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グラベルロードのコンポーネント「GRX」とは?

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グラベルロードのコンポーネント「GRX」とは?

 日本の自転車パーツメーカー、シマノが2019年に発売した「GRX」は、世界初のグラベル専用コンポーネント(自転車パーツ群)です。幅広い楽しみ方ができるグラベルロード用とあって、GRXも幅広いシーンとニーズに対応できるコンポになっています。GRXの概要と特徴を解説します。

GRXはロードバイクのコンポーネントとどう違う?

グラベルロード専用に新規設計

 GRXはグラベルライドに最適化した操作性やギア構成、堅牢さを兼ね備えたコンポーネントとして、ゼロから設計されています。それまでのグラベルロードは、ロードバイク用パーツが中心にアッセンブルされていましたが、オフロードライドでは使い心地や信頼性に難がある部分もありました。GRXはグラベルロードの使用用途を想定し、その幅広い使用シーンに対応できる設計になっています。

 ロード用コンポでは「デュラエース」、「アルテグラ」、「105」など、グレードごとの名称がありますが、グラベル用コンポはGRXの名称に集約されています。ただし実際にはGRXの中で「GRX810系」、「GRX600系」、「GRX400系」という、3つのグレードが存在します。グレード間は変速段数や重量などが異なり、もちろん価格も異なります。

 GRX810系はロード用でいうとアルテグラ相当で、リア11速(11段変速)仕様。Di2(電動変速モデル)もラインナップします。GRX600系はロード用でいう105相当で、リア11速です。GRX400系はロード用でいうティアグラ相当となり、リア10速でフロントシングルの設定がありません。なおGRX600系のパーツはレバーとクランクセットのみで、ディレイラーやブレーキなど他の部分は、他のグレードと組み合わせることになります。

 なおこの記事の執筆時点(2022年12月)ではアルテグラ、105はリア12速の新モデルとなっていますが、現行のGRXは上位グレードも2019年当時の仕様に合わせた11速仕様です。GRX内にラインナップされないパーツ(カセットスプロケット、チェーン、BBなど)もあり、これらは適宜互換性のあるロード用、MTB用のパーツを使用するようになっています。

フロントダブルとシングル仕様を用意

 GRXはフロントギアに48/31Tのダブル、もしくは40T、42Tのシングル仕様が選択可能。オフロードで必須となる軽いギア比までをカバーします。ダブルではロード用のカセットスプロケット(後ろギア)を組み合わせて、きめ細かな変速が可能。シングルはMTB用のカセットを組み合わせて、超ワイドなギア比とシンプルな変速操作を得ることができます。またシングルはフロントギアにチェーン落ちを防ぐ歯先形状を採用。オフロードでのトラブル要因を減らしています。

ワイドなギア比とシンプルな変速操作を得られるシングル(写真はGRX600系)

 リアディレイラーは、フロントダブル向けのモデル(ロースプロケット最大34T)と、シングル向け(同42T)の2種類を用意。MTB用ディレイラーの技術であるチェーンスタビライザー機能を搭載し、悪路走行時にチェーンが暴れて脱落することを防止します。フロントチェーンリングは太いタイヤを装着した際の干渉を避けるため、2.5mm外側にオフセットしたデザインを採用しています。

黄色く囲んだ部分がスタビライザーのスイッチ。ホイール着脱時はオフにする

 レバーはロード用に比べてトップ部分が長く、またブラケットスペースも広げたデザインを採用。ブラケット部をしっかりホールドできるため、荒れ地でも握った手が離れにくく、オフロードでの安心感をもたらします。レバー形状や支点の位置なども吟味され、より小さい力で確実にブレーキをかけることが可能です。

ロード用に比べてトップ部分が長く、ブラケットスペースも広いレバー

 もちろん、ブレーキとシフティング(変速)が一体化された、デュアルコントロールレバーです。フロントシングル仕様では左レバーに、シフティング機能を省いたレバーだけでなく、ドロッパーポストを操作できるレバーも選択が可能。より激しいオフロードライドに対応します。

 ブレーキは全グレードで油圧式ディスクブレーキを採用。アイステクノロジーのフィンによる優れた放熱性能で、荒れた路面や悪天候時でも安定したブレーキ力を発揮します。また、ハンドルのフラット部に取付け可能なサブブレーキレバーもオプションで用意。幅広いニーズに対応します。

 また、GRX標準のホイールとして、太いタイヤと相性のよいワイドリム(内径21.6mm)を採用したホイールセットもラインナップしています。サイズは700Cだけでなく、より太いタイヤを装着できる650Bも選ぶことができます。

グラベルロードの自由な楽しみ方に対応

 GRXはグラベルロードの幅広いフィールドに対応する、汎用性の高いコンポーネントになっています。フロントダブル仕様は、ロードバイクに近い高速性能を持ちつつオフロードにも対応。フロントシングル仕様では、よりオフロードに適応した構成を実現します。また3つのグレードにより、さまざまな価格帯のバイクに対応します。

 オフロードでの安定感と安心感をもたらす設計は、ツーリングや通勤・通学用途でも価値を発揮するでしょう。自由な発想、自由なフィールドで自転車スポーツを楽しむことができる、GRXはまさにグラベルロードのためのコンポーネントなのです。

米山一輝(よねやま・いっき)
スポーツサイクル歴25年の自転車乗りで元ロードレーサー。選手歴は15年ほどで、実業団レースや国際レースなど入賞多数。自転車に本格的に乗り始めたのは電気街通いの電車賃を節約するためという、どこかのマンガを先取りしたような動機でした。人気のない山中より街中を走る方が好き。脚質は平地番長。
文: 米山一輝(よねやま・いっき)

スポーツサイクル歴約30年の自転車乗りで元ロードレーサー。その昔はTOJやジャパンカップなどを走っていたことも。幅広いレベルに触れたクラブチームでの経験を生かし、自転車スポーツの楽しみ方やテクニックをメディアで紹介しています。ローラーより実走、ヒルクライムより平坦、山中より都市部を走るのが好きです。

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