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変速機の心臓部、「ディレイラー」の仕組み

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変速機の心臓部、「ディレイラー」の仕組み

 前回の記事では変速のコツについて書きましたが、今回は改めて変速機の仕組みについて解説します。構造を理解すると、変速がより上手くなるはずです。

 前回、変速段数は「ロードバイクはフロントが2段、リヤが8~12段が多い」と記しました。これは、クランクに付くギア(チェーンリングといいます)が2枚あり、後輪のハブに付くギア(スプロケットといいます)が8~12枚あるということです。

スプロケットとディレイラー
この記事のポイント

ペダル一漕ぎに対する後輪の回転数が変化

 これらのギアのどこにチェーンをかけるかで、ペダル1回転に対する後輪の回転数が変わってくるわけです。例えば、一番軽いギア(低速ギア=加速しやすい)にすると、ペダルを1回転させると、ホイールも約1回転します。一番重いギヤ(高速ギア=スピードが出やすい)にすると、ペダル1回転に対してホイールは4~5回転します。

 チェーンをかけ替える作業をしているのが、ディレイラーです。ギアが前と後ろの2カ所にあるということは、前後それぞれに変速機が必要ということです。

 チェーンリングのすぐ上に付いているものがフロントディレイラー、スプロケットのすぐ下側にあるものがリヤディレイラーです。いずれも、ケーブルもしくはモーターの力でディレイラーが左右に動き、チェーンを強制的に押して左右にスライドさせ、違うギアにかけ替えます。ディレイラーをどっちにどれだけ動かすか、の指示を出すのがシフトレバーというわけです。

効率とスピードを追求した構造

 しかし、ディレイラーの動作をじっくり見ていると、なんだかとても原始的です。これだけ技術が進歩した時代に、まだチェーンを押して無理矢理脱線させて「ガリガリガッチャン」なんてやってるの?と思ってしまいます。

 なぜなら軽快車の多くは内装変速(ハブの中に配された歯車の位置を変えて変速する装置。これに対してスポーツバイクの変速システムは外装変速と呼ばれます)ですから。軽快車のほうがよっぽどスマートに見えます。内装変速はギアがむき出しじゃないし、オイルも飛び散らないし、内装変速はペダルを止めていても変速できます。

 それでもロードバイクやマウンテンバイク(MTB)をはじめとしたスポーツバイクが外装変速機を採用し続けるのは、動力伝達効率、軽さ、整備性といった面でメリットがあるからです。外装変速であれば、ギアの段数を多くすることも、走るシチュエーションによってギアを交換してギア比を変えることも、消耗品であるチェーンリングやスプロケットを交換することも簡単です。ホイールを簡単に取り外すことができるのも外装変速ならではの利点です。

 要するに、外装変速のほうが、軽くて、速くて、整備や調整が簡単。ロードバイクは、どこまでいっても効率とスピードを追求した乗り物なのです。

 少々ややこしいのは、「フロントはギアが大きいほうが高速になり、リアはギアが小さいほうが高速になる」こと。クランクは脚からパワーが“入力”されるところであり、ギアが大きいほうがチェーンがたくさん進みます。一方、後輪はパワーを“出力”するところなので、ギアが小さいほうがチェーンがたくさん進みます。

チェーンが内側→低速、外側→高速に

 さらにややこしいのは、チェーンリングは内側のギアが小さく、外側が大きくなっています。スプロケットは内側が大きく、外側にいくにつれてだんだん小さくなります。

 だから、前後どちらも「チェーンが内側にあると低速側のギア、外側にいくにつれてどんどん高速ギアになっていく」と覚えればOKです。

文: 安井行生(やすい・ゆきお)

自転車ライター。大学在学中にメッセンジャーになり、都内で4年間の配送生活を送る。現在は様々な媒体でニューモデルの試乗記事、自転車関連の技術解説、自転車に関するエッセイなどを執筆し、信頼性と独自の視点が多くの自転車ファンからの支持を集める。「今まで稼いだ原稿料の大半をロードバイクにつぎ込んできた」という自称、自転車大好き人間。

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