてしまいます。僕たちプロライダーにとっては、空気圧が0.1違ってもコンディションや乗り味が変わるので、すごく重要視しているところです。毎回乗車前には必ず確認してセットアップしています。タイヤには最小と最大の空気圧がタイヤの横に表記されていますが、適正空気圧の範囲でも実際にどの数値が良いかは、乗る人の体重や好みによって変わってくるので、実際に走った感覚も含めて目安を決めておくといいでしょう。
自転車の前側から前輪を両脚ではさみ、ハンドルを左右に動かしてみましょう。両脚ではさんでいる前輪は動かず、ハンドルのみが動いて(回って)しまうようでしたら、ステムの固定が不足しています。しっかりとネジを増し締めして、簡単に動かないようにしましょう。正確には各部分のネジには締め付けトルク(強さ)の指定がありますので、適正な締め付けをおこなってください。
ハンドル部がしっかり固定されていないと、走行時のちょっとした段差でもハンドルが動いてしまう場合があり、とても危険です。
前後の車輪を固定している部分、クイックリリース式ならレバーが緩くない状態で、しっかりと固定側に倒れているかをチェックします。ねじ式やスルーアクスル式なら、指で回してみて、しっかり締まっているかをチェックしましょう。特にねじで固定するタイプは緩んでガタガタしても乗っていて気付きにくいので、一つひとつしっかりチェックしておきましょう。
スクールの参加者でたまにあるのが、会場までの移動で車輪を外してクルマに積んできて、走る時に正しくはめ直せていないケースです。車輪の固定がちゃんとしていないと、走っている途中にフロントホイールがガタガタしていたりとか、リアホイールがズレてほぼ取れかけてしまったりとか、そういったことが起こってしまいます。
ブレーキレバーを握って自転車を前後にゆすり、前と後ろのブレーキがそれぞれちゃんと働くかをチェックします。ありがちなのが、ブレーキレバーを引いてもグリップに当たってしまって、ブレーキがしっかりかからない状態になっているものですね。ワイヤー式だとワイヤーが伸びていたりとか、油圧ブレーキでもブレーキパッドが擦り減ってしまっていると、そういうことが起きます。
いざという時にブレーキがかからないのは、とても危険なのは言うまでもありません。走り出す前に、しっかりブレーキがかかることを確認しておきましょう。
これは追加のポイントなのですが、僕たち競技者の場合は走行前に、サスペンションのチェックも行います。サスペンションはエアー(空気)とオイルダンパーが組み合わされている物が多くなってきております。エアー式のサスペンションは少量のエアーを圧縮しており、190PSI(13.1bar)など、とても高圧になっているので、気温や気圧などの影響を受けやすいです。
例えば富士見パノラマといった山の方まで走りに行くと、自宅付近と気温が10℃以上違い、標高も1000mを超えてきます。気温や気圧が変わるとエアーの張り具合や、動作に影響のあるシール(ゴムや樹脂部品)の硬さが変わり、性能が変わってしまいます。フルサスバイク(前後にサスペンションがあるバイク)であれば、前後でセッティングを合わせてバランスを整える変更も必要ですね。
いかがでしょうか。内容としては少々おおざっぱに感じるかもしれませんが、最低限、走る前にチェックして貰いたいことを紹介しました。
チェックや調整に関しては、パーツの消耗チェックやネジのトルク管理など、細かくすればいくらでも必要な部分がありますが、自分で全て行うのは実際のところ難しいと思います。ですから自分でやる部分と、プロに任せる部分を切り分けておいた方が良いでしょう。
日々自分で行う部分としては、上記のチェックを乗車前に行うことと、乗車後に自転車をキレイにしたり注油したりすること。その上で乗る頻度にもよりますが、何も不調が無くても3カ月〜ワンシーズンに1度ほど、SBAA PLUS認定者が在籍するようなプロショップで、チェックとメンテナンスを受けるようにしましょう。そうすれば自転車のコンディションを、常に良好に保てます。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
稲城から高尾まで 都内サイクリングの定番コース“尾根幹”と+αのルート
2018/10/30
2017/08/29
ヒルクライムで好成績を出すのに、どんなトレーニングをしたらいいですか?
2018/02/23
2024/11/25
2024/11/22