2020.2.7
これってあり? なし? こんなときはどうする? 自転車に乗っていて、ふとした疑問を抱いた経験はないでしょうか。ここでは自転車にまつわる交通ルールを中心に、Q&A方式で弁護士が素朴な疑問に答えていきます。
A まず、サイクリングロードに釘や画鋲を撒き散らす行為ですが、道交法76条第4項第7号では、「公安委員会が、道路における交通の危険を生じさせ、又は著しく交通の妨害となるおそれがあると認めて定めた行為」を禁止しており、この禁止に違反すると5万円以下の罰金に処せられることとされています。
この、公安委員会が定めた行為は、各都道府県の道路交通規則に反映されており、例えば東京都道路交通規則には、「みだりに道路にどろ土、汚水、ごみ、くず、くぎ、ガラス片等をまき、又は捨てること。」(同規則17条(2))が禁止行為として挙げられています。
しかし、この規定は、道路における禁止行為を定めたものですから、道路交通法の規制の及ばない場所においては適用がありません。「サイクリングロード」が、道路交通法の適用される「道路」なのかが問題となるわけですが、道路交通法が適用されるか否かは、不特定の歩行者や車両が、許可をとることなしに自由に通行できる場所一般かどうかで決まります。
サイクリングロードと言っても、いろいろな形態があり、一概には言えませんが、通常、誰もが出入りできるようになっている河川敷のサイクリングロードなどは、道路交通法の適用範囲内と言うことができるでしょう。
このほかに、釘の大きさや量、撒かれている場所などにもよりますが、それによって自転車が転倒して、運転者が怪我をしたような場合には、傷害罪などにも問われ得るでしょう。実際のケースとしては、道路にロープを張って、バイクを転倒させた事件では、殺人未遂罪の嫌疑がかけられたケースがあります。ただし、ロープを張ればバイクは転倒を免れず、その危険性という点では釘をばら撒く行為より数段危険なため、今回のケースと同列には考えられないでしょう。
次に、自転車を盗む人ですが、窃盗罪または遺失物等横領罪に問われることになります。窃盗は、10年以下の懲役または50万円以下の罰金の刑であるのに対し、遺失物等横領は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料の罪となっており、窃盗罪の方が重罪です。
この違いは、自転車が、他人の占有の下にあるか否かという点です。他人の占有の下にある自転車を盗めば窃盗、占有下にない自転車を盗めば遺失物等横領になります。この「占有」とは、物を支配しているという意味で、その支配の意思が及んでいる範囲で広く認められており、道路上に駐輪している場合、留守中の玄関先に置いてある場合など、実際に所有者がそばに居ない状況でも「占有あり」とされます。そのため、自転車盗は、より重い窃盗罪となるケースが多いと言えます。
2009年弁護士登録。会社関係法務、独占禁止法関係対応、税務対応を中心に取り扱う傍ら、2台のロードバイクを使い分けながら都内往復20kmの自転車通勤を日課とする。久留米大学附設高校卒・東京大学法学部卒・早稲田大学法務研究科卒。
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