TOP HOW TO スポーツ用自転車の“非常識”スポーツ用自転車の“非常識”<5>
ロードバイクに乗る人たちは、なぜ自転車を屋内で管理するの?

News / Columnスポーツ用自転車の“非常識”

スポーツ用自転車の“非常識”<5>
ロードバイクに乗る人たちは、なぜ自転車を屋内で管理するの?

 「部屋の中に自転車が……!しかも何台も!!」

 我が家への来訪者があると、まずこう驚かれます。僕らサイクリストの中にも、愛車であるスポーツバイクを屋内で保管する方も多いのではないでしょうか。しかし、よくよく考えるとたしかに一般的な保管方法とはいえませんよね。国土の狭い日本は集合住宅の割合が高く、戸建てであっても家はコンパクトでスペースには限りがあり、さらに、土足文化の欧米と違って屋内では靴を脱ぐお国柄で、外を走り回る自転車を家の中に持ち込むことに違和感を抱くのは当然でしょう。しかしながら、本格的なスポーツバイクは屋内で保管するメリットが大きいのです。

この記事の内容

理由その1「盗難対策」

 一つ目の理由は盗難対策。自動車のようにしっかりとした施錠ができず、セキュリティ対策もしづらい自転車は、頑丈な鍵をかけるくらいしかできません。しかも軽量で運びやすいため、単独犯であっても鍵さえ壊せればすぐに持ち去れます。パーツをバラしてしまえば換金も比較的容易であるため、盗難に対するハードルは残念ながらとても低いのです。高級自転車専門の窃盗団がいるという情報を耳にすることすらあります。

 屋内に保管すれば、盗難の心配はかなり低くなります。ちなみに筆者がスポーツバイクに乗り始めたばかりの学生の頃、アパートの駐輪場にマウンテンバイクをとめていたところ、夜の間に盗まれてしまったことがあります。愛車の姿が忽然と消えているときの喪失感、絶望感たるや……。それ以来、愛車は必ず屋内で保管しています。

理由その2「劣化防止」

 二つ目の理由は劣化防止です。屋外に保管すると、雨風はもちろん、気温の変化や紫外線などに24時間365日曝され続けることになります。

 これが、屋外保管が前提となる軽快車なら問題はありません。いわゆる“ママチャリ”と呼ばれる軽快車を作っているメーカーに取材に行くと、開発棟や工場の裏手の目立たないところに、金網にサドルやフレームやホイールなどのパーツが吊るされているという不思議な光景に出会うことがあります。これは「耐候試験」といって、屋外使用によってどれほど劣化するかを測るもの。フレームに傷を付けたうえで塩水を噴霧して錆の程度を見ることもあるようです。軽快車はこのような試験をクリアした上で市場に送り出されています。

 もちろんロードバイクも屋外で乗るものなので、必要最低限の耐候性は備えていますが、なかには性能と引き換えに耐候性を犠牲にしているものもあります。例えば、軽さと座り心地を高めたサドルや、グリップ性能を追求したタイヤ、鮮やかな発色と塗膜の薄さ(=軽さ)を重視した塗装などは、雨ざらしにしていると軽快車よりも明らかに早いスピードで劣化が進みます。もちろん雨の中を走っても問題ありませんが、走行後はしっかりとメンテナンスされることが前提です。

難題は「家族の理解」?

 盗難と劣化。この2つのリスクを回避するには、屋内で保管する他にありません。最も簡単なのは玄関に置いてしまうこと。土足の場所でもあるので床の汚れもさほど気にする必要はなく、場合によっては壁に立てかけておくだけでOKです。

 玄関にスペースがなければ、廊下や部屋に入れるのも一つの方法です。このとき必要なのがバイクスタンドです。ロードバイクは軽快車のようなスタンドを装備していません。これは、軽量化のため、そしてレースにおける集団走行時の危険回避のためです。自転車にスタンドが付いていると、他の選手のホイールなどと接触して大事故になりかねないため、自立できないスポーツバイクを屋内で保管するなら、スポーツバイク用のバイクスタンドを用意しましょう。保管が複数台になる場合は、専用のバイクラックを使って上下に収納すれば省スペース化が可能です。

 しかし、屋内管理を実現する上でなにより大変なのは、家族の理解でしょう。「自転車を家に入れるなんて非常識」「床と壁紙が汚れそう」「邪魔!」などなど、「ごもっともです……」としか言いようのない反論はいくらでも考えられます。

 上記の2つの理由を切実に訴えて、家族の理解を得た上で屋内管理を行いましょう。

文: 安井行生(やすい・ゆきお)

自転車ライター。大学在学中にメッセンジャーになり、都内で4年間の配送生活を送る。現在は様々な媒体でニューモデルの試乗記事、自転車関連の技術解説、自転車に関するエッセイなどを執筆し、信頼性と独自の視点が多くの自転車ファンからの支持を集める。「今まで稼いだ原稿料の大半をロードバイクにつぎ込んできた」という自称、自転車大好き人間。

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