2021.3.16
ヒルクライムを楽しむときに必要になのが、安全に下るための知識と技術です。下りにはさまざまなシチュエーションがありますが、まずは安全に下るための基本的なポイントを紹介します。
安全に下るためには、事前に下りの準備をすることがポイントです。下りの形状や特徴を事前に知れば気持ちに余裕ができるでしょう。
まず、地図で下りの特徴を確認しましょう。必要な情報はウェブサイトの地図を見れば十分です。例えば、つづら折れになるポイントや緩急が変わるポイント、トンネルの有無、分岐や信号、下りの距離などを把握しているだけでも安全に下る心構えができます。
仲間と一緒にサイクリングに行く場合は、グループのリーダーが下る前にあらかじめ下りの特徴を仲間に伝えるといいでしょう。また、人によって下る速度が違うので、下った先の待ち合わせ場所を決めておけば各自が安心して下りに望めるでしょう。
下りで落車して大きな事故に繋がる場面は、前走者に無理してついていこうとするときに多いです。下りの最中に対向車とすれ違ったときや路面環境に変化があったときは、前走者が後者へ声で伝えることが大事です。なぜなら、後走のライダーは下りながら前走者を追っているので、こうした環境の変化に遅れることが多いからです。
実際の下りでは、地図では見えない多くの危険予測が必要となります。路面の凹凸・マンホール・砂や砂利の多い箇所がコーナーの先に現れることを予測してスピードのコントロールやフォームを整えておきましょう。
また、気温が低いと感じたときは下っている最中でも安全な場所で停止し、ウィンドブレーカーや手袋などをするといいでしょう。ひどく疲れている場合は山頂でしっかりと栄養補給をし、体力が回復してから下りましょう。
次に安全に下るために知っておきたいハンドルの持ち方や重心の置き方、クランクワーク(クランクの位置を利用したテクニック)、膝の開閉を使った基本技術を紹介します。
安全に下るためには、手はブレーキに近いブラケットを握るのが大前提です。ブレーキレバーには中指と人差し指の二本の指をかけ、いつでもブレーキできるようにしておきましょう。
直線の下りはフロントブレーキをメインに使って減速します。急ブレーキをしないように十分な距離を保って減速するのを心がけましょう。下りでブレーキをかけると荷重が前に引き寄せられるので、腰をサドル上で後ろに引いておくのがポイントです。
コーナーに入る際は直線で自分が余裕をもてるスピードに減速されていることが理想です。コーナーに侵入してから減速する場合はリアブレーキを中心に利かせることがポイントです。また、長距離の下りでブレーキレバーを引き続けるのに疲労を感じたときは、直線でもリアブレーキに切り替えたり、安全な場所で停止して手を休ませましょう。
下りで無理に腰を引こうとしてハンドルを押すようなフォームは、体の動きとハンドルの動きが連動してバイクコントロールが乱れますので、肘をくの字に軽く曲げておくといいでしょう。ハンドル荷重を回避できます。
また、サドル上で腰を引いた状態で両膝でトップチューブを軽く挟んだり、内腿でサドルの先端を挟んでおくと重心を維持しやすくなります。
自転車とライダーの接点はサドル・ハンドル・ペダルの三点です。下りで足を止めていると、知らず知らずのうちにサドルに座り、重心を置いていることに気付きます。逆にペダルを回していると重心は足下に分散されていることに気付くはずです。この重心が低い位置にあるほど安定性を持つため、自転車のバランスを整えるときにクランクワークは重要です。
ここからは安全に下るために必要なクランクワークを使った技術をいくつか紹介していきます。
下りでペダリングを長時間止めていると、重心がサドルに集中し、不安に感じることが多々あります。フロントブレーキを当てぎきしながらペダリングしてみましょう。重心の支点がペダルに分散し、コントロールに安心感が得られます。
ポイントは足裏に軽いトルクを感じるくらい重いギアを踏むといいでしょう。緩いコーナーでは足を止めなくてもいいですが、タイトなコーナーが続く場合や急カーブのときは、足を止めて膝でトップチューブを挟むなどして対応しましょう。
左右のクランクとペダルは一つの軸を中心に対照のリーチを持っています。例えば、シーソーの真ん中に一人で立ち、足を前後にして重心の前後移動をしているイメージを持てば、下りで重心を後ろにキープする場面で踵を下げて構えることがポイントになると想像できるでしょう。
実際にサドルに座ってペダリングを止めた場面でクランクを地面と平行に踵を下げると、重心が後ろに下がることが分かります。また踵を下げ、裏腿やお尻側の筋肉が可動することで腰回りを支えやすく感じるはずです。一方、両脚の踵が上がると重心が前に傾向し、腰を後ろに引こうとする場面では前腿に力が入ってしまいフォームの維持が難しくなります。
下りでネックになるのが、コーナーへの進入の仕方とタイミングです。ロードバイクは前傾姿勢が深くなるので、ハンドルを中心にコントロールしてカーブを曲がろうとするとオーバーラインになってしまいます。
特に下りは重心が前に流れがちになるので、ハンドルをきることはほとんどありません。体の中心から車体を路面に対して傾けることでコーナーのコントロールを成立させます。このときに便利なのが膝の先でコーナーラインをなぞることです。
コーナーに対して内膝を立てて構えるフォームにも加減が必要で急コーナーになればなるほど膝を大きく開き、コーナーが緩むほど膝を閉じて調整しています。安全で平坦な直線路などで足を止め、前の膝を左右に振ってみると、バイクの中心から操舵しているのが確認できるでしょう。
踵を下げてペダルの上で立つと、自転車とライダーとの接点はハンドルとペダルの二点になります。重心の支点は左右のペダルに置かれるので、地面に対して低重心で安定したフォームです。人間は足下・膝・腰で前後左右のバランスをとるのに優れているのでスタンディングフォームはバランスの崩れる凹凸のある路面環境や危険箇所には最適なフォームと言えます。
スタンディングフォームのポイントは、悪路の直前に肘・膝を曲げてスタンディングのポジションを取ることで関節がクッションとなり、体の振動を抑えることができます。また膝を曲げると腰を後ろに引きやすく、腹筋に力が入りやすくなり、前屈みの姿勢でもバランスを保ちやすくなります。先が急に細くなる道やコントラストが強く路面状況が分かりにくい場面では、危険予測のフォームとして活用できます。スタンディングのフォームは腰を前後左右に大きく動かせるので、急ブレーキ時の咄嗟の対応や急勾配を下るときのフォームにも最適です。
撮影協力:株式会社シマノ
管洋介(SUGA YOSUKE) AVENTURA CYCLING代表、有限会社デボ代表取締役社長。競技歴22年のベテランロード選手。国内外で50ステージレースを経験。近年は長い経験を生かしてメディア出演も多く、自転車専門誌のレギュラーキャストとして、モデル、インプレッション、ライディングレクチャー、好評の連載を持つ。自転車ライディング講師として イベント他、様々なコミュニティでのテクニ カルコーチ務める。2017年よりAVENTURA CYCLING を立ち上げ、 自転車界の明るい未来をリードしていく。
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