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ロードバイクのチェーンへの注油方法と注意すべきポイント

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自転車のメンテナンス特集<4>
ロードバイクのチェーンへの注油方法と注意すべきポイント

 ロードバイクに限らず、自転車を走らせるうえで重要な役割を果たしているパーツがチェーンです。乗り手の動力をギアへと伝え、変速を担うチェーンは常に負荷がかかり続けています。もし、油が切れてしまうと過度に摩耗したり、最悪の場合は走行中に切れてしまうことも。スムーズな走行と変速ができるよう定期的に注油しましょう。今回はその方法と注意点をご紹介します。

記事の内容

チェーンに注油が必要な理由

 ロードバイクのチェーンは、プレートとピン、ローラーで構成され、連なって1本となっています。このプレートとピンの間に、各ギアの歯車の歯が食い込むことで動力を生みだしています。当然、歯との接触部分には相当な負荷がかかりますし、ローラーは限りなくスムーズに回転できるのが理想です。そこで必要なのが油です。

 油が切れたチェーンは、金属同士の摩擦による異音を発生します。「ギーギー」「ギコギコ」という音を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。音だけではなく、オレンジ色の錆が出現することも少なくありません。また、摩擦を軽減できなくなるため、プレートやローラーが摩擦によりすり減るスピードが上がったり、伸びてしまったりします。“金属のチェーンが伸びる”ことが想像し難いと思いますが、長さを新品と比較すると半コマほど長くなっていることも珍しいケースではありません。これでは適切な変速や軽快な走りを実現できません。

油(オイル)の種類とは

 チェーン用の油は「チェーンオイル」と呼ばれ、スポーツ用自転車店で販売されています。主に晴れの日に使用するドライタイプや、雨天での走行でも粘度が高くて落ちづらいウェットタイプなどがあります。ドライタイプは比較的さらっとしており、耐久性は高くありませんが汚れづらいのが特徴です。ウェットタイプは長くチェーンにオイルが留まることが利点ですが、砂やホコリを吸着して汚れやすい特徴もあります。走るシチュエーションに応じて選択すると良いでしょう。

ドライタイプかウェットタイプかはパッケージに記載がある場合がほとんど

チェーンオイルを差すタイミング

 前述の通り「ギーギー」という音がチェーンから激しく鳴っていたら今すぐに注油しましょう。チェーンだけでなく、リアのスプロケット(歯車)やクランクのチェーンリングにもダメージが及んでいます。早ければ早いほど良いです。音が鳴ってからでは遅いと思っても過言ではないでしょう。

指で軽く擦ってもオイルがほぼついていない状態

 使用しているオイルのタイプや、乗る頻度によって判断が異なるのですが、ウエスや指で上下部を軽く擦ってみて、オイルがほとんどつかない場合はそろそろ不足していると思っても良いでしょう。※テフロン系などで粘度が極端に低いオイルは当てはまりません。

チェーンオイルを差す前にやるべきこと

 チェーンオイルを差す前に、可能であればチェーンの汚れを落としましょう。簡単な方法としてウエスでチェーンの上下左右を拭き取ることです。ウエスがなければ古いタオルなどでも構いません。この際、クランクからチェーンが脱落しやすいので、直す方法はこちらの記事をご確認ください。

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 スプレータイプのパーツクリーナーを使うとさらに効果的です。脱脂効果が高く、古いオイルと共に頑固な汚れも落とすことが可能です。ホームセンターでも販売されています。スプレータイプなので勢いよく噴射できるのですが、汚れを撒き散らすことにもつながりますので注意が必要です。リムブレーキの場合はリム面に、ディスクブレーキの場合はローターに付着するとブレーキが効かなくなります。

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パーツクリーナーはホームセンターなどで購入可能です

 ウエスをあてがって、周囲に飛び散らないよう注意しながら噴霧して汚れを落としていきましょう。

汚れを周りに撒き散らさないよう、ウエスなどで養生しましょう

 そのほか、多数の回転ブラシを内蔵した専用の工具と液体ディグリーザーを使って清掃する方法もありますが、普段のメンテナンス段階から毎度実施する必要はないでしょう。

チェーンオイルの差し方

 チェーンが綺麗になったらいよいよ注油です。この時、パーツクリーナーやディグリーザーが完全に蒸発してから行うようにしましょう。新しいオイルの溶解を防ぐためです。

 注油のポイントとしてはチェーンの外側ではなく、内側をメインに差すことです。前述の通り、ギアの歯が接触するのはチェーンの内側です。特にピンとローラー部に摩擦が発生しますので、ここに注油すると良いでしょう。チェーンの側面のプレートに注油しても効果は少ないので注意しましょう。

 スプレータイプの場合は、パーツクリーナー使用時と同様に、周りに飛び散らないようウエスをあてがいながら、チェーンの内側を狙って吹きかけましょう。

パーツクリーナーと同様に、周りへの飛散に気をつけましょう

 点眼タイプの場合、一コマずつ差していくのがおすすめです。チェーンに沿ってボトルを押しながらバーッと塗布しても良いのですが、オイルが多く出過ぎて無駄になってしまいます。一滴、一滴ていねいに垂らしていくと適量で済みます。なお、チェーンを繋いでいるコマが必ず1コマあり、見た目が他のコマと異なりますので目印にすると良いでしょう。ロードバイクの場合は110〜120コマほどありますが根気強く頑張りましょう!

点眼タイプは一滴ずつ垂らしていくと無駄がありません

 一通り注油が終わったら、クランクを逆回転させてオイルを馴染ませましょう。ここで塗布量が多いと勢いあまってオイルが飛び散り、フレームやホイールを汚す可能性もあるので注意が必要です。

 最後にプレートの側面を軽くウエスで拭き、余分なオイルを取り除いたら作業終了です。

 今回は簡単なチェーン清掃の方法と注油方法をご紹介しました。なお、さらにピカピカに清掃して、適切なオイルを使いたい場合には工具や知識が必要になりますので、プロショップで作業をお願いした方がよいでしょう。チェーンは自転車の生命線です。小まめに気を配ってメンテナンスを怠らないようにしましょう。

文: 松尾修作(まつお・しゅうさく)

10代からスイスのサイクルロードレースチームに所属し、アジアや欧州のレースを転戦。帰国後はJプロツアーへ参戦。引退後は産経デジタルが運営した自転車専門媒体「Cyclist」の記者、編集者として自転車やアイテムのインプレッション記事を担当した。現在はYouTubeチャンネル「サイクリストTV」でナビゲーターを務めるほか、自治体の自転車施策プロデュース業務を担当。

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