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気分は五輪選手! レース展開を想像しながら富士山を目指す「道志みち」(神奈川県~山梨県)

 東京から山梨・富士山へと続く「道志みち」。30km近くに渡って信号がないこの道は、もともと自転車を始めオートバイク等“二輪”系の乗り物が多く行き交う道ですが、東京五輪で自転車ロードレースのコースにも組み込まれたこともあって、サイクリストの“聖地”としても全国的にその名が知られるようになりました。今回はそんな道志みちを気軽に、かつしっかり楽しめる凝縮コースをご紹介します。
東京五輪のロードレースコースにもなっている道志道。山伏トンネルを抜けた先には…?
オススメポイント 東京五輪ロードレースのコースの一部にもなっている道志みちを走り、山伏峠を越えて山中湖を目指します。過酷といわれる五輪コースのハイライト前でも、そこそこ脚が削られるプロファイル。ここを走り抜ける代表選手たちの走りを想像しながら、山中湖の富士山の絶景でフィニッシュです。
レベル ★★★(上級者向け)
距離 75.5km
獲得標高 1477m
出発・終着地 始発・JR橋本駅 / 終着地・富士急行富士山駅
立ち寄りグルメ ZEBRA Coffee & Croissant(コーヒー、パン)、手作り田舎の味 酒まんじゅう直売所(酒饅頭)、道の駅どうし(クレソンつけ麺)、白海とうふ(豆乳ソフトクリーム)、玉喜亭(吉田うどん)
立ち寄りスポット 道の駅どうし、山中湖サイクリングロード、忍野八海

橋本駅からスタート

 スタート地点はJRと京王線が乗り入れる橋本駅。東京方面から道志みちを目指す場合、五輪コースを再現しようと通称「尾根幹」(南多摩尾根幹線)を自走してくるサイクリストも少なくありませんが、道志みちを走る前にあまり脚を使いたくない、それだけの脚力がないという人は、ここ橋本駅からスタートするとフレッシュな状態で道志みちにアクセスすることができます。

JR橋本駅からスタート

 津久井湖方面に向かって走ると、10kmほど走ったところでサイクリストに人気のコーヒースポット「ZEBRA Coffee & Croissant 」に到着します。ここから次の休憩スポット「道の駅どうし」付近まで補給スポットはほぼなくなるので、この時点で小腹を満たしておきたければ、軽く何か食べておくと良いでしょう。

サイクリストにおなじみの「ZEBRA Coffee & Croissant」。店内に駐輪用の自転車ラックがあるので休憩時も安心

ZEBRA 津久井本店

所在地:相模原市緑区中野1890-1
TEL:042-780-8600
営業時間:平日 9:00~17:00/土日祝 9:00~18:00
定休日:なし
HP:ZEBRA Coffee&Croissant

 道志みちは、相模原市から富士吉田市へと約60kmにわたって走る峠道です。信号が少なく、週末になるとトレインを組んだサイクリストやトライアスリートと思われる人々が、トレーニングのようなスピードで走り抜けていきます。

五輪コースになっている津久井路。開催日もしっかり更新
この日もたくさんのサイクリストがトレインを組んでトレーニングしていた

 序盤は細かく繰り返すアップダウンも、先に進むにつれ次第に激しくなっていきます。上って下りてを繰り返しているようですが、トータルとしてはジワジワと標高が上がっています。脚への負荷はもちろん、周囲の景色も次第に山深くなっていくので走っていて飽きることがありません。

次第に景色が山深くなっていく。春になったらどんな景色が広がるのだろう

“抜け道”だった谷間の村

 「両国橋」という、神奈川県と山梨県の県境を越えると、いよいよ道志村に入ります。道志村は東西約28kmに連なる細い村。南北を険しい山に挟まれた集落で、古くから山間の抜け道として「道志七里」と呼ばれていたそうです(一里=約4km)。

道志道は東西に約28kmあり、「道志七里」と呼ばれている

 道沿いにはキャンプ場や渓流釣り場、温泉といったレジャースポットや、吊り橋といった観光スポットが多数あります。今回は山中湖を目指して通過しますが、春~秋は自転車キャンプで訪れてみるのも良いでしょう。

 走り出して38km地点、「手作り田舎の味 酒まんじゅう直販売所」という、味のあるのぼりが現れます。反対車線側にあるせいか、必死に踏んでいると見過ごしてしまうのでご注意を。

