2016.12.19
よく「輪行」して旅に行きます。自転車の車輪をばらして袋に詰めて、新幹線などに乗って目的地に行って、ツーリングする。二泊三日くらいで、手軽に楽しめます。
おすすめのツーリングスポットは、本州四国連絡道路である「しまなみ海道」です。瀬戸内海を見下ろしながら走れるサイクリングロードがあって、安全で風光明媚、初心者でも安心。米CNNテレビの世界7大サイクリングコースの一つになっています。
持ち運びできる自転車がなくても、こういったサイクリングロードにはレンタサイクルがありますので、借りてもよいと思います。ただし、良い道を快適に走る経験をすると、帰ってきてから、絶対自転車を買いたくなると思います(笑)。
レース用のロードバイクももちろんアリですが、初心者の方には難しいかもしれません。お尻が痛くなりますし、ドロップハンドルにも慣れが必要で、値段も高い。ですから、最初の一台はクロスバイクがお勧めです。価格が手ごろで、乗り心地が良く、適度にスピードが出て、距離も走れます。
私はそれに加えて、折りたためるタイプの自転車を通勤に使っています。会社では、「帰りに一杯」ということもあります。飲んだら当然自転車で帰るわけにはいきません。そのようなとき、自転車を折りたたんで持ち込み、電車で帰ることができます。ただ、車体が軽いものは値段が張ってしまいますし、安価なものは重量があり、持ち運びづらく、スピードも出ないので通勤にはあまり向いていません。
まずは健康面。これは私個人の感想ですが、最も大きな効果は、痩せたことです。自転車通勤を始めてから、体重が84kgから67kgへ、17キロ減りました。それに伴い、血糖値、コレステロール値、中性脂肪、尿酸値等々、健康診断の数値もすべてC判定からA判定になりました。
そして「2つのエコ」です。まず、自転車で移動すれば、電車代もガソリン代もかからないので「エコノミー」。体はやせて財布が太るのですから、いいことずくめです(笑)。
そして、車の代わりに自転車に乗れば、化石燃料の消費を減らし、CO2排出も減らすことができますので「エコロジー」です。
私が自転車通勤を始めた頃に住んでいた所は、会社まで片道12.5キロくらいでした。だいたい15km前後が、健康や経済的なメリットを得つつ、無理なく実行できる、最もバランスの良い距離なのではないかと思います。とくに都心だと、電車より早く着くことも多い距離です。
「無理をしないこと」です。たとえば雨の日は、服が濡れて不愉快ですし、視界も悪く、路面もすべりやすい。雨や雪、強風などで「ちょっと乗りたくないな」と思ったときは、車や電車を使えばよい。
無理をしなくても十分に効果はあります。
そして、当然のことですが、長く続けるには事故を起こさないこと。信号無視、一時停止無視、右側通行などの交通違反を絶対にしない。道路交通法を守っていれば、そうそう事故は起こりません。スポーツ用自転車にかぎったことではありませんが、必ず身につけておくべきことです。
スポーツ用自転車に乗る方は、いわゆるママチャリに乗る人と比べると、交通法規を守る方が多いと思います。しかし、交通法規への理解が進む以上のスピードで、スポーツ用自転車の普及が進んでいる状況があります。
スポーツ用自転車に長く乗っている人は、自然に交通ルールを守るようになります。なぜなら、決まりを守った方が圧倒的に安全だから。本来、小学校で道路標識の意味、左側通行など車道での走り方を教えなくてはならないのですが、日本では、13歳未満の子どもは自転車で歩道を走ってよいということになっていますから、左側通行の原則を小学生の時に教えられず、何も知らないまま大人になってしまうのが現状です。
まずヘルメット。自転車でのヘルメット着用率は低いですよね。しかし、交通事故で亡くなる方の過半数は頭部損傷で、多くは車とぶつかった衝撃ではなく、投げ出され、アスファルトに頭を打つことによって重大な事故となります。ヘルメットの重要性を多くの人に知っていただきたいと思っています。
次に、赤色フラッシャー。前照灯をつけることは法律で決まっていますが、リアにはリフレクターのみという方が多いでしょう。LEDのリアライトをつけておけば、後ろを走る車からの視認性が高くなります。とくに通勤で使う場合、帰りが夜という場合も多いと思いますのでつけておきたいですね。
それに加え、私はバックミラーを取り付けています。車道を走る際、右後方の様子が見えることで安心できます。たとえば路上駐車の自動車を避けるために、車道の真ん中に出るとき、後ろの様子を確かめるのに有効です。
現在、粗悪な格安自転車もたくさん販売されています。しかし、店頭で新品の状態で売られているものが、安全性に不安があるものであるか否かは、一般の方にはわかりません。自転車の国際規格であるISO4210(自転車の安全要件)よりも厳しいスポーツ用自転車安全基準(SBAA基準)をクリアした「SBAAマーク」が貼付されている自転車を選ぶのも一つの方法です。
SBAAマークの検査を実際に見たことがあるのですが、フレームに衝撃を与える試験や、フレームを機械でねじったりする試験を十万回も繰り返す。粗悪なフレームだと、SBAA基準の数十分の一の回数で破断してしまうそうです。
ただし、スポーツ用自転車の場合、ひとつ悩ましい問題があります。スポーツ用自転車はフレームや各種パーツ、ホイールを単体で買って取り付ける場合も多い。パーツ買いの場合、完成車体に貼るSBAAマークを付けることができないのです。そうなると、整備等を行うショップの重要性が増すことになります。
本来、自転車を購入したショップが「主治医」のように整備するのが理想だとは思います。しかし、整備士が常にいて、しっかり整備してくれる店ばかりではありません。その意味で、自転車協会で作られたSBAA PLUSの資格認定制度は意義深いですね。ショップ選びに迷ったら、SBAA PLUS認定店に持ち込むのも良いと思います。
乗り手の皆様には、何か不具合があって、自分で直せなければ、すぐにショップに持っていくという習慣をつけてほしいですね。また、チェーンが伸びたりタイヤがひび割れたり、自転車の部品は少しずつ劣化していますので、定期的に全体をみてもらうオーバーホールが、自動車の「車検」のように習慣づけられればよいと思います。しっかりメンテナンスした自転車は、新品のようないい走りをしてくれます。これは体験してもらえば、すぐにわかることです。
思い切って「予算より高いかな」という自転車を買ってみて下さい。きっと良い自転車に出会えます。わからないこと、不安なことは、販売店にどんどん聞いてみましょう。今までの自転車から乗り換えた瞬間、その速さ、快適さ、楽しさに気づくと思います。自分の足で風を切って走る感覚は、他に代えがたいもの。
暑いときに汗をかき、寒いときでも自転車をこぐうち、次第に温かくなってくる。これは、電車や自動車、スポーツジムのエアロバイクでは味わえない感覚であり、いわば「人間性の回復」です。私も、よい自転車で、安全に、快適に走る体験のすばらしさを、これからも伝えていきたいと思います。
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【疋田さんよりコメント】
自転車に乗ると、多くの「再発見」があります。住み慣れた街並み、普段見落としていた身近な自然、移り変わる季節の変化に改めて気付かされ、胸が躍ります。そして、ほとんどの日本人は、子どものころに自転車に乗っていた時期があります。かつて自転車少年・自転車少女だった「自分」を再発見することにもなるでしょう。多くの人に、この「再発見」の楽しみを知っていただきたいと思います。