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車道の左側を走ることについて みなさん端に寄りすぎです

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自転車の乗り方、走り方<5>
車道の左側を走ることについて みなさん端に寄りすぎです

 自転車は車道の左側を通行するのが原則ですが、これを言うと少なからず「車道を走るのは怖いし危ない」「車道の左端を走っていたら、トラックに脇すれすれを抜いていかれて、ガードレールと挟まれそうで怖かった!」というような話を聞きます。確かにそのような状況は危険だし怖かったことでしょう。ですがこの場合、筆者は即座に次のように言います。

 「それは端に寄りすぎです」
 「もっと真ん中寄りに出て走ってください」
 「周囲が危ないと思う場所ほど真ん中寄りを走ってください」

 これだけだと単なる無法者のような内容ですが、いろいろと理由があります。それをこの項では書いていきたいと思います。

左端に寄る≠左端すれすれ

 道交法においては、自転車など軽車両は「道路の左側端に寄って通行する」ことが求められています。ただ法律文書の難しいところで「寄って」というのは「すれすれ」ということではありません。どの程度寄って走るかは、状況に応じて運転者が判断するものと考えられます。

 車両左側通行の日本の道路において、実際に左端からどの程度離れるかというのは、安全マージンをどの程度持つかということです。この安全マージンは「左の路地からの飛び出しに対する備え」「横すれすれで抜いていく車からの退避先」「逆走自転車との正面衝突を避ける隙間」のためにある程度は確実に必要で、道路の左端ギリギリを走るというのはもしもの際に逃げ場が無く、とても危険です。

 どの程度端から離れるべきかですが、実際に問題なく走行できる左端ギリギリから見て、自転車の通行幅1〜2台分内側(速度や死角の多さで変動します)というのが筆者の考えです。最近増えてきた、自転車の通行位置を示すナビラインの矢羽根も、だいたいそれ位の位置を示していることが多いようです。

なぜトラックは真横すれすれを抜いていくのか

 自転車で車道を走っていて怖かった経験として、ありがちなのは冒頭にも出てきたシチュエーション「白線の外側ギリギリを何とか走っていたら、真横すれすれをトラックに抜いて行かれた」というものです。実はこれも、左端ギリギリを走らないようにしていれば、防げるんです。

 トラックを含むクルマ側の心理として、以下のようなものがあります。(追い抜きと追い越しがありますが、ここでは追い抜きに一本化して書きます)

(1)クルマは自転車を追い抜きたい
(2)追い抜く際に車線をまたがずに済むと楽
(3)別レーンに区切られていると簡単に追い抜ける

 まず(1)ですが、基本的にクルマは自転車より速く、速い方が遅い方に追い付いた場合、遅い方を追い抜いて先に行きたいというのは、ごく自然なことです。なかなか抜けなければ、フラストレーションを感じるかもしれません。

 次に(2)ですが、クルマは追い抜く際に車線をまたいでしまうと、片側一車線の場合は対向車線、二車線以上の場合も隣の車線の状況を、しっかり確認してタイミングを計らねばなりません。今走っている車線内で追い抜きが完了できると、安全確認を省略できて楽なのです。結果として、クルマは車線内で追い抜きができそうな場合、多少横すれすれでも構わずに突っ込んでくることが結構あります。

 そして(3)。クルマは走る際に道路上のラインを左右位置の目印にしています。もし自転車が道路端のラインの外側を走っていた場合、クルマ側はサイドミラーを見てラインからはみ出さずに進んでしまえば、自転車に当たらず追い抜きを完了できることになります。クルマの左側の間隔は運転席の反対側で分かりにくいのですが、ラインを使うことで簡単に自転車の横すれすれを追い抜いていけるのです。しかも(2)より簡単確実に追い抜けるため、結果として自転車との速度差が大きいまま追い抜いていくクルマが多くなります。

全く同じ位置関係でも、ラインの有無でドライバーにとっての「安心感」は全く異なる

危険な追い抜きから身を守るために

 上記のクルマ側の習性を踏まえて、自転車側の防衛方法は次の2点になります。

(1)車線内で追い抜きができる隙間を作らない
(2)左端のラインの外側に収まらない

 中途半端に隙間を空けると真横すれすれを抜いていくわけで、それなら車線幅に安全な間隔を含めた追い抜きのための十分な余裕がない場合、追い抜きができない程度に真ん中寄りを走りましょう。車線をまたげば追い抜きは可能ですし、むしろ安全な間隔を取って追い抜いてくれるようになります。もし真横すれすれを通られても、真ん中寄りを走っていれば、左側に十分な逃げ場があります。

 そしてラインの外側を走らないというのも、クルマの安易な追い抜きを誘い込まないためのポイントです。ラインの外側に収まって走るということは、真横を安易に追い抜きすることを暗黙に許しているということなのです。ラインの外側が自転車レーン並に広ければ問題ありませんが、そうでなければむしろ安全のために、ラインより内側に出て走るようにしましょう。

クルマへの配慮も必須!

 さて、「道路の真ん中寄りを走れ」と言うと、「クルマの邪魔になるんじゃ…?」と思われるでしょう。確かにそうです。邪魔です。それはそうでしょう。基本スピードが違うもの同士が、同じ道路を共有しているわけですから。

 だからといって、自転車が自らの安全を犠牲にしてまで、クルマの通行の円滑を保ってあげる必要は一切ありません(道交法の基本、安全→円滑を思い出しましょう)。むしろ自転車側がまず、自らの安全をしっかりと担保しておくべきです。

 道路内、車線内でどの程度のスペースを右側に空けるかは、自分に対する追い抜きをコントロールするということです。道路状況などから「ここで追い抜きはされたくないな」という場所であれば、ためらわず車線の真ん中寄りを走りましょう。「邪魔=絶対悪」ではありません。

 その上で、自転車もクルマの通行を必要以上に邪魔しないよう振る舞うことが大切です。安全に追い抜きがしやすい場所で進路を譲ったり、後続のクルマが長く追い抜き不能になっていたら一旦道路脇に止まって先に行かせたり、無駄なすり抜けは控えるなど、クルマ側の円滑な通行も常に心がけるようにしましょう。また、そもそもクルマの交通量が多く道路幅が広くない道は、なるべく通らないようにルートを考えることも有効です。

 そして前回の繰り返しになりますが、信号はちゃんと守りましょう。信号を守らない自転車が道路の邪魔な位置を走っていれば、一発でクルマから憎悪の対象になります。

文: 米山一輝(よねやま・いっき)

スポーツサイクル歴約30年の自転車乗りで元ロードレーサー。その昔はTOJやジャパンカップなどを走っていたことも。幅広いレベルに触れたクラブチームでの経験を生かし、自転車スポーツの楽しみ方やテクニックをメディアで紹介しています。ローラーより実走、ヒルクライムより平坦、山中より都市部を走るのが好きです。

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