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兵庫の港町、神戸に潜むアートを巡る“ミューラルライド”

 週末を鮮やかに彩るサイクリング。今まで見たことのない景色、交通量が少なくて走りやすい道など、多くのサイクリストが求める条件を重ねれば、自ずとひと気の少ない田舎道を連想することが多い。しかし、実は都会であっても目新しい景色や走りやすい道を選ぶことは充分にできる。港街の神戸で海沿いを抜け、街中に潜む “ミューラル” を探すルートをご紹介したい。(リポート・腰山雅大)
「POW! WOW! Japan2016」で製作されたミューラルアート
オススメポイント 建物に描かれた絵画・ミューラルを巡り、港町・神戸を散策するライド。写真映え間違いなしのスポットが充実。おしゃれなお店で食べるランチ&ディナーも絶品!
レベル (初心者向け)
距離 28.7km
獲得標高 181m
始発・終着地 始発・メリケンパーク / 終着地・GALLO GARAGE
立ち寄りグルメ Sunchago Burgers(ランバージャックバーガー)、GALLO GARAGE(ヘレカツ)
立ち寄りスポット メリケンパーク

「ミューラル」とは

今回の出発点は、港街神戸を象徴するメリケンパーク。神戸港事業の一つとして、1987年にかつてのメリケン波止場と神戸ポートタワーが建つ中突堤の間を埋め立てて造成された場所だ。大規模なリニューアル工事を経て、神戸海洋博物館やホテルオークラなどと並び、神戸港を代表する景観の一つとなっている。ちなみに当時の波止場すぐ近くに米国領事館があり、「アメリカン」の原音発音「メリケン」からその名がついたとされる。
サイクリングの出発地メリケンパークからの眺め
そのメリケンパーク内を見渡すと、大きなグラフィティアートを見つけることができる。今回のテーマでもある「ミューラル」とはこのアートのことを指す。
メリケンパークは神戸港事業の一つとして、造成された場所だ
メリケンパーク内を見渡すと大きなイラストが描かれている建物を発見した
この聞きなれないミューラルという言葉を少し説明すると、平たくは壁に書かれた絵画(壁画)のことを指した言葉だ。HIPHOPカルチャーなどを背景に持つグラフィティアートがその祖先とも言えるが、公共物など所有者に許可を取っていないヴァンダリズムに対して、ミューラルは所有者の許可のもと描かれる。   また違法なケースが多いグラフィティアートと比較して、ミューラルは合法的に時間を掛けて描くことができるため、壁画そのものが大きく、また手の込んだ作品となっている場合が多い。
建物の所有者許可のもと作成されたミューラルアート
この作品は大阪出身のYOHEYY氏が制作したもので、神戸で行われたアートプロジェクトの一環で突如ここに現れた。ハワイを拠点に全世界の街へミューラルを描き、活動を通してアーティストへの支援を行う「POW! WOW!」という団体が日本へやってきたのが2016年と2017年のこと。偶然にも両年度ともここ神戸が舞台として選ばれ、数多くのアーティストが港街を素敵なアートワークで彩っている。   作品群は街と調和しながら点在し、神戸を訪れる人たちがカメラを構える。特にこのYOHEYY氏の作品前では多くの観光客が記念撮影に順番待ちをしているほどだ。
紹介するルートでは12点の作品全てを鑑賞できる
建物側面の壁を全て使い、イラストが描かれている
筆者が知る限り、「POW! WOW! Japan2017」で制作されたミューラルは全部で12点。あえて細かい場所については明記を避けるが、今回のルートではその全てを網羅できるようになっているので、ぜひ隠れたアート作品を探してみていただきたい。

BMX乗りが集まるハンバーガーショップ

地元BMXライダーも良く訪れるという「サンチャゴバーガーズ」
アート作品を巡ったのちランチに選んだのは、ミューラルに囲まれるように位置する神戸元町の人気店、「Sunchago Burgers」(サンチャゴバーガーズ)だ。5年前、デニムショップからハンバーガー専門店にリニューアルした異色のショップで、おしゃれな店舗は店主の高松さんご夫妻が自らの手で内外装の工事を施したという。息子さん娘さんがBMXに乗っていることもあり、ローカルのライダーたちも頻繁に訪れる地元ゆかりのお店だ。
ボリューム満点のランバージャックバーガー
ボリューム満点のバーガーをセットで注文。「木こり」を意味するランバージャックバーガーには、定番のパティ・トマト・オニオン・レタスのほかにマッシュルームモッツァレラとベーコンがサンドされる。パティは店主の実家が営む精肉店から仕入れた国産和牛を使用しているが、バンズや野菜にも並々ならぬこだわりを感じる。食材ひとつひとつの個性がしっかり調和したこのハンバーガーに、おもいっきりかぶり付いて欲しい。

