2022.10.24
2020年春から東海道・山陽・九州新幹線で導入された「特大荷物用スペース付き座席」。指定席やグリーン席等の最後部座席の背後にある空間を自転車輪行等で利用する場合、その席と併せて予約しなければならないという新制度です。制度開始から2年余り、まだ利用したことがないという人はもとより、利用した人も細かい点で疑問を感じながら利用している部分もあるのではないでしょうか。今回は実際に「特大荷物用スペース付き座席」を利用して感じた素朴な疑問を西日本旅客鉄道(JR西日本)に尋ねつつ、その利用法をまとめました。(※2023年6月21日更新)
公共交通機関と自転車を組み合わせる輪行旅。なかでも新幹線輪行は南は九州から北は北海道まで広範に移動できるだけでなく、飛行機輪行と比べて自分の手元で管理できる安心面から、輪行シーンで多く選ばれる移動手段となっています。
その際にサイクリストが自転車の置き場所として利用していたのが、車両最後部座席の後ろの空きスペース。「空いてたらラッキー♪」という利用方法が習慣化していたところに突如「予約制」という言葉が現れたのですから、当時は輪行を愛するサイクリストたちの間に緊張が走ったものです。
そもそも、なぜ特大荷物の持ち込みに事前予約が必要となったのかをたずねてみました。
たしかに近年は長距離を走る新幹線であるほどスペース確保が困難になるケースも少なくなかったので、事前にスペースを確保できるようになったことはありがたいことです。
では、「特大荷物」とはどのような荷物が対象となるのでしょうか。JR西日本によると、「荷物の3辺の合計が160cm超250cm以内の手回り品」とのことです。スポーツバイクは輪行状態でも160cmは優に超えるので特大荷物に該当します。
ここで一つ気になるのが特大荷物に関する但し書きです。「大きな荷物のうち、スポーツ用品・楽器・車いす・ベビーカー等については、そのサイズに関わらず事前予約不要で持ち込み可能」という説明があります。「スポーツバイクはスポーツ用品…ということは事前予約なしでもスペースを利用できる?」と少々誤解を招きかねない表現ですが、JR西日本によると、これは「特大荷物スペースを利用せずに持ち込むだけであれば予約不要」という意味で、特大荷物スペースを利用する場合はやはり事前予約は必須だそうです。
特大荷物スペースを利用せずに通路やデッキに置くことは可能とのことですが、輪行状態のスポーツバイクは通路の妨げになったり、衝撃が加わって倒れたりすることも想定されるため、積極的に特大荷物スペースを利用したいものですね。
さて、スペースの利用にあたってまず認識しなくてはならないのが予約の対象が「特大荷物スペースつき座席」であることです。従来のスペース利用の感覚でイメージするため、サイクリストの中には座席と切り離してスペースのみの予約と捉えてしまう人も少なくないようですが、「特大荷物用スペース座席」という名称の通り、最後部座席とスペースがセットになった形での予約となります。なお、スペース利用分の追加料金は発生しません。
「特大荷物スペース」は「特大荷物スペースつき座席」の予約者の共用部となるため、3人掛けシートに座った3人全員がスペースを利用する場合は「ゆずり合って」荷物を収納することになります。レアケースであると思いたいですが、もし利用者3人ともが輪行だった場合はどうするのかを尋ねたところ、「調整いただいた結果、納まらない場合は他の空いているスペースへと誘導させていただきます」(JR西日本)とのこと。そういう事態にならないよう、輪行の場合はなるべく単独で利用できる席を選択したいものです。
スペース付き座席以外の座席を選択した人は特大荷物スペースを利用することは原則不可ですが、それでも利用したい場合は1,000円の持ち込み手数料が発生します。支払った場合でも特大荷物スペースつき座席の予約者の荷物が優先されるため、荷物が収まり切らない場合は他の車両の空いているスペースへ誘導されるそうです。
特大荷物スペースは普通車指定席とグリーン車指定席の最後部の座席に設定されており、一車両あたりの数は、例えば東海道山陽新幹線16両編成の「のぞみ号」の場合、 57席(グリーン車12席、普通車45席)あります。自由席や一部の指定席号車にはスペース付座席の設定はありませんが、JR西日本によると「その場合でも、車両最後部スペースは最後部座席のお客様が優先してご利用いただくスペースとしてご案内しています」とのことです。
特大荷物スペースつき座席の予約は「エクスプレス予約」「スマートEX」「e5489」「JR九州インターネット列車予約」といったネット予約のほか、「みどりの窓口」や駅の券売機でも受け付けています。他の指定席と同様に1カ月前からの発売となるため、輪行旅が決まった時点で早めに事前予約することをおすすめします。
予約時の座席の選択肢は狭まりますが、愛車を安全に、手元で管理できることは輪行を愛するサイクリストにとって何物にも代えがたいサービスだと思います。JR西日本によると特大荷物スペースに対するニーズは高く、さらなるインバウンド需要の増加に対応するため、5月から新たに盗難防止機能付きの「特大荷物コーナー」もデッキ部分に設けられることになりました。
長距離利用が多い車両を中心に整備を進めており、荷物が分散化されることでスペース付き最後部座席がより使いやすくなることが期待されます。
アウトドアメーカーの広報担当を経て、2015年に産経デジタルに入社。5年間にわたって自転車専門webメディア『Cyclist』編集部の記者として活動。主に自転車旅やスポーツ・アクティビティとして自転車の魅力を発信する取材・企画提案に従事。私生活でもロードバイクを趣味とし、社会における自転車活用の推進拡大をライフワークとしている。
この人の記事一覧へ稲城から高尾まで 都内サイクリングの定番コース“尾根幹”と+αのルート
2018/10/30
2017/08/29
ヒルクライムで好成績を出すのに、どんなトレーニングをしたらいいですか?
2018/02/23