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初心者のためのスポーツ用自転車基礎講座<2>

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スポーツ用自転車は買ったその日に受け取れない
初心者のためのスポーツ用自転車基礎講座<2>

 コンビニでお弁当をレジに持っていき、お金を払えばその場で受け取れます。なんなら温めてくれもします。当然ですね。だって今すぐ食べたいんだから。コンビニに限らず、どんなお店であっても、在庫があればすぐ持って帰れるものがほとんどです。

 では、サイズ展開がある靴や服はどうでしょう。ちょうど良いサイズがお店にあれば、その場で受け取れます。もし欲しいサイズが店頭にない場合は、取り寄せになったりします。パンツの裾上げに時間がかかることもありますが、チェーン店などでは数十分でやってくれますね。体に合わせる必要がある服や靴では、手に入るまでにちょっと時間を要することがあるわけです。

 さらに難しいのがスポーツ用自転車です。まず、1つのモデルに数種類のカラーとサイズがあるので、店頭に在庫がない場合が多い。まずメーカーや代理店から取り寄せる必要があります。それに時間がかかります。

 買う自転車が店舗に届いたとしても、「はいどうぞ」というわけにはいきません。メーカーや輸入代理店から店舗に届く自転車は、「七分組み」と言われる状態です。要するに「70%まで組み上げられた状態ですよ(あと30%は未完成)」ということ。メーカーによって八分だったり九分だったりするようですが、できるだけコンパクトに梱包して運送費を抑えるために、ハンドルやサドルやホイールが外されています。箱から出してすぐ乗れるという状態ではないのです。

スポーツ用自転車は「セミオーダー品」

 では、それらを取り付ければ完成か。いや、まだやるべきことが残っています。ちゃんとしたショップであれば、届いたバイクの品質に問題がないかを確認します。ちゃんとグリスが塗られているか。各パーツはきっちり取り付けられているか。ボルトはしっかり締まっているか。ホイールが精度よく組まれており、スムーズに回るか。変速機はきちんと動くか。それらを確認し、必要なら調整を行います。

 こだわりのあるショップであれば、一度パーツを外して組みなおすこともあります。「残りの30%を組み立てる」のではなく、「一から組み立て作業を行う」ということです。

 それだけではありません。お客さんの体型や乗り方に合わせて、ハンドルの角度、レバーの位置、サドルの位置を調整します。必要であれば、ハンドルやステム、サドルを別のものに交換し、お客さんのポジションにピタリと合うように仕上げてくれます。バーテープを巻きなおすショップもあります。

 また、七分組み状態の自転車のシフトケーブルとブレーキケーブルは、余裕を見て長めになっていることが多いんです。でもそのままだと操作時に無駄な抵抗となり、見た目も美しくありません。そこで、適切な長さにカットし、変速機とブレーキの再調整を行います。

 ショップによっては組みなおしたあとに試乗して最終チェックをすることもあるでしょう。最後にフレームを磨き上げて、ようやく納車となるのです。工場から出荷されたときは大量生産品の一つであったスポーツ用自転車が、お客さんの手に渡るときはセミオーダー品へと変身しているわけです。

 ユーザーにはあまり知られていないこれらの作業が必要だからこそ、スポーツバイクは購入から納車までに時間を要するのです。その間、どこに行こうかと考えながら楽しみに納車を待ちましょう。

文: 安井行生(やすい・ゆきお)

自転車ライター。大学在学中にメッセンジャーになり、都内で4年間の配送生活を送る。現在は様々な媒体でニューモデルの試乗記事、自転車関連の技術解説、自転車に関するエッセイなどを執筆し、信頼性と独自の視点が多くの自転車ファンからの支持を集める。「今まで稼いだ原稿料の大半をロードバイクにつぎ込んできた」という自称、自転車大好き人間。

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