■Sunchago Burgers

所在地:兵庫県神戸市中央区栄町通2丁目2番10号 営業時間:11時30分~19時、11時30分~17時(金) 店休日:不定休(Facebook/インスタグラムで告知) FB:https://www.facebook.com/Sunchago-Burgers-238230119586045/
兵庫県立美術館前では、ヤノベケンジ氏作のオブジェ「サン・シスター」を横目に道中を進む
お腹を満たした後は次の探索地へ。道中は海岸線に近い道を選ぶ。メリケンパークからみなとのもり公園を抜け、HAT神戸の海沿いを走ると、ほぼ歩行者・自転車の専用の道を通ることができる。大阪~神戸の阪神間は海沿いにこのようなルートが多く点在し、比較的交通量の少ない道を選ぶこともできる。   そのまま東へ進むと、神戸の埋立地「六甲アイランド」に渡る六甲大橋が近づく。「POW! WOW! Japan2016」ではこの場所がプロジェクト開催地として選ばれ、三宮・元町エリアと同じようにミューラルが多く点在する。
「六甲アイランド」へと続く六甲大橋
自動車専用道路、鉄道を併用させる六甲大橋を渡ると、橋と同じ高さで先の方まで道が続いている。六甲アイランドの入り口は歩道橋の整備が行き届いており、そのまま地上階へ降りることなく中心部まで移動可能だ。六甲アイランド外周には車線数の多い大きな道路が通っていることもあり、自転車で通行する上でとてもありがたい。
“g” skateparkのミューラルアート
六甲アイランドに描かれたミューラルは約半数が公共の場に面し、残りはインターナショナルスクールとスケートパークに分かれて佇んでいる。学校内は一般人が立ち入ることが難しいが、スケートパーク「“g” skatepark」(ジースケートパーク)は外から見ることも、中に入って見学することもできる。   このスケートパークには「POW! WOW!」でのミューラルのほか、ビジュアルアーティスト兼インストバンド「neco眠る」のドラム担当、MIKI Akihiro氏が2019年に描いた壮大なアートなど、日本のアーティストが残した作品も多く保存されている。

ご褒美は肉料理

三宮~六甲アイランドと多くの作品を目にした最後は、国道を抜けて再度三宮へ。しっかりライドを楽しんだあとは、肉料理を堪能したい。ディナーには厚切りのステーキが楽しめるビストロ、「GALLO GARAGE」(ギャロガレージ)にお邪魔した。ここ神戸で3店舗を運営するギャログループの最新店舗で、トアロードから徒歩ですぐの立地だ。
前菜の人気メニュー、ブッラータチーズと旬のフルーツ(マンゴ)
マネキンを改造した通称“おっぱいサーバー”
店内へ入る前から伝わってくる個性的な店舗作りは、オーナー川添さんの頭の中を覗いているような奇抜な意匠となっている。自動車のディスクローターを使ったアンティークスタンドチェアや、マネキンを改造した通称“おっぱいサーバー”などユーモア溢れる中、特に目を惹くのが店内の壁一面に大きく描かれたドクロの壁画だ。関東で活動するアーティストのHirotton(ヒロットン)氏が直接描いたもので、お店のアイコンとなっている。
アーティストのHirotton氏による壁画が印象的な店内
お食事は前菜とメイン。前菜は複数種類の中から選ぶことができるが、子牛のタンやローストビーフ、キューバサンドなど、どれも肉の個性が前面に出るメニューの数々で旨味レセプターがぐんぐん刺激される。
「GALLO GARAGE」の看板メニュー、ヘレカツ
メインには国産ヘレ肉やランプ、いちぼなど、ローストやステーキが複数種類のメニューから選択できる。どの品も見た目から旨味が伝わってくるが、特に国産牛ヘレ肉の「ヘレカツ」をおすすめしたい。   ビストロでヘレカツという響きに若干聞いた耳を疑ったが、ごくごく薄く纏った衣は国産牛のヘレと絶妙にマッチし、「なるほどこれがビストロのヘレカツか」と納得させられる。特製ソースと合わせて美味しくいただいた。メインは赤身を中心にセレクトされていて、お肉でしっかりお腹を満たせるのも特徴だ。

■GALLO GARAGE

所在地:兵庫県神戸市中央区北長狭通2-5-17 メープル三宮 3F 電話:078-599-7088 営業時間:18:00~翌1:00(L.O.24:00) 店休日:不定休 26席(カウンター8席 テーブル18席) HP:http://www.gallo.jp/restaurant.html
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店内の壁画やアンティークを眺めながら、この日の行程を写真と共に思い返す。自転車で行き来するのに程よい道や街に潜むアート作品など、走りにくいと思われがちな都会ながら、実はその街の風情を存分に楽しむことができる。   ここ神戸三宮はJR、阪神、阪急など、都会ならではのアクセスの良さがある。輪行して季節を問わずに楽しむことができる街中のサイクリングは、自転車歴を問わず多くの方にオススメしたい。