2021.3.9
適切な姿勢でロードバイクに乗ると、膝の痛みや太もものつりなど、体のトラブルを減らせます。一体どういう点に気を付けると体のトラブル予防に効果的なのか紹介していきます。(文・菅洋介 / 写真・石川海璃)
ロードバイクに乗っていて体に痛みが現れる部位は大きく分けると8つです。それぞれ原因と対策をまとめました。
まずは首や肩の痛みについてです。前傾姿勢のきついポジションで1時間もロードバイクに乗ると首が痛くなる。顔を上げていられない。このような症状に悩む方に見直して欲しいのがハンドルのセッティングです。ロードバイクに慣れていない方ほど、ハンドル位置を高くすることで首回りの負担が軽減されます。
上体を支える体幹の筋肉が弱い場合、ハンドルの位置が低いとハンドルを手で押して体を支えようとします。肩が上がり、首回りが縮こまった姿勢が続くと肩の周辺がリラックスできなくなってしまいます。またハンドルまでのリーチが遠すぎると(ひと回り大きなサイズに無理して乗っていると陥りやすい)、乗車中にひたすら腕を上げて伸ばしたフォームになり、やはり肩回りの負担が増えてしまいます。
ハンドルのリーチは前傾姿勢で腕を地面に垂直よりほんの少し前に、軽く“くの字”に曲げてブラケットに触れる距離に揃えるといいでしょう。ハンドルやブラケットをグッと掴んでしまうと、肩回りの緊張が高まりリラックスできなくなります。急勾配などでハンドルを引きつけるとき以外は、手元は軽くハンドルを包むぐらいで構えましょう。
ロードバイクに乗っていて腰が痛みだす原因は重いギヤの踏みすぎが多いです。ヒルクライムは勾配が上がるほど、踏んでいる時間が長くなり腰への負担は増します。体力にあったコース・ギヤ選びを心がけましょう。
また足先で踏み込んでいくフォームは、背中が丸まり腹筋を生かしづらく、背筋に頼ることから腰への負担も大きくなります。前回の記事で(7回目のリンク)紹介したように足裏全体で踏み込んでいくと背中が伸びて胸が起き上がり、腹筋と背筋をバランスよく使えます。この姿勢に付け加えるならアゴを少し引くと腹筋に力を入れる意識が高まります。
ロードバイクに乗り出してすぐに膝の皿まわりが痛くなる場合、クリートのセッティングがつま先に寄りすぎている、ペダルにクリートをはめたときに足先の振りが内側を向いている、もしくは真っ直ぐに向いているのが原因となることが多いです。対策としてほんの少しハの字に開くようにクリートをセッティングするか、ペダル上で完全固定しない種類のクリートを選ぶといいでしょう。
膝上の前ももの付け根が痛む場合はサドルが若干高い場合が多いです。またペダルの位置が下死点付近(5時から6時)で膝が伸び、つま先で踏んでいるようなセッティングは、膝の伸展に頼りすぎてしまい痛みの原因となります。この場合はサドルを数ミリ単位で低くしていき、つま先が下死点付近で地面と並行になるようにセッティングにするといいでしょう。
そのときのペダリングはくるぶしで円を描くようにすると、膝の伸展を過度に使わなくなるペダリングに変わり、膝の痛みが解消されるはずです。くるぶしで円を描くように意識したペダリングは前回の記事を参考にしてみて下さい。
ふくらはぎの上が痛む場合はサドルが高く、ペダルの位置が下死点付近(5時から6時)で膝が伸びきっている、もしくはサドルの高さは最適でも下死点付近からペダルを引き上げることを意識しすぎるときに痛むことが多いです。
ロードバイクのサドルは硬いものが多いのです。ライド中に股間の痛みを感じる経験はサイクリストならば誰でもあります。サドルのセッティグ面から股間の痛みを考察すると、サドル先端が前上がりになっているときは股間の前部に圧迫感があり、痛みます。この場合サドルを水平にセッティングすることである程度痛みを解消できます。
