2024.3.22
ライド中の機材トラブルで「最大級」のものといえば、ディレイラーハンガーが曲がり、気付かずにペダリングをしたためにリヤディレイラーがリヤホイールに巻き込まれ、リヤディレイラーがもぎ取れると同時にリヤホイールとフレームも破損する、という“悪夢のトリプルコンボ”です。恥ずかしながら筆者も過去に一度やってしまったことがあります。そのときはもう、膝から崩れ落ちました…。
順序だてて説明しましょう。リヤディレイラーは、ディレイラーハンガーという部品を介してフレームに装着されています。フレームとディレイラーハンガーが一体化しているモデルもあります。
しかしこのディレイラーハンガーは、ちょっとしたことですぐ曲がってしまうものなのです。立てかけていたバイクが風でパタンと倒れただけで曲がってしまうことも。これには理由があります。バイクが右側に倒れると、リヤディレイラーが最初に地面にヒットします。その衝撃がフレームに直接伝わってフレームにダメージが及ばないようにするため、あえて曲がりやすく作られているのです。いわゆるヒューズのような役割をしているわけですね。
ところがこのディレイラーハンガーの曲がり具合はなかなか気付けないもの。少し曲がったぐらいでは、「変速の調子が悪いかな?」と感じるくらいで走れてしまいますから。しかし、ディレイラーハンガーが曲がってしまうと、本来真っ直ぐであるはずのリヤディレイラーが内側に傾きます。その状態でロー側に変速していくと、リヤディレイラーとリヤホイールのスポークが接触してしまいます。
そこで「カラカラカラ……」という異音に気付いてペダリングを止めれば被害は最小限で済みますが、勢いが付いていた場合は、リヤディレイラーが回転しているスポークに巻き込まれてちぎれ、吹っ飛んだリヤディレイラーがフレームのシートステー部分に激突します。
そうなると、リヤディレイラーはひん曲がってもはや再起不能。ホイールはスポーク交換が必要です。フレームは、傷がつく程度で済めば不幸中の幸いですが、最悪の場合はシートステー破損でオシャカ。悪夢以外の何物でもありません。
というわけで、リヤディレイラーに衝撃が加わった場合は、走り始めるときや休憩で止まったときなどにバイクを後ろから見て、小まめにハンガーが曲がっていないか確認するようにしてください。もし走れないほどハンガーを曲げてしまった場合、なんとか修理して走れるようにしなければなりません。
その方法はシンプルなもの。リヤディレイラーを持ってグイッと真っ直ぐにするのです。しかし、できるだけ慎重に。強引に曲げ直すとディレイラーハンガーがボキッと折れてしまうこともあります。折れたらもうお手上げ。チェーンを一旦切り、リヤディレイラーを外した状態でチェーンリングとスプロケットを直結し、シングルギヤにしてゆっくり走って帰るしかありません。
「力業で曲げ直す」という原始的な修理方法ですが、これはあくまで応急処置です。ディレイラーハンガーはアルミ製でデリケート。一度変形したら、その部分の強度は低下します。曲げ直して真っ直ぐになったとしても、壊れやすくなってしまいます。できるだけ早くショップで見てもらいましょう。
また、ディレイラーハンガーはフレーム毎に専用設計になっていることが多いので、予備として新品のディレイラーハンガーを購入しておくことをお勧めします。
自転車ライター。大学在学中にメッセンジャーになり、都内で4年間の配送生活を送る。現在は様々な媒体でニューモデルの試乗記事、自転車関連の技術解説、自転車に関するエッセイなどを執筆し、信頼性と独自の視点が多くの自転車ファンからの支持を集める。「今まで稼いだ原稿料の大半をロードバイクにつぎ込んできた」という自称、自転車大好き人間。
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