“サドルトーク”は子供にも有効! 健康&高コスパな「自転車子育て」のすすめお金で見るサイクルスポーツライフ<4>

2025/11/24    

 今回の『お金で見るサイクルスポーツライフ』は視点をがらりと変えて、「自転車×子育て」という視点からコストを考えてみます。というのも僕自身、普段からスポーツ用自転車に乗りながら、父親として子供との時間を楽しむツールとしても最適だと実感しているからです。それもコストをそれほどかけずに、です。

会話が弾む自転車効果

 最近の子供たちは、暇さえあればスマホ、もしくはゲームに没頭しがちですよね。うちの小学4年生の息子も、目を離すとずっとスマホでYouTubeを眺めています(さすがに時間制限はかけていますが)。それの是非についてはここでは深掘りを避けますが、いつでもどこでも動画やゲームが楽しめてしまう現代は、親子間のコミュニケーションが希薄になりがちです。

 家の中でもスマホ。どこかへ出かけるにしても電車や車での移動時間はずっとスマホ。「動画ばかり観てないでパパとお話しようよ」と言っても聞きやしません。しまいには「パパとお出かけすると動画観られないからつまらない」などと言い出しかねない…。そんな危機すら感じてしまいます。

 この状況を打破するのが自転車、親子サイクリングです。当然ですが、自転車に乗っている間はスマホも観られませんし、ゲームもできません。自然と親子間の会話が多くなります。

 学校のこと、勉強のこと、サイクリングロードに生えている植物のこと。友達との関係性。移ろう季節のこと。川沿いを走れば魚や鳥の話だったり、里山を走ればそこに暮らす動物のことだったり、話題は尽きません。自転車の交通ルールやマナーについても、一緒に走りながら教えることもできます。

 主観ではありますが、体を動かしていると脳が活性化するのか、子供はどんどん饒舌になり、話題が際限なく広がっていきます。クルマや電車等で座って移動しているときよりも笑顔が明らかに多く、“親子サドルトーク”は豊かなものになる気がします。

 それに、スマホやゲームが身近になった今でも、子供にとって自転車は人生で初めての「自分だけの乗り物」であり、人生で初めて手に入れる“翼”です。自分の力だけで移動する体験は、子供にとって最高の経験と刺激、そして思い出になります。

 もちろん「親子でよくサイクリングをしたケース」と「そうでないケース」を同一家族で比較することはできませんが、僕の場合は子供がキックバイクに乗り始めた頃からずっと親子でよくサイクリングをしたことで、いい親子関係を築くことができたと感じます。

親子サイクリングはプライスレス

 そして肝心な「コスト」の話です。同世代の子供をもつ周囲のパパ友たちを見ていると、どこへ行くにも大概クルマです。荷物もあるし、子連れだし、クルマは確かに楽です。しかしクルマだとガソリン代、行った先で駐車場代もかかります。

 そこを例えば、自宅から数km程度の近所までなら自転車で行ってみてはどうでしょう。自転車なら移動にかかる費用はもちろんタダ。しかも移動そのものが子供にとってはエンターテインメントになるので、わざわざ高額な入場料を払い、行列に並んだりしてまで遊戯施設に行く必要もなくなるかもしれません。

 さらに慣れてきたらサイクリングを目的にして、知らない道を走ってみたり、ちょっとした砂利道や山道を走ってみたり、公園があればそこでお弁当を食べたり、キャッチボールして遊んで、帰りには頑張ったご褒美にアイスをかじる─。それだけで、子供にとっても親にとっても最高の休日になります。

 それに、自転車で走る子供を見ていると成長を実感することができます。いつの間にか脚をつかずに坂を上れるようになっていた。ダンシングが上手になっていた…など、親としての気付きがたくさんあります。

 子供は子供で自転車から多くのことを学んでいるようです。疾走する爽快感。坂を上る大変さと達成感。スピードの魅力と恐怖。転んだときの痛み。体の使い方。空気の美味しさ。季節の移ろい…。話をするなかで、大人が思っている以上に子供は色々なことを吸収し、成長しているのだと感じさせられます。

「コスパの良さ」はおまけ

 「コスパが良い」といっても、子供用自転車を手に入れるにはお金はかかります。ヘルメットだって必要です。グローブもあった方がいいでしょう。ただ、キッズバイクはスポーツ用自転車のメーカーの子供用自転車でも、高くて数万円程度。そこの初期投資さえ行えば、その後の得られるものの方がはるかに大きいと思います。

 僕の周りにも、「子供が生まれたから自転車に乗る時間が減った」「機材が買えなくなった」と嘆いているお父さんも少なくありませんが、要するに子供も巻き込んで一緒に楽しめば良いのです。子供と一緒に楽しめ、子供に親が楽しんでいる姿を見せられることも自転車の良いところです。

 子育てに正解はありませんが、自転車は子供にとって最高の先生であり、間違いなく親にとって子育ての大切なパートナーになり得るといえます。「お金がそれほどかからない」ということは、それらに付随してくる小さなメリットにすぎません。

安井行生(やすい・ゆきお)

自転車ライター。大学在学中にメッセンジャーになり、都内で4年間の配送生活を送る。現在は様々な媒体でニューモデルの試乗記事、自転車関連の技術解説、自転車に関するエッセイなどを執筆し、信頼性と独自の視点が多くの自転車ファンからの支持を集める。「今まで稼いだ原稿料の大半をロードバイクにつぎ込んできた」という自称、自転車大好き人間。

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