2024.3.25
「通勤や通学用に買ったクロスバイクが最初のスポーツバイク」という人も多いでしょう。いわゆる“ママチャリ”と呼ばれる軽快車から乗り換えたとき、さらに軽快な走りに驚いたはずです。もっと高性能な自転車に乗ってみたい……と思ったときに、「このクロスバイクのパーツを交換してロードバイクにしてしまえばいいのでは?」と考える人は少なくないようです。
クロスバイクのロードバイク化に関しては賛否あるようですが、個人的にはお勧めしません。
クロスバイクとロードバイクの大きな違いはハンドル形状です。クロスバイクは一文字のフラットハンドル、対してロードバイクは湾曲したドロップハンドルです。要するに、「クロスバイクのロードバイク化」の核心は「ドロップハンドル化」となります。
しかし、フラットハンドルとドロップハンドルでは、手の位置が大きく異なります。フラットハンドルに比べ、ドロップハンドルはハンドル自体が前方に湾曲しており、さらにそこに取り付けたレバーを握るので、手の位置がかなり遠くなります。ポジションが大きく変わってしまうわけです。
当然ですが、クロスバイクはフラットハンドルに、ロードバイクはドロップハンドルに合わせて設計されています。フレーム各部の寸法や角度がそれぞれのハンドルに最適化されています。クロスバイクを無理矢理ドロップハンドルにすると、設計時に想定していないポジションになり、荷重バランスが崩れ、ハンドリングや直進安定性が悪化してしまう可能性があります。
次に、意外とコストがかかります。ハンドルを交換すれば済むというわけではありません。高価なシフトレバーに加え、場合によってはブレーキキャリパーや変速機まで交換が必要になり、工賃もかかります。さらにメーカー保証が受けられなくなるというデメリットもあります。
それに、ハンドル周りのパーツを全交換してドロップハンドル化したとしても、クロスバイクはあくまでクロスバイク。ドロップハンドルにしたからといって、速くなるわけではありませんし、ロードバイクにはなりません。フレームやパーツの作りが根本から異なるので、「無理矢理ドロップハンドルを付けたクロスバイク」「ロードバイクっぽい乗り物」が出来上がるだけです。
ただし、前出のデメリットを全て理解したうえで、「あえてやってみる」のであればいいと思います。「ウチにあるクロスバイク、余ったパーツでドロップハンドル化したらどうなるんだろう?」という強い知的好奇心に突き動かされている人もいるでしょうし、「思い入れのあるクロスバイクをなんとかして活用したい」というケースもあるかもしれません。そういう場合はリスクを承知した上でチャレンジしてみてください。それはそれで、きっと貴重な知見の一つとなるでしょう。
自転車ライター。大学在学中にメッセンジャーになり、都内で4年間の配送生活を送る。現在は様々な媒体でニューモデルの試乗記事、自転車関連の技術解説、自転車に関するエッセイなどを執筆し、信頼性と独自の視点が多くの自転車ファンからの支持を集める。「今まで稼いだ原稿料の大半をロードバイクにつぎ込んできた」という自称、自転車大好き人間。
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