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ロードバイクのディスクブレーキで“やってはいけないこと”3選

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ロードバイクのディスクブレーキで“やってはいけないこと”3選

 ロードバイクの標準搭載ブレーキがディスクブレーキに変わりつつあります。安定した制動力を生み、また、油圧タイプだと少ない握力でもきっちりとブレーキを効かせることができるため多くのメリットがあります。しかし、とても繊細で注意すべきことが多いのも事実。“やってはいけないこと”を覚えて、安心してディスクブレーキを扱えるようにしましょう。

記事の内容

ディスクブレーキのメリットとは?

 旧来のロードバイクでは、ホイールのリム面にゴムなどの素材でできたブレーキシューを当て、その摩擦で制動力を発生させて止まっていました。一方、ディスクブレーキはその名の通り円盤状のローターがホイールの中心部に装着され、フロントフォークに装備されたキャリパー内のパッドを押し付けることで制動力を生みます。パッドは金属を固めた素材でできており、パッド(金属)×ローター(金属)によって、リム(アルミorカーボン)×シュー(ゴムなど)よりも強い力で止まることができるのです。

 従来のリムタイプのブレーキであれば雨が降った際、リムとシューとの間に水の膜ができて制動力が落ちてしまいました。一方のディスクブレーキは安定して制動力を生みます。また、前者の場合はシューだけでなく、リムも摩擦によって削るため、長期間使うことが困難でした。特にカーボンリムの場合は高価なので、なかなか交換ができません。しかし、ディスクブレーキにおいては、ローターも削れることは間違い無いですが、リムの交換よりは手軽で安価に済みます。

 また、長い下りでブレーキングをかける際、リムであれば摩擦熱で効きが悪くなったり、カーボンリムやチューブが破損する恐れもありました。ディスクブレーキであればその許容温度が高いため、比較的ブレーキをかけ続けてても安定した性能を発揮できるでしょう。

ディスクブレーキでやってはいけないこと①

 メリットばかりのディスクブレーキですが、いくつか“やってはいけないこと”が存在します。まずは、絶対にオイルやグリスはローターとパッドにつかないように細心の注意を払ってください。

グリス類の塗布も絶対NGです

 前述の通り、ローターとパッドの摩擦によって制動力を発生させます。潤滑効果のある油脂類を付着させると、当然摩擦力が低下し、ブレーキが効かなくなります。「ブレーキが効きすぎるから」という理由でオイルを吹きかけた、という事例を耳にしたことがありますが言語道断です。命に関わることなので絶対にやめましょう。

 もし、油脂類がローターに付着してしまった場合は、油脂類を溶解させるディグリーザー(パーツクリーナー)や中性洗剤で落としましょう。パッドに関しては染み込む性質があるため、油を完全に落とすことは難しいようです。消耗品ですので、早めに交換されることをおすすめします。

右から新品のパッド、オイルを吸ったパッド、摩耗したパッド
ローターも消耗品です。左が新品で右が使い古したモノ

ディスクブレーキでやってはいけないこと②

 ディスクブレーキはとても繊細です。特に横からの衝撃や圧力に弱く、曲がりやすいので、ぶつけたり押されないように注意しましょう。

横方向の圧力に対して歪みやすいので扱いに注意しましょう

 ディスクブレーキのローターは、キャリパー内の数ミリの範囲の中に収まり、さらに狭いパッドの隙間を回転しています。もし少しでも歪んでしまうと、パッドにローターが擦ってしまい、シュッシュッと音が発生します。少しの歪みであれば音だけで済みますが、大幅に曲がってしまうとブレーキがかかってしまい、快適に走行ができなくなります。

 もし曲がってしまった場合は、修正工具があるため、自転車ショップで直るケースもあります。ただし、修正にも限度があるため、交換は早いタイミングで実施しましょう。ローターも消耗品のひとつです。

 輪行や車への積み込みの際には特に注意したいですね。

ディスクブレーキでやってはいけないこと③

 最後に、ホイールを外している間はブレーキレバーを握らないようにしましょう。こちらは油圧タイプに限りますが、パッド同士がくっついてしまい、ホイールを装着することが難しくなってしまいます。

ローターが入るスペースの正常な状態

 どういうことか説明します。ホイールを外している=キャリパー内にローターが無い状態が生まれます。そこでブレーキレバーを握ると、パッドがローターを挟もうと動くわけですが、そこにローターはありません。パッドは油圧ピストンによって動いているのですが、ピストンはローターを挟む応力を得られずに出っ放し状態になってしまい、パッド同士がくっつく状態が発生します。すると、ホイールを装着する際、キャリパーの間にローターを入れる隙間を無くし、装着することが不可能になります。

ローターが挟まっていない状態でレバーを握り、パッドが出てしまっている状態

 ホイールを外した際、ローターの代わりに差し込むパッドスペーサーという部品もありますので、輪行する方は欠かさず持っておいた方が良いでしょう。

赤いパーツがパッドスペーサー

 以上が、ディスクブレーキで“やってはいけない”基本的な動きです。その他、ブレーキホース内で発生した“エア噛み”を直したり、定期的にオイルを変えたりと注意すべき点はありますが、専門知識を必要とするのでプロショップにお任せするのがおすすめです。私もリムブレーキ時代は自分でメンテナンスをしていましたが、ディスクブレーキになってからは完全にお店に任せています。

 便利になった分、注意すべきことや工賃は以前より多くなりましたが、快適にライドするためには安全が第一ですし、ブレーキが最も大事なパーツであることは間違いありません。まずは今回ご紹介した基礎知識をベースに、安心して楽しめるサイクルライフをお過ごしください!

文: 松尾修作(まつお・しゅうさく)

10代からスイスのサイクルロードレースチームに所属し、アジアや欧州のレースを転戦。帰国後はJプロツアーへ参戦。引退後は産経デジタルが運営した自転車専門媒体「Cyclist」の記者、編集者として自転車やアイテムのインプレッション記事を担当した。現在はYouTubeチャンネル「サイクリストTV」でナビゲーターを務めるほか、自治体の自転車施策プロデュース業務を担当。

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