サドルを前下がりにすると確実に痛みの解消に繋がりますが、体幹で前傾姿勢を保てなくなるとハンドルに荷重がかかりやすく、首・肩回りの疲労や痛み、ライド中のハンドル操作のミスに繋がるので、上級者のセッティングといっていいでしょう。
またサドルが水平でも背中を丸めて乗る時間が長いと、座骨がサドル後部に大きく荷重をかけて座り続けることになり、臀部の痛みに繋がります。この場合は時々ブラケットの中心に小指と薬指をかけ、脇でハンドルを引いて胸を起こしながらフォームを変えるのがいいでしょう。サドルが高すぎるとフォームを変えるときにサドル接点の移動幅が少なくなるので痛みから逃げづらくなります。
ポジションを変える以外にはサドルを交換するという手もあります。その場合はサドルパッドの弾力だけでなく、サドルレールがしなやかなものに交換すると振動吸収性が高くて馴染みもいいでしょう。股間の中心が痛い場合は穴あきサドルもいいでしょう。
ロードバイクのサドルは、同じ型でも骨盤の広さに合わせてサイズを数種類販売しているメーカーもあります。購入する際は、自分の体やサドルの特徴をよく調べてみるといいでしょう。
ここからは足つりの原因と対策を細かく見ていきます。ももの内側がつってしまうのはペダリングするとき膝がぶれないように足を真っ直ぐに上下させようとする意識が強い方です。ももを内側にしようと意識すると内転筋が足を真っ直ぐに整えようとするので、内ももの負担が大きくなり、つってしまいます。
解決方法は足が上がったときの膝先から意識しないことです。歩くときもそうですが、ももを真っ直ぐ上げるより斜め上に上げる方が股関節や骨盤のバランスからみても自然です。注意すべきは膝を自然に上げたのに下ろすときは内側に意識持っていかないように上げた角度から踏み下ろすと無理がないでしょう。
ヒルクライムでは足を踏み切ったときにハムストリングスの筋肉が収縮してつってしまうこともあります。アップダウンが長く続く場面で勢いをつけようと高い負荷でペダルを踏むときによく起こります。ハムストリングスがつると足に大きなダメージを受けて回復してスタートするのに時間がかかります。改善点は急に高い負荷でペダルを踏むのを控えめにするか、骨盤の前傾をある程度保ったまま上りに入るといいでしょう。
ダンシングなど、ペダルを踏む動きが続くと頻繁にふくらはぎがつってしまいます。またサドルが高くてペダル下死点付近で足をかき上げる癖がある人は、ふくらはぎがつるリスクが高いのでフォームを改善する必要があります。足に高い負荷をかけているのが主な原因なので、レベルにあったコースを選んだり、ペースを抑えることが未然につりを防ぐ対策になります。
ふくらはぎがつってもペダルを回し続けることはできますが、つったふくらはぎをかばって走っているうちに内転筋がつることもあります。高い負荷に加え、水分補給が足りていないと連鎖的に各部位がつってしまうので注意が必要です。つりそうになったら停車して水分補給をしましょう。
痛みの原因と対策まとめ
① 首・肩の痛み…ハンドル高、ハンドルリーチ、ハンドルの持ち方を見直す撮影協力:株式会社シマノ
管洋介(SUGA YOSUKE)
AVENTURA CYCLING代表、有限会社デボ代表取締役社長。競技歴22年のベテランロード選手。国内外で50ステージレースを経験。近年は長い経験を生かしてメディア出演も多く、自転車専門誌のレギュラーキャストとして、モデル、インプレッション、ライディングレクチャー、好評の連載を持つ。自転車ライディング講師として イベント他、様々なコミュニティでのテクニ カルコーチ務める。2017年よりAVENTURA CYCLING を立ち上げ、 自転車界の明るい未来をリードしていく。
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