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Q 悪質自転車の取り締まり強化、「赤切符」渡されるとどうなる?

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弁護士に聞く自転車のルールの素朴な疑問<13>
Q 悪質自転車の取り締まり強化、「赤切符」渡されるとどうなる?

品川駅前で行われた公開取り締まりで、自転車利用者に安全運転を呼びかける警視庁署員ら (提供: 産経新聞社)

Q 悪質自転車の取り締まりが強化されましたが、「赤切符」を渡されると具体的にどんな処罰を受けるのでしょうか?

A 2022年10月、自転車の交通違反に対する取り締まりを強化するという警視庁の発表がありました。これまで、警告で済ませていた違反行為であっても、いわゆる赤切符を交付するというものです。

 日本全国で見ると、自転車運転中の死亡事故は年々減少しており、決して自転車がより危険になったとも言えないのですが、東京都内では、発生件数・事故死者数ともに、下げ止まっていることから、今回の警視庁の対応となったものと見られます。

 「赤切符」というのは、刑事処罰の対象となる道路交通法違反の行為を行った被疑者に対して交付されるものですので、もし、この赤切符を交付されてしまったら、以降「被疑者」となり、裁判を経て懲役刑や罰金刑などの刑罰を受ける手続に進むことになります。

 自転車であっても、例えば信号無視や、逆走、酒気帯び運転といった道路交通法違反の行為は、信号無視や逆走(通行区分違反)であれば「三月以下の懲役または五万円以下の罰金」、酒気帯び運転であれば「五年以下の懲役または百万円以下の罰金」にそれぞれ処せられる行為です。

 もともと、道路交通法違反を犯した自転車の運転者に対して刑事罰が科される仕組みは、従来から変わっていませんが、今までは警察は積極的に取締を行ってきませんでした。その方針を転換するということです。他の大都市圏でも、このような動きが見られます。

 一方で、2017年3月から、自転車の交通違反のうち「特に危険性の高い行為」について、それを反復して行った者に対して自転車講習の受講を義務付けるという法改正がされました。交通違反のうち特に危険性の高い行為は、以下の通りです。

1. 信号無視(道交法7条違反)
2. 通行禁止違反(道交法8条違反)
3. 歩行者用道路通行違反(道交法9条違反)
4. 通行区分違反(道交法17条①、④、⑥違反)
5. 路側帯走行の徐行安全義務違反(道交法17条の2②)
6. 踏切の遮断機警報機の無視(道交法33条②)
7. 交差点の通行方法違反(道交法36条)
8. 交差点右折時の通行方法違反(道交法37条)
9. 環状交差点の通行方法違反(道交法37条の2)
10. 一時停止違反(道交法43条)
11. 歩道走行違反:(道交法63条の4②)
12. 制動装置違反:(道交法63条の9①)
13. 酒酔い運転違反:(道交法65条①、117条の2(1))
14. 安全運転義務違反:(道交法70条)
15. 妨害運転:(道交法117条の2の2(8)他)

 この自転車講習を受講しない場合には5万円以下の罰金に処されることがあります。実際の運用は、3年間の間に2回以上摘発された場合に反復して行ったという扱いがされています。

 赤切符を交付されると、刑事手続と、自転車運転者講習の2つに対応しなければならなくなるということになります。

回答者: 本田聡(ほんだ・さとし)

2009年弁護士登録。会社関係法務、独占禁止法関係対応、税務対応を中心に取り扱う傍ら、2台のロードバイクを使い分けながら都内往復20kmの自転車通勤を日課とする。久留米大学附設高校卒・東京大学法学部卒・早稲田大学法務研究科卒。

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