2020.8.28
マウンテンバイク(MTB)のプロフェッショナルがMTBにまつわる素朴な疑問に答えていく本コーナー。今回は「マウンテンバイクのホイールサイズの主流は?ホイールサイズごとに何が違うのですか?」という質問にプロライダーの井手川直樹氏が答えていきます。
皆さん、こんにちは。プロマウンテンバイクライダーの井手川直樹(いでがわ なおき)です。今回は、近年めまぐるしく進化が続くMTBのホイールサイズについてお話します。
大人が乗るサイズのバイクを前提にお話ししますが、7〜8年前まではMTBのホイールサイズと言えば26インチが主流でした。
そこから29インチ、27.5インチといった径の大きなホイールが登場し、各メーカーの製品開発競争が激化していきました。その後クロスカントリーなどのエンデュランス系競技では主に29インチが使われ、ダウンヒルやエンデューロのようなグラビティ系競技では主に27.5インチが使われてきたという経緯があります。
ではなぜエンデュランス系では29インチが使われ、グラビティ系では29インチが主にならなかったのか。その理由の1つとして、製造の開発力がまだ追いついておらず、軽量で強い製品を作ることに時間がかかっていたということがあります。
実際、当時ワールドカップに行った際にテストされているバイクを見たり、選手から色んな話を聞いてみたりもしましたが、バイクに強い衝撃がかかるグラビティ系では開発初期の29インチホイールは強度が保てずホイールがたわんでスポークが押されてしまい、そのままタイヤを突き破ってパンクしてしまうという事例も多かったようです。
練習終了後のチームテントの裏側には、割れてしまったホイールが山積みになっていたのを見たこともあります。今だから話せる話ですね(笑)。
そして今では、エンデュランス系、グラビティ系を問わずほとんどの競技で「29インチ」が世界的なMTB競技のホイール径の主流となっています。新しく開発された製品は世界最高峰のレースシーンにおいてこうしたトライ&エラーを積み重ねた末に、我々のようなユーザーに完璧な製品として届くことになります。
ちなみに、昨年からダウンヒル競技では前後のホイールサイズを変える異形(マレット)バイクも増えてきています。…これはまたどこかでお話しましょう。
では結局のところ、ホイール径はどのサイズを選べば良いのでしょうか? それは、それぞれのサイズの長所と短所を理解したうえで、自分がどんな乗り方をしたいのかによって選ぶのが良いということになります。
ここで私が感じた29インチと27.5インチそれぞれの長所と短所を書き出してみました。29インチの長所の逆が27.5インチの短所となり、29インチの短所の逆が27.5インチの長所となります。
結果としては27.5、29インチとそれぞれ一長一短ですね。ただし、単純にホイール径が大きくなるほど凹凸を乗り越えるのは楽になります。
高さ10cmの段差を12インチのような小さなホイールで乗り越えるよりも、29インチのような大きなホイールで乗り越える方が衝撃も少なく楽に乗り越えられる、と考えると分かりやすいと思います。
ダートジャンプのように細かいアクションを楽しみたい人はホイールベースが短く扱いやすい26インチ。トレイルライドやファンライドを楽しみたい人は、操作が軽快で操る楽しさもあるマルチな27.5インチ。レースにも出るし、安定感と速さを求める走りをする人は29インチ、というふうに選ぶのが良いのではないかと思います。
また、用途だけではなくご自身の身長に合わせたホイールサイズを選択されることも大切です。フレームサイズによっても異なりますが、イメージとしては身長が170cm以上であれば29インチのMTBを選んで大丈夫だと思います。
ちなみに私は2019年シーズンのダウンヒルバイクは27.5インチ、エンデューロバイクは29インチを使用していましたが、2020年シーズンはダウンヒルバイクとエンデューロバイクの両方を29インチに変更しました。トータルで判断して29インチの方が速く走れるという判断になりました。
稲城から高尾まで 都内サイクリングの定番コース“尾根幹”と+αのルート
2018/10/30
2017/08/29
ヒルクライムで好成績を出すのに、どんなトレーニングをしたらいいですか?
2018/02/23
2025/01/29