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ロードバイクのタイヤはなぜ細いの?

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スポーツ用自転車の“非常識”<4>
ロードバイクのタイヤはなぜ細いの?

 自動車って、高性能になればなるほどタイヤが太くなる傾向にありますね。顕著なのがスポーツカー。一般的な自動車とは比べ物にならないほどの太いタイヤで地面を踏みしめている姿は、いかにも力強く速そうです。しかしロードバイクはその逆。いわゆる“ママチャリ”と呼ばれる軽快車と比べてもタイヤは不安になるほど細く、親指の幅くらいしかありません。これはオートバイを含め、陸上を走る乗り物の中で断トツの細さで、いかにも軽やかに速く走りそうです。スポーツカーとロードバイク、どちらも運動性能を追求した乗り物のはず。でもなぜタイヤの細さは真逆になるのでしょう?

この記事の内容

自転車はエンジンが非力だから

 理由は「パワー」「重量」「速度域」の違いです。スポーツカーは1トンを優に超える車体を数百馬力というパワーで走らせます。有り余るパワーをホイールスピンさせずに路面に伝え、重い車体をハイスピードでコーナリングさせるために必要なグリップを生み出し、凄まじい運動エネルギーを瞬間的に減じて停止させなければなりません。それには太いタイヤが必要なのです。

 一方のロードバイクは、トータル重量は20分の1程度、速度域は数分の1、パワーに至っては数百分の1。重くてパワフルな自動車に比べると、まるで木の葉のような存在です。そんな軽く非力な自転車には、自動車ほどのグリップは必要ありません。それよりも、1馬力に満たないくらいのパワーでスピードを追求するために、タイヤはできるだけ軽く、転がり抵抗を低く抑える必要があります。その結果としての「細いタイヤ」というわけです。

「軽さ」よりも「トータルバランス」重視の時代へ

 そんなロードバイクのタイヤですが、実は昔に比べて少しだけ太くなっています。かつて、ロードレースで使われていたタイヤの幅は21~23mmですが、現在は25~30mmほどが主流になりました。

 太いタイヤの方が快適性とグリップを高めやすく、転がり抵抗を低く抑えることができるのですが、もちろんその分重くなるため、これまでは軽さを重視して細いタイヤが選ばれていました。

 しかし、昨今のディスクブレーキ化によってタイヤ幅に制限がなくなり、フレームも太いタイヤが前提の設計になり、ロードバイクでも太いタイヤの装着が可能になっています。軽量化の技術が進化し、タイヤを太くしても重くなりにくくなったことが追い風となり、従来の「とにかく軽さを追求」から、「快適性や安全性を含めたトータルバランスを重視する」という方向にトレンドが変化し、ロードバイクのタイヤのサイズはかつてより5mmほど太くなったというわけです。

 とはいえ、何度も書いている通り、ロードバイクの本分はあくまで「速く走ること」。走らせるのが非力な人間であるという大前提が変わらない限り、ロードバイクのタイヤが極端に太くなることはないでしょう。

文: 安井行生(やすい・ゆきお)

自転車ウェブメディア『La route』のメインライター。大学在学中にメッセンジャーになり、都内で4年間の配送生活を送る。ひょんなことから自転車ライターへと転身し、現在は様々な媒体でニューモデルの試乗記事、自転車関連の技術解説、自転車に関するエッセイなどを執筆する。今まで稼いだ原稿料の大半をロードバイクにつぎ込んできた自転車大好き人間。

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