道志道の道中にある「手作り田舎の味 酒まんじゅう直売所」

 補給スポットが少ない道志みちでの貴重な補給所ですので、ここはぜひ立ち寄りましょう。

 大きな茅葺屋根の古民家で、一見どこで買えるのかわかりにくいですが、奥に入ったところにある片隅で、窓口越しに販売されています。

餡の甘味に小豆の塩気を感じる酒饅頭

 酒饅頭は1個140円。“酒饅頭”というと、いわゆるおみやげのような小ぶりなサイズを想像しますが、ここの酒饅頭はそのイメージを超えてくる大きさ。コンビニの「あんまん」とほぼ同等のサイズで、しっかり食べ応えがあります。しかも小豆の形がところどころ残っている粒あんで、甘さの中に塩気が混ざる感じが、少し疲れた体に最適です。

佐藤製パン

所在地:山梨県南都留郡道志村7858
TEL:0554-52-2100
営業時間:8:00〜18:00(日曜営業)、不定休

 そこから4kmほど走ったところで、「道の駅どうし」に到着です。直前に酒饅頭も補給したところですが、ここから先にある山伏峠の上りに備えて、もう少しエネルギーを補給しておくことをおすすめします。

オートバイとサイクリストで賑わっていた「道の駅どうし」

 この道の駅は、道志みち唯一の休憩どころとあって、サイクリストだけでなく、オートバイやクルマで訪れた人たちでいつも賑わいを見せています。

 自転車用のバイクラックも潤沢にあり、しかも敷地内の目立つ広場に設定されているので、休憩時も安心です。

バイクラックも多く、サイクリストも休憩しやすい

 道志村の名物は清流で育てたクレソンで、生産量は日本トップクラスを誇るとのこと。道の駅内のレストランでは、ピリッとした辛さと、さわやかな香りが特徴の「クレソンつけ麺」等ユニークなメニューを堪能できます。

クレソンがたっぷり練り込まれた名物の「クレソンつけ麺」
道志産「せいだ」(じゃがいも)を使ったほくほくのコロッケ

 季節によっては鮎の塩焼きや芋煮などにありつけるイベントも開催されるので、気になる方は行く前にイベントの予定をチェックすることをおすすめします。

道の駅 どうし

所在地:山梨県南都留郡道志村9745
TEL:0554-52-1811
営業時間(食堂):平日 9:00~17:00、土日祝 9:00~17:00(オーダーストップは30分前)
定休日:なし
HP:http://www.michieki-r413.com/

山伏峠を越えた先にあるご褒美、富士山

 腹ごしらえしたところで、ライド再開。このコースのピーク、山伏峠を目指します。

 ここまでもアップダウンを繰り返しながら地味に上ってきていますが、少し斜度が増し、しっかりとした上りになります。

山伏峠に向かって再スタート。ここは春になると道沿いに桜が咲く

 道の駅からピークまでは約9km、獲得標高430mほどですが、直登が続くため、精神的苦痛が大きいのがこの峠の特徴。大した激坂もなく、淡々と斜度を刻みますが、そんなレベルに対して「苦手」とする人も多い峠です。

山伏峠名物の“THE 直登”
標高が高くなると残雪も。冬季は夕方以降の峠越えは避けたい

 上り切ったところで現れる山伏トンネル。ここまで来たら、このコース全体の上りは終了です。おつかれさまでした。あとは山中湖まで一気に下りましょう。

今回のコースの上りが終了
トンネルを抜けると山中湖まで一気に下る

 下りといっても、山中湖は標高1000m付近に位置するため、上ってきたほどは下りません。距離にして4.5kmほど。「上ってきた分下れないの~?」と思われるかもしれませんが、ダウンヒルも長いと腕が疲れ、集中力が切れますし、季節によっては寒風で体が冷えるだけなので、楽しいと感じられるこれくらいの距離がベストなのかもしれません。

 そして下った先にある山中湖で、お待ちかねの富士山とご対面! 山伏峠を越えた達成感からのダウンヒル、からのこの絶景は、自走でここまで来た人にしか味わえない「ご褒美」です。

山中湖畔から富士山を望む

 山中湖周辺には、湖を取り囲むようにサイクリングロードが整備されています。一周約14kmの約8割程度と、残念ながらぐるっと一周はできませんが、コースに組み込んで上手に使えば、富士山の絶景を間近に眺めながら、快適なサイクリングを楽しむことができます。

山中湖畔に整備されたサイクリングコース
サイクリングコースのピクトグラム
サイクリングロードから見える富士山。まるで迫ってくる迫力

パワースポット「忍野八海」

 約6kmほど走ったところで山中湖サイクリングロードを外れ、「忍野八海」(おしのはっかい)へと向かいます。忍野八海は富士山の伏流水を水源とする湧水池。富士信仰の霊場や富士道者の禊ぎの場としての歴史がある場所で、世界遺産富士山の構成資産の一部としても認定されています。

名水を使った豆腐屋「白海どうふ」の豆乳ソフトクリーム
忍野八海の入り口。有名な観光地だけあって、案内がわかりやすい

 忍野八海には、その名の通り富士山を水源とする「出口池」「お釜池」「底抜池(そこなしいけ)」「銚子池」「湧池(わくいけ)」「濁池(にごりいけ)」「鏡池」「菖蒲池」の8つの湧水池があります。もともと富士山信仰の巡礼地だったため、「一番霊場」から「八番霊場」まで禊ぎの順番が決まっているそうです。

富士山の澄んだ雪解け水が湧く忍野八海

 息を飲むような水の透明度と、水深を感じさせる深い青。その中でゆらゆらと揺れる藻の緑のコントラストが神秘的な雰囲気を醸し出しています。池から視線を上に向けると、こちらを見下ろすように立ちはだかる雄大な富士山。富士山の力を感じずにはいられない、これぞパワースポットです。

不純物が取り除かれ、驚くほど透明
蕎麦を挽く水車小屋。昔ながらの生活様式が垣間見える

忍野八海

住所:山梨県南都留郡忍野村忍草
営業時間:「榛の木林資料館」は9:00~17:00まで(不定休)
ウェブサイト:http://www.vill.oshino.yamanashi.jp/8lake.html

ぜひ味わいたい名物「吉田うどん」

 忍野八海をあとにして、フィニッシュ地点の富士急富士山駅へと向かいます。その前に、せっかくなので富士吉田市の名物「吉田うどん」を堪能していきましょう。

 吉田うどんの特徴は、歯ごたえとコシがとても強い麺。 噛めば噛むほど素材と出汁の旨みが口いっぱいに広がり、さらにキャベツや牛肉がトッピングされているのも特徴です。富士吉田市内で50店舗近くのうどん屋があるほど、地元では愛されています(※2019年時点、ふじよしだ観光振興サービス調べ)。

 ただ、営業時間が昼過ぎ頃までで「麺がなくなり次第終了」という店が多いので、お目当ての店がある場合は事前に営業時間の確認をしてから行かれることをおすすめします。今回はフィニッシュ時刻が夕方になるのを見込み、コース上にあり、かつ休日18時半まで営業している「吉田のうどん 玉喜亭」をチョイスしました。

吉田のうどん「玉喜亭」。バイクラックも完備

 麺は湧き水を使用した、歯ごたえのある中太麺。スープは鰹節・煮干し、昆布出汁をベースに、味噌と醤油で味付けされた、甘くまろやかな味わいです。

人気メニューの肉つけうどん(500円)
小腹に嬉しい小サイズもある

 吉田うどんには麺の硬さが店舗によって異なるそうですが、ここ玉喜亭は地元では「初心者でも食べやすい入門編」としておすすめされています。全体的に盛りがボリューミーですが、ちょっとだけ食べたいという人にも嬉しいミニサイズもあります。

吉田のうどん 玉喜亭

住所:山梨県富士吉田市松山1387
営業時間:平日 11:00~16:30(夏季休暇期間中は18:30まで営業)、土・日・祝 10:30~18:30(※うどんが売切れ次第閉店)
定休日:年末年始
TEL:0555-24-1573
ウェブサイト:https://www.a-fromage.co.jp/archives/shop/honten/

 玉喜亭から約1.5kmほど走り、終着地点の富士急富士山駅に到着です。ここからは輪行で帰途に着きますが、帰る方向によっては電車の他に高速バスという選択肢があります。例えば新宿方面に向かう場合、富士急行の特急列車が直通で運行しており、高速バスも「新宿バスタ」に向かう路線が運行しています。いずれも新宿までの所要時間は2時間程度です(※バスは道路の混雑状況にもよります)。

富士急富士山駅でフィニッシュ

 料金は高速バスの方がリーズナブルですが、途中富士急ハイランドに停車するなど、休日には満席となることが予想されますので、利用される場合は事前に乗車時間のチェックと席の予約をおすすめします(自転車はスペースが空いていれば、バスの下部にある荷物入れスペースに追加料金なく格納することができます)。

 一方、特急列車はバスと比べると料金はかさみますが、普段から慣れている輪行ができることと、バスと違って道路の混雑状況の影響を受けずに帰宅できる等のメリットがあります。いずれにせよ疲れた体を預けてゆったりと帰ることができますので、ご自身にとって都合の良い輪行方法をお選びください。

文: 後藤恭子(ごとう・きょうこ)

アウトドアメーカーの広報担当を経て、2015年に産経デジタルに入社。5年間にわたって自転車専門webメディア『Cyclist』編集部の記者として活動。主に自転車旅やスポーツ・アクティビティとして自転車の魅力を発信する取材・企画提案に従事。私生活でもロードバイクを趣味とし、社会における自転車活用の推進拡大をライフワークとしている